密室デスゲーム

(お題:ワニ、豆、セーター)


「うっ頭が痛い」

「なんですかこの部屋は?」

「一体ここはどこなの!?」

「……」


 広く無機質な部屋で、四人の男女がいっせいに眠りから覚めた。年齢性別はバラバラ。お互いを知らず、どうしてこの部屋にいるのかわからない様子。


『――ククク、目が覚めたようだな愚かな人間ども』


 壁に設置されたモニターにをデフォルメしたキャラクターが映し出された。


「誰だお前は!」

「目的は何ですか?」

「私達をどうしようっていうの!?」

「……」


 戸惑う四人に対して、ワニのキャラクターは画面の奥で不敵に笑う。


『――おまえたちには、この密室で、お互いの豆を賭けたゲームをしてもらう。そして、生き残った者だけが脱出できる。……おっと、モニターを壊そうだなんて考えるな。さもないと、おまえたちに着せたそのの首が徐々に締まっていくぞ』


「なんだと。いつの間にこんなものを!」

「信じられません。素肌にセーターはごわごわするというのに」

「なんで私だけ童貞を殺すセーターなのよ!」

「……」


『――ククッ、早速お互いを疑っているようだな。では脱出のヒントを与えてやろう。第一のヒントは——』


「会話が繋がってないな」

「さては録音ですね」

「ねえ、この部屋エアコンきつくない?」

「……」


『――さあて、たのしいゲームのはじまりだ』


「くそっヒントを聞き逃した!」

「まずはちゃんと説明を聞くべきでしたね」

「そこの彼みたいに静かに聞いておくべきだったわ」

「……」


『――制限時間は残り3時間……』


「というかそこのおまえ、さっきから何で黙っているんだ! どう考えても一番怪しいぞ!」

「早とちりはやめましょう。もしかすると声の出ない病気かもしれません」

「そうよ! 差別的な発言よ!」

「……あ、ぼく人見知りで」


『――ひとつ言い忘れていた。部屋の端に準備しておいた道具は、自由に使用していい。……たとえば、邪魔な人間の数を減らすため――』


「おい、ここになにかいろいろあるぞ」

「カツラに衣装、モノボケでもすればいいのでしょうか」

「着替えたいけどサイズ感が違いすぎて心が拒否するわ」

「……」


『――混乱、猜疑、暴力。フフフ、人間はなんて醜い生き物なんだ』


「さっきからごちゃごちゃうるさいな。一〇〇日後に死にそうな見た目のくせに」

「あっ、このモニター、ミュートにできますよ」

「ところで、を賭けたゲームって何かしら」

「……」

「そのへんは聞き流していた」

「なんとなく命の比喩かと思っていましたが。ただの豆なら別にあげますよ」

「私もいらないわ」

「……ぼくも」


『パッパラパッパッパー』


 するとファンファーレと共に壁だった箇所が開き、廊下のような道が出現した。


『――ククク、おめでとう。豆を賭けたゲームに生き残った人間よ。だがすでに汚れてしまった手は過去の日常へ帰ることを許さ——』


「もう帰っていいのか」

「向こうに豆の積まれた台が。奥にあるのは出口でしょうか」

「早くシャワー浴びたい」

「……」




 ————


 密室デスゲームモノが書きたかったんです。

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