同じ落とし物

(お題:栗、携帯、バイク)


「なにかお探しですか?」


「えっ。あ、ちょっと家の鍵を落としてしまったみたいで」


「えーっ! それは大変ですね。あの、よければお手伝いさせてください。わたし、探しもの得意なんです」


「ほんとですか、いやぁ助かります! あたりも暗くなってきて、正直なところ独りで少し不安だったんですよ」


「いえっ、これもなにかの縁ですし」


「こんな辺鄙な場所で人と出会えただけで立派な縁です。あっ、もしかしてこちらの方ですか? すみません、辺鄙なんて言っちゃって……」


「あはは、違いますよ。秋風が気持ちよくて、ついで遠出しちゃいました」


「あなたもツーリングですか。若い女性のバイカーと話すなんて初めてだなぁ。よかったらあとでバイクを見せてもらっても?」


「ええ、ぜひ。最近購入したばかりで、いろいろ教えてもらえると嬉しいです」


「そうなんですか。偉そうに言ったけど、実は、俺もこの前買ったばかりで」


「ふふ、気が合いますね。……じゃあ、相性テストじゃないですけど、質問してもいいですか。秋といえば?」


「食欲の秋、かな」


「わ、一緒のこと考えてました! もしかして、好物はご飯だったりして?」


「なんでわかったんですか!」


「やった! 正解ついでに、これ、見つけたんですけど」


「おおっ、その鍵! ありがとうございます! 本当に探しものが得意なんですね。俺なんて三十分も探していたのに」


「たまたまですよ。草むらの陰にあったので、運がよかったかもですね。ちょうど陽も落ちましたし、そろそろわたしは帰らないと」


「はい、本当に助かりましたよ。……あ、そういえばバイク見る約束」


「縁ができたので、またどこかで会えますよ。きっと!」


 そう言い残して、女性は元気に手を振りながら去っていった。


「縁、かぁ」


 縁というより、もはや運命的にすら感じてしまう。運命論なんてものは好きじゃないが、こういう出逢いならば満更でもない気持ちになる。


「……あれ、ここにも鍵が落ちてる。……うちのかと思ったら似てるだけか。お、このキーホルダー俺も持ってるなぁ」


 拾い上げたタイミングで携帯が鳴った。知らない番号だったが出てみると、


『あのすみません、わたしも、大事な鍵を失くしちゃったみたいで』


「ああ、さっきの。たぶんこれ、かな。ちょうどそれらしい鍵を見つけたところです。さっそく恩返しできそうだ」


『よかったぁ! やっぱり縁で繋がっているんですねっ、わたしたち』




 ————


 会話文メインの意味がわかると怖い話にチャレンジしたかったんです。

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