2話 それから色々

今日でペルセウス・フリーゲンの体に転生してから3年がたつ。この異世界でも誕生日というものがあることに驚いた。


どうやら日付なども前世とほとんど変わらないらしい。


この世界のこともだいぶ理解してきた。

まず今はエルシア暦479年、10月25日。

そしてここは、ローリア王国モレナ領のアルト村という場所だ。

俺は476年の10月25日生まれになるので、冒頭にも話したように、ちょうど3年経つのだ。


皆も気になっているであろう魔法のことだが、今はあまりよく分からない状態である。

まずこの家に魔法に関する本があまりないのと、6歳になれば家の近くにある、学校に通えるようになるため、今は深く考える必要はないだろう。


とりあえずこの3年間で言語をマスターした。

ほとんどの言葉も分かるし、書ける。前世ならこんなに早くは覚えることはできなかった。


この体は前世の俺より才能があるというか……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ペルセウス〜!夕飯にしましょう〜。」

リビングの方からご飯のいい匂いがする。今日は父も仕事から帰って来ているそうだ……誕生日だから早く上がったのだろうか……。


「お母さん今行きます!」

幼児プレイも手馴れたものだ。今は羞恥心など全く感じない、それどころか楽しんでいる自分がいる。

「今日は何の日かわかってるよね?」

母親がキラキラとした顔で言ってきた。


「今日は僕の誕生日だよね?!」

「そうよペルセウスいい子いい子」

俺は母親に撫でられながら椅子に座った。


「ペルセウス今日は何をしていたんだ。」

「今日はお母さんと一緒にお外に遊びに行ったんだよ!」

「ちゃんとお母さんの言うことは聞くんだぞ……。」

「はい!お父さん!」


父親はいつも優しそうな目をする。この目を何処かで見た事がある気がした……。

そうだ前世の父親もこんな目をしていた……。


この世界の父親を見ると、なぜか前世の父親と姿がダブって見える。ホームシックとかいうやつだろうか。


まだ前の世界に戻る手がかりは掴めていない。

そもそもなぜ、俺はこの世界に転生したのだ……

それがわかれば帰ることも可能な気がする。

時間はまだある、焦らずにいこう。


台所の方から母親が料理を持ってやってくる。

「これで全部揃ったわね。それじゃあ食べましょうか♪」

誕生日だからいつもよりも豪華だ……。

「みんな手を合わせて〜。」

俺と父は手を合わせる。

『いただきます。』


みんな揃って、笑顔で食事。これは理想の家族ではないだろうか。前世の食事はドアの前に親が置いてくれていたので基本一人だったな……


それから他愛もない話をして食事は終わった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


誕生日は豪勢な食事だけじゃない。もちろんプレゼントだってある。

1歳の誕生日プレゼントは積み木。

2歳の誕生日プレゼントは流行りの絵本。

そして今年は……。


「ペルセウス目を開けていいぞ。」

父にそう言われゆっくりと目を開ける。

これは……なんだろう。何処かで見た記憶がある。

「ペルセウスの為に父さんが作った、絵本に出てくる杖だよ。」


そうだこれは2歳の誕生日に貰った絵本に出てくる杖にそっくりだ。俺はあの本が好きで何回も読み直していたから、作ってくれたのだろう。


「お父さんありがとう!大事にするね!」

「あぁ、そうしてくれると助かるよ。その杖で母さんを守ってあげるんだぞ……。」

「はい!」


杖をじっくりと眺める。

この杖はなかなか高そうである。こんな物を作れるなんて家のパパはすごいな。杖の先端には宝石のようなものがついている。魔石だろうか……。


この世界には魔物がいる。ゲームでもおなじみのゴブリンやスライムも当然いるし、ドラゴンだっている。


俺が夜更かししてると母親によく

「早く寝ないと魔物に食べられちゃうぞ〜!」と言う。やはり魔物はやはり危険なものなのだ。


こうして3歳の誕生日を終えた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

何日か後。


俺は魔法をならおうと思った。

誕生日で貰ったこの杖もずっと寝かしておくのは可哀想だしね。


魔法は学校で覚えるのが基本なのだろうか?しかしそれでは最低でもあと3年待たないといけない。


俺自身アニメもラノベも好きだったので魔法を使ってみたい気持ちがある。そう急がなくてもいいと思ったが状況が変わった。


俺はペルセウス・フリーゲンの体を乗っ取ってし待った訳だが……

そのペルセウス君の意識はどこへ消えたのだろう?

魂とかいう概念があるかわからないが……

もしかしたらこの体には無職のクズニートの魂と

ペルセウス・フリーゲンの魂ふたつが混ざっているのではなかろうか?


そう仮定すると、いつかペルセウス・フリーゲン元々の魂がこの体に定着するかもしれない。

俺としては悔いの残らないように逝きたいのだ。


時間は短いかもしれないし長いかもしれないが早いに越したことはない。だから急ごう。それが1番だ。


俺は早速、両親に魔法について聞くことにした。

「お母さん。僕も早く魔法を使ってみたいよ!」

我ながらに名演技である。

「そうね〜

お父さんに聞いてごらんなさい。」

母はクスッと笑うと行ってしまった。


次は父だ。

「お父さん!」

「どうした?ペルセウス。」

「僕、魔法を使ってみたいんだ!」

父の様子が変わった。虎のような目付きになった。訳ではなく。

「そうか〜ペルちゃんも魔法を使って見たいのか〜。明日からパパとママが教えてあげよう〜。」


え、なんだろう。このパパはすごく気持ち悪い。

いつもの逞しくも優しい俺のパパはどこへ行ったのだろうか……。


「あ、ありがとう……。お父さん。明日からよ、よろしくね〜。」

俺は引きつった笑顔で応えた。

「ペヤード!。やっぱり血は争えないわね!」

「そうだなマリアード!」



もしかしてこの2人魔法オタク?なんじゃね……




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