11話 ペルセウス・フリーゲンのコミエンソ
俺が神様から貰った魔術を使うと、顔も表情もない真っ白い人の形をした何かが現れた。
もしかして詐欺られたのか?あの神様に……。
動いてはいない。
ずっと俺の方を向いて静止している。
幸い人目が少ない場所でよかった。
もし消えなかった場合どうなるのだろうか?こんなの家に持って帰る訳には行かないよな……。
「お父さん、お母さん!これ飼いたい!」
とでも言ったら
「早く外に捨てて来なさい!」
と言われてしまうに違いない。
ガサッ!
「うわぁぁぁ!なんだ鼠か脅かすなよ……。」
その時ホムンクルスが動いた。少し動くだけで俺の魔力がどんどん減っていく。
ホムンクルスはゆっくりと鼠に近づくとそっと手を伸ばし鼠を手で掴み、
握りつぶした。
グシャッという音が周囲に響いた。灰色の石道が赤に染まっている。
「お前……何やって、るんだよ。」
ホムンクルスはまた停止してしまった。
こいつは危険だこのまま放っておいたら誰かを殺しかねない。
誰かこいつを止めれそうな人……。
家に戻るか?その間に動き出したら……。
誰かじゃない。
俺がやるんだ。
こいつを殺そう。
罪悪感とかはない。
なんならこの行動が正しいとまで感じる。
誰かを殺す前に俺が殺すのだ。
「『魔力弾』」
キュイーンとエンジンのような音が鳴り、俺の『魔力弾』がどんどん吸われていく。
なんだコイツ魔法が効かないのか?!
物理攻撃ならどうだ?
「『錬金』《アルケミー》……」
俺は石道に触れ、そこから剣を作り出した。
その剣の大きさ分、石道の石も減っている。
『錬金』は元となった質量と必ず同じ質量になる。
今回は3kgくらいだろう。
「この剣なら、いけるか……。」
俺は剣を構えた。
教えてもらったばかりのローリア剣術、基本の型。
剣をホムンクルスの首に向かって振り下ろす。
とった!
キュイーンと鳴り、魔法の時と同じように剣が吸い込まれていく。
物理攻撃も魔法も効かない。つまり倒せない。
神様から貰った魔術、『人に作られし物』《ホムンクルス》思った以上に強い魔術なのかもしれない。
しかし少しだけ動かしただけでほとんどの魔力を持っていかれた。魔力の少ない俺とは相性が悪い。
フォイアスとかなら小規模隊くらいは作れそうだ。
この魔術は俺と相性が相性が悪い。
それと懸念すべき点がある。
ローリア王国では命を弄ぶことは宗教的に禁じられているのだ。
恐らく大衆の前でこの魔術を使うと悪魔やら呪いやら言われて、きっと俺は追われることにだろう。
この魔術……。強いことには強いかもしれないが、相性悪いし人前では使えない。
「ハズレを引いたな……。」
魔術は初心者応援ガチャみたいに引き直すことはできない。
チャンス1回限り。
俺はまだ心の奥底で、そこら辺にあるラノベみたいにチート使って無双したり女に囲われてハーレム作ったりできると思っていた。
だって異世界転生だぞ?
2週目な訳だ簡単に1番になれるだろ普通……。
しかし同級生にはフォイアスがいる。
家族にはペヤードがいる。
努力は誰よりもしてきたと思う。
親友だってできた。
前世では友達すらできなかった俺が、家族に愛され大切な友達までできた。
これで十分なんじゃないのか?
6年間頑張ってきたんだ。魔法の訓練、勉強。
この世界の文字の習得。
家族関係の形成。
考え出したらキリがない……。
その結果がこれか?
使いもできない魔術を偉い神様が、ゴミをゴミ箱に投げるみたいに俺に授けたのかもしれない。
殺意と哀しさが湧いてくる……。
自然と涙が溢れてくる。
この世界で泣くのは初めてかもしれないな……。
ホムンクルスが動く。
こいつもしかして俺の感情が昂ぶると動くのか?
やばいこれ以上動かれると魔力が……。
魔力がなくなる瞬間、ホムンクルスも消えてなくなった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気がつくと家のベッドの上で寝ていた。
「ペルセウス起きたのか?!」
「良かったわねあなた!」
一体何があったのだろう……。
魔力切れを起こしたのは覚えているが……。
その後その場で倒れたハズだ。
「お父さんが家まで運んでくれたの?」
「何を言っている?お前は家の前で倒れていたんだ。」
誰かが運んでくれたのか?
そうだと仮定すると疑問が残る。
なぜ俺たちの家を知っているのか?
なぜ何も言わずに行ってしまったのか?
などなど……。
「お父さん、お母さん……。実は……。」
「やっぱり何かあったのか?」
魔術が定着したと、報告したいのにできない。
あんな非人道的な魔術……。
見せたらこの家から追い出されるかも知れないな。
いや、ペヤードとマリアードはそんなことしない。
俺はこの2人に愛されている。
もし世間が俺を殺そうとするならペヤードとマリアード、俺の両親は命を懸けて守ってくれる。
親とはそういう生き物なのだ。
前世の両親も俺の事をずっと家に置いてくれていたのは心の隅に愛情があったからじゃないだろうか?
やっとわかった気がする。
あの時親は軽蔑していた訳では無い。
ニートでなんの取り柄のない俺を、心配していたんだ……。
また涙が溢れていく。
「ぅ……お父さん、お母さんっ、僕はなんの取り柄もなくて…っ、自分なんか誰の必要とされてないって、そう思ってた。でもそれは、必要とされていないんじゃなくて、守ろうとしてくれてたって……やっと気づけたんだ。」
「お父さんもお母さんも、もしペルに才能がなくて他の人よりも上手くいかないことがいっぱいあっても、ペルのことを見捨てたり絶対しないよ。
だって俺たちは家族なんだから……。」
「お母さんたちは、たとえ何があってもあなたを守るわ。何故かわかる?愛しているからよ……。」
なんだ、
俺はとっくに認められていたんだ。
俺はとっくに1番だったんだ……。1番愛されていたんだ……。
この世界での目標は達成してしまったな……。
いや違うなあの目標は前世の俺が勝手に決めたただのワガママだ。
この世界の俺。
つまりペルセウス・フリーゲンの目標は前世に「行って帰る」方法を見つける。
そして俺はこの世界で、
愛する人を守る力をつける。
それが俺ペルセウス・フリーゲンの生きる意味だ。
これからがペルセウス・フリーゲンの始まりだ。
〜後書きなるもの
ペルセウス・フリーゲンの中で前世の男の考え方は消えた。これからは前世の男ではなくペルセウス・フリーゲンとして生きていく。
今回の話はペルセウス・フリーゲンの人生がこれから始まるという意味ですね。
あぁそうそう。
「フォイアスってタイムリープしてきたんじゃね?!」とか思ってる読者の皆さん。
残念ながらちょっと違います。
この物語はもっと設定細かいんやでぇー!
いつか伏線回収したい。というかします。
ブックマークと評価よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます