9/25更新②

 拓を先頭に地上目掛けて一目散に走る。どこをどう走り、どのぐらい走ったのかわからないが、地上の光が見える。

「もうすぐです!」

 拓が叫ぶと、背後から崩壊の音が聞こえる。

「油断するな! 走り抜けろ!」

 綱吉が叫び、全員の速度が上がる。大きな音と共に砂埃が舞い、視界が悪い。

「助かりました……」

 真理愛の声が聞こえ、咳き込む音や荒い呼吸の音がする。それぞれが大の字になり、呼吸を整える。潜入した施設からそう遠くない場所に出た。

「こうなったら……不完全でも……」

 声がする方を見ると、斉藤誠司が錫杖を手にしていた。

「お前!」

 恵吾が奪い取ろうと立ち上がるが、足がもつれこける。

「マジカライトのエネルギーを電気に変換するのは……本来の使い方ではない……」

 斉藤が錫杖を掲げる。

「生命のエネルギーをマジカライトに送ることでその真価を発揮する!」

 マジカライトから金色の光と暴風が巻き起こる。魔魅子が錫杖を持った時と同じ現象が起こっている。斉藤の撃たれたはずの足からは血が止まり、斉藤は立ち上がった。巨大な金の翼が現れ、斉藤は空中へと浮かぶ。

「生きている妻と娘に会いたい……それだけでいいんだ」

 金の光が地上に集まる。二つの塊になっていく。

『ズドォォオン!』

 耳をつんざく音がしたかと思うと、斉藤の左半身が弾け飛んでいた。

「くそ……もう少しで会えたのに……」

 金の翼は消え、斉藤の身体が地上へと落下する。慧吾の隣で斉藤は絶命していた。

師匠マスターか……」

 恵吾は目を青く光らせ、音のした方をみる。2キロ先の山の上に見慣れた人物が立っている。大きな狙撃銃が足元にあり、双眼鏡でこちらを見ている。

「詰めが……甘いんじゃ……クソガキが……か」

 恵吾はマスターの独り言を口の動きで読み取った。マスターは狙撃銃を分解し、撤収の準備をしていた。

「さすがにもう動けへんわ……」

 恵吾はその場で大の字になり、目を閉じた。

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