4話 初めてのお友達

あれから1年とちょっとが経った。

毎日、ペヤードやマリアードから魔法の訓練とか自主練なるものをしていた。魔力量は成長に合わせ増えていくものであり、この1年間で俺の魔力もだいぶ増えた。


だからといってチート級に多い訳ではなく、平均を少し下回る程度には成長した。

『魔力弾』も1日3発くらいなら出せる。

魔法も何個か覚えた。


RPGでお馴染みの

『火球』《ファイアボール》

『水球』《ウォーターボール》

あとは『錬金』《アルケミー》とかね。


初心者が使用する魔法は球体系が多いみたいだ。基本となる魔術が『魔力弾』だからだろう。


『錬金』《アルケミー》はペヤードの魔術『製作者』《クリエイター》の劣化版みたいな感じ。



魔術はまだ定着していない。ペヤードの血を引いているのだから『製作者』《クリエイター》みたいな魔術が定着するかもしれないとのことだ。


今日は外に出てみることにした。

前世で引きこもっていたからか、外に出るのはあまり好きじゃないが……。家で魔法を使うとマリアードに怒られてしまうのだ。

家の近くに広場があるのでそこに移動するとしよう。


俺は身支度を済ませ、マリアードと共に家を出た。

まだ4歳なので親の付き添いがいるのである。

中身は30超えたおっさんな訳だが……。

マリアードに手を引かれ広場へと向かう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜移動中


広場にはアルト村に住んでいる子供と親が何組か既に集まっていた。種族もバラバラで獣族もいればエルフだって居る。


アルト村はあまり大きくはないが、学校もあるし子供も多く(変な意味は無い)いい村である。一緒に遊ぶ友達が居ないのが難点ではある。


まぁ広場には魔法の訓練できてるんだ。友達なんて……やっぱ欲しいなあ。個人的にはエルフのお友達が欲しいとこだが妥協しよう。


なぜ友達が出来ないか答えは簡単である。精神年齢が合わないのだ。俺は30超え対して向こうは下の毛も生えてない小さな子ばかりだ。俺が合わせないといけないためストレスが溜まってしまうのだ。


友達になれるとしたら、頭が良い奴とかじゃないと無理だろうな〜。そんなことを考えていたら、1人の少年がこちらにやってきた。


「ねぇ僕と遊ばない?」

その子供は、誰が見てもイケメンだと分かるほど整っている顔立ちと綺麗な金色の髪を後ろで結んでいるのが特徴的だ。


とても知的そうで多分育ちも良さそうだ。

関わっておいて悪いことはないだろう。

何より友達が欲しい。ずっと家族だけしか話さないのも心配されちゃうしね。


「いいよ一緒に遊ぼう!お母さん今日は魔法の訓練はお休みしていい?」


「そうね最近頑張ってるから、遊んできてもいいわよ。ところであなたお名前はなんて言うの?」

そうだ名前聞いてなかったな。


「僕はフォイアス・アルト・ガントレットと申します。」フォイアス君は母に一礼した。その動作は洗練されていて無駄がない。


「アルト……村長のご子息さんよね。」

マリアードは眉をひそめる。

「怪しく思うのはしょうがないですよね。村の人なら『あの事』もご存じでしょうから……。」


『あの事』とはなんだろう、俺の知らない村のタブーでもあるのだろうか……。しかし彼はとても頭が良さそうだし、礼儀作法もちゃんとしてる。


俺は彼とお友達になりたいのだ。


「お母さん!僕はフォイアス君と遊びたい!」

「わかったわよ……ペルセウス。私はフォイアス君のお母さんとお話してくるから……。」


マリアードはそういうと、どこかへ行ってしまった。ママ友的なやつだろうか。仲悪くならないといいな。


「フォイアス君だっけ?何して遊ぶの?」

「わからないや……フフッ。君だってお砂場遊びはつまらないでしょう?」


「確かにそうだけど……。」


とても4歳児同士の会話に見えないな……。



もしかしてフォイアスくんも転生者だったりするのでは?話しかけてきたのも納得がいく。ちょっとカマかけて見るか……

久しぶりに日本語を使うか。


『君のおちん○んすごくデッカイネ〜』

これで表情を変えない日本人はいないはずだ……。


「ねぇ、『うぉちんちん?スゴくデカッイイネ〜?』って何?」


「嫌なんでもないよ、ちょっと間違えただけ。」

何を間違えたと言うのだ!

