10話 魔術覚醒。入神目覚 ・その一
モレナ第4教育学校に入ってからおよそ1ヶ月が経つ。それといって大きな変化はないが強いて言えば、中級魔術を1つ習得した。
魔法名は『錬金』《アルケミー》。リシア校長に言われた通り使い始めたが……、
思っていたのと違う。
俺はもっと鋼の〇金術師みたいな大規模なことができると思っていたのだ。できない訳ではないが、技量が全然足りない。リシア校長やペヤード辺りならできるかもしれないが
俺にはまだ難しいようだ。
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「今日からは剣術も授業に取り入れていきます。いつも通り大広場まで遅刻せずに来てください。」
『はい!』
リシア校長はあの事件以来、俺とフォイアスを気にかけてくれている。週に1、2回は俺たちの授業を担当している。
てかこのおばさんに剣術ができるのだろうか?
恐らく外部から指導者が来るのだろう。
〜〜〜生徒たちは訓練用の木剣を腰に差し、大広場へ移動した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大広場の真ん中へと集合し、
俺はフォイアス、バレルと集まって座った。
大広場と校舎を繋ぐ通路からリシア校長ともう1人がこちらへ向かってくる。
やはり指導者だろうか……。
だんだん近づくにつれて顔も明らかになっていく。
俺はその男を知っている。
知らないはずもないだろう。
だってこの世界での俺の親なんだし、
リシア校長とペヤードは生徒たちの前で止まる。
「知らないかも知れませんが私、魔法と勉強以外はからっきしです。なので外部から指導者を連れてきました。彼はこの学校の卒業生であり、最年少で国軍に入った実力者でもあります。」
「どうもペヤード・フリーゲンです。今日は我がこ……。ゴホンッ。リシア校長に頼まれたので仕方なく来ました。よろしく。」
ペヤードの頭をリシア校長が小突く。
今この人、我が子って言ったよな?気のせいだろうか……。
なんだろうこのむず痒さは、あれだ、親が授業参観に来たときのあれだ。わかる人にはわかるだろう……。
「彼は一見ひ弱そうですが、これでも魔法、剣術共に英雄級の実力があります。」
クラスから驚きの声が上がっていく。
最年少で国軍だからな……。そのくらいの実力だろうとは思ってはいたが、なんだろう俺の体に遺伝子が行き渡ってないではないか。
これはマリアードが怪しくなってきたな……。
「ま、まぁ私の魔法は伝説級なので彼など赤子も同然ですけどね。」
生徒をペヤードに取られたと思ったのだろう。
凄く大人気ないな。ペヤードも大人だけど。
ペヤードは歩き出し1人の少女の前で止まる。
「ミカ・サードルフ・モレナ君。君の剣術の評判は聞いているよ。どうかな、お手本として私と試合をしないか?」
「望むところです。」
ミカ・サードルフ・モレナ。
バレルを殴ってぶっ飛ばしたエルフの少女である。
バレルは彼女の顔を思い出すと、夜も眠れないそうだ。可哀想に……。
大広場の中央。相対するはペヤードとエルフの少女。誰が見ても華奢なその子は非力では無いことをこの場にいる全員が知っている。
さて、どっちが勝つかな……。
「それでは始めよう。息子の前だからカッコつけさせてもらうよ。」
「フゥ〜……。胸をお借りさせていただきます。」
両者木剣を構える。
「始め!」
の合図で両者が消えた。
フォイアスみたいに魔術で加速している訳では無い。
単に魔力を体に纏い早く動いているだけだ。
剣撃の音だけがその場に聞こえる。姿は見えない。
見えないと言うより、追えないだな。
バギッ!