自分で言って恥ずかしくなったじゃないか!


「ねぇ、ペルセウス君は普段何してるの?」

あれ、俺この子に名前教えたっけ?まあいいや。

「僕は将来偉大な魔法使いになるために特訓しているんだ!」

4歳児で魔法使えるなんてすごいだろう?褒めてもいいぜ。


「僕も魔法使えるよ!」

なに?!さすがに使える魔法の数では負けていないはずだ……。


「ど、どんな魔法を使うのか……な?」

「使える魔法は10個だけ。そもそも魔法を習いだしたのも最近なんだよ。」


10個『だけ』だと……。俺はまだ2桁も使えないというのに。しかもなんだ、最近習い始めただと……


これが才能の差というやつだろう。最近浮かれてた自分に喝が入るよ……。


「一緒に魔法の勉強でもしようよ!」

フォイアス君は満面の笑みでそう言ってきた。悪いやつじゃないしな断る理由もない……。


「いいよ!」

俺は二つ返事で了承したのであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


フォイアス君は凄い。魔法の使い方がとても上手なのだ。それに今の時点で俺の10倍程の魔力量を持っている。まあ俺の魔力量が少ないのもあるが……


とても4歳児とは考えられない。

俺二週目なのに普通に4歳児に負けてる……。


「ねぇ魔術は使える?」

魔術とは人が10歳までに定着する。その人だけの魔法と考えてくれればいい。

「僕はまだ定着してないんだ……。フォイアス君は?」

「1年くらい前に定着したんだよ!」


おぉすごい!だいぶ早い段階で定着しているな。

「どんな魔術なの?!」

気になるすごく気になる。あんさん早く教えて〜!


「えっとね。僕の魔術は『時を翔ける者』《ヘリオス》って言うんだ。」


「もしかして『時を翔ける者』って未来や過去に行けるの?!」


「行けるかもしれないけど、今は無理かな……。

今は自分の体を早く動かすくらいしかできなよ。」


十分すごいな『時を翔ける者』。

彼の魔術は絵本に出てくる主人公みたいだ……。

おかしいな。定着して1年も経つのにそんな話1回も聞いていない。


こんなチート級な魔術もっていたらペヤードとかから話を聞いているだろう。


「そんなすごい魔術を持っているのにどうして噂にすらなってないんだろうね?」


「それは〜ね……」

フォイアスは少し言いにくそうに俯く。

「何か事情があるの?」

「『あの事』と関係してるんだ……。」


さっきマリアードと話してた時にもあったが『あの事』とはなんだ?


「『あの事』って?」


「子供は知ってはいけない掟があるけど君には特別に教えよう。僕は生まれてから3年間魔力が一切なかったんだよ。それで悪魔が付いてるとか色々言われたらしくて殺されそうに……」


重い…空気が重い。新手のス○ンド使いだろうか。


この世界には悪魔もいる。絵本では天使と戦争をして滅びかけているらしいが。本当の歴史がどうかわからない。そこら辺は学校で教えてもらおう。


「でもここ1年でやっと魔力が宿ったんだ。殺されずに済んで安心だよ〜。」


「魔力も多いし魔術も上手いし羨ましいよ。」

本当に羨ましい。彼は勇者にだってなれる素質を、才能を持っているのだ。


「でも僕は君に追いついて、追い越すよ。」

俺は才能が嫌いだ。だから努力で埋めようじゃないかその差を……。


「期待してるよ!」

「生意気なヤツめ〜」

「生意気って。まだ4歳だし……。」

「そういえばそうだったね。」


俺たちは共に笑いあった。周りからは「何なのあの子達。」とか言われていたが……。

それからフォイアス・アルト・ガントレットとは週に1度位の頻度で遊びや魔術の訓練をした。




そう、俺は初めてのお友達ができたのだ。



シルバ○アファミリーとかじゃないぞ。

ちゃんと人間のお友達だ。






後書きなるもの……

マリアードの魔術は『自然を愛する者』《ヴィーナス》です。植物を操れる魔術。動物も多少操れる。


主人公ペルセウスはペヤードの『製作者』とマリアードの『自然を愛する者』を合わせた感じの能力に成りますのでお楽しみを……。

魔術定着するのは学校入ってからにしようと思います。それまで待っといてや〜。

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