木が破裂したような音がした。
そこに立っていたのは、流石というべきだろうか、ペヤードだった。
「とても強かったよ。魔術だけに頼らず魔法や剣術ももっと磨けば俺くらいには勝てるよ。」
「……ご指導ありがとうございました。」
ミカ・サードルフ・モレナはペヤードに一礼すると、列へと戻って行った。
「これで俺の実力もわかっただろう。
今日からは基本の訓練だ。剣術の訓練は魔法の訓練と違い、過酷だ。キツければ辞めればいいし、授業に出ないのも好きにしていい。」
周りから、「俺は授業受けない出おこう。」とか「私の肌が傷ついたら嫌だわ」とかの声が聞こえる。
「だがこれだけは言っておこう。
やらなければ強くならない。
魔法だってそうだ。君たちは今スタートラインに立っている。走るも歩くも、止まるのもなんだって自由だ。だが一歩踏み出さなければ始まらない。これだけはわかって欲しい。」
さっきまで騒いでた奴らが静まった。
その後何人かは授業から抜けていったが、残った者たちは真面目に授業に取り組んだ。
※剣術の話はまたいつかします。今回は違う回なんでご了承ください。By作者・俺が世界
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授業が終わり、リシア校長から呼び出された。
フォイアスも一緒だ。
「7日後に初めての特別クラス実践訓練をするので準備をしておいて下さい。」
だそうだ。
特別クラスには今のところ、15人ほどしかいないらしい。今年の新入生は豊作だったそうで新入生の中から3人。俺とフォイアスとあともう1人は誰だろうか……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺はフォイアスに別れを告げ、家に帰っていた。
フォイアスの家に寄り道してしまったので辺りが暗い。
この辺はまさに平和そのものだが、治安が悪い地域では奴隷狩りだとか盗賊とかも多いそうだ。
なるべく早く帰るとしよう。
整備された石道を歩いていた。
ズキッ。俺はその場で座り込む。
最近頭痛がする。最近では無いな、1年くらい前からだ。初めは小さい痛みだったが、ココ最近は頭痛がするとそのまま座り込んでしまうほどに痛い。
医者に診てもらってもマリアードの『回復魔法』でも治らなかった。
ズキッ、ズキッ。
頭が軋む。こんな速いペースで痛みがくるのは初めてだ。
ズキッ、ズキッ、ズキッ。
だめだ、痛みでおかしくなりそうだ……。
だんだん間隔が狭くなっている。
ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッズキッ、ズッキ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ。
頭が破裂する……。
目の前が真っ白になったり黒くなったり、おかしい
こんなことは初めてだ。
ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッズキッ、ズッキ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッズキッ、ズッキ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッズキッ、ズッキ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ
ダメだもう耐えられない。
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気がつくとそこは俺が生まれた国。ローリア王国じゃない。
前世の話だ。
そうだそこは
日本だった。
戻ってきたのか?
だが、おかしいぞ。昼間の街中だと言うのに、人が居ない。1人もだ。車も通っていない。
「ペルセウス・フリーゲン君?でいいよね。君混ざってるからよくわかんないな〜」
声の方向へ振り向く。
そこには黒い正方形があった。
大きさは縦横3mくらいだろうか。
その中から声が聞こえてくるようだ。
前しか見てなかったから分からなかったが、
後ろはアルト村の風景が広がっている。
日本とアルト村の境界に黒い正方形がある。
「どなたですか?」
「俺は〜うん。そうだな、神の1人とでも言っておこうかな?」
疑いはしない。
この人は、人じゃない。この神は日本を再現?したのだ。こんなことできるのは本物の神様しか居ないだろう。だって俺が異世界転生したと知っているのは俺だけなのだから。
「もしかして本に出てくる13神様ですか?!」
「いや違うな。あれらよりはもっと格が高い。」
「そのような神様が僕に何の用でしょうか?」
「君を依代にする。」
「依代?」
「まぁさ俺は君たちの世界を見れない状況なんだ。
だから君の目を通して外の世界を見たいってわけだ。」
「恐れ多いかもしれませんが…僕にメリットはあるのですか?」
「俺の力を授けよう……。」
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「ハッ!」
気を失ってたみたいだ。さっきまでの夏の蝉くらい鬱陶しい頭痛も嘘みたいになくなっている。
神様と話していた?
もしかして俺も神の名を冠する魔術を持たされたのかもしれないな…。ちょっとテンション上がるぜ。
それに混ざってる?とかも言ってかな……。
しかし、魔術の使い方とかわかんないし、力ってのが魔術なのかもわからない。
「……唱えろ。」
なんか今聞こえたか?
「……と唱えろ。」
これはさっきまで聞いていた神様の声か……?
「『神に作られし物』《ホムンクルス》と唱えよ。」
はっきりと聞こえた。
多分、困っている俺を見兼ねて神様が使い方を教えてくれたのだろう。
『神に作られし物』《ホムンクルス》だったか?
俺は魔力を込めた。いつも通り、変わったことはない。
「『神に作られし物』!」
俺の目の前には顔も表情もない色も真っ白、
人型の何かが現れたのだ。
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