8/16更新

「でも情報収集って言っても、何かあてはあるの?」

 魔魅子は恵吾の腕に腕を絡ませながら街を歩いている。

「まあ、あるにはあるで」

「そうなの?」

「うん、向こうが会ってくれるかはわからんけど」

「そうなんだ」

「魔魅子ちゃんは? 創愛グループのツテ使うんか?」

「うん、いつものお手伝いさんに連絡してあるの。何かわかったら連絡してくれるって。勿論内密にね」

「なんかわかればええけどなあ」

「優秀な人だからきっと何か見つけてくれるよ」

「とりあえずこの辺の俺のツテを当たったら移動しよか」

「おっけー」


 恵吾と真理愛は街を歩き、情報の集まりそうな場所を巡った。バーや喫茶店、情報屋などを当たる。

「しっかし、何もわからへんな」

 恵吾は流行りのスイーツドリンクをストローで吸う。

「そうね。千葉くんの情報網で何もわからないのかあ」

 魔魅子も同じくスイーツドリンクをストローで飲んでいる。

「んー、次はタクシーで移動しよか」

「遠いの?」

「歩くにはな」

 二人はタクシー乗り場でタクシーを拾い、千葉は住所を伝えた。

「自動運転のタクシーじゃなくて良かったの?」

「ええねん。おっちゃんタバコ吸ってもいい?」

「いいよいいよ、窓は開けてくれよ」

「あーい」

 窓を開け、恵吾は電子タバコを起動させる。

「そういうことね。どのぐらいかかるの?」

「まあ、三十分もかからんのちゃう?」

「ふうん。どこに向かってるの?」

「内緒。着いてからのお楽しみ」

「えーつまんないなあ」

「まあすぐ着くって」

「次のとこでは何かわかるかな?」

「まあ、今までで一番可能性があるな」

 ふーっとタバコの息を吐く。

「次で何もわからんかったら……正直お手上げやな」

「研究主任の名前もわからないなんて変だよね?」

「そうやな、情報隠すのがよっぽどうまいらしいな」

「グループの研究なんて漏れちゃダメだもんね」

「まあなあ……ちょっと寝るわ。おっちゃん着いたら起こしてや」

「いいよ。おやすみ兄ちゃん」

「おやすみ。魔魅子ちゃんも休んどきや」

「はあい」

 魔魅子もシートに身体を預け、目を閉じた。


「兄ちゃん、姉ちゃん。着いたよ」

 恵吾と魔魅子は伸びをし、支払いを済ませる。

「ここは?」

「シールドセキュリティの本社ビルやで」

「えー? 恵吾くんが攫われちゃった場所だよね?」

「柊木組やったら何かわかるやろ」

 シールドセキュリティ本社の敷地に入るが、先の騒動で道にヒビが入るなど、壊れている部分がある。メインエントランスに進み、恵吾は受付にいる女性に話しかける。

「お姉さん。柊木の会長さんか組長さんいる?」

「会長……組長……? 弊社は警備会社なのですが」

「そうか、じゃあ木村って人にそれを伝えてくれへん?」

「木村隊長ですか? 木村は忙しいので……」

「千葉恵吾が来たって伝えるだけでもええんやけど」

「うーん……」

 対応している女性は困っていた。

「おい、千葉恵吾何しにきた!? 受付の人を困らせるんじゃない! 俺ならここにいる!」

 メインエントランスから武装した男が慌てて駆け寄ってくる。肩には盾にSSと書かれたロゴのついたワッペンが付いていた。

「隊長さんやん! 助かったわ! 会長さんか組長さんと話ししたいんやけど」

 木村は恵吾の近くに寄り、小声で話す。

「大声でそんなことを口にするんじゃない……表向きは警備会社なんだぞ」

「そんなん隠さんでもバレバレやろ? 隊長さんやったら話し通してくれるやんなあ?」

「あの方達は忙しいんだ。お前に構っている暇などない」

「ちょっと話聞くだけやん。な? 話できへんのやったら、ちょっと受付の姉ちゃんと話して帰ろかなあ。お姉ちゃんの働いてる会社。表向きは警備会社やけど、地下であんなことやこんなことしてるでって」

「やめろ! あの人は一般人だ」

「俺、お喋りやからなあ」

「わかった。確認はしてやる。別の部屋を用意する。ここじゃ目立つ」

 木村は受付の女性に確認をとる。

「すまないが、空いている会議室を手配してくれ」

「かしこまりました……こちらのお部屋を押さえましたのでお使いください」

 受付の女性は端末を操作し、木村に案内する。

「ありがとう」

「さ、いこか。どっちや?」

「黙って着いてこい!」

 先に歩こうとする恵吾に木村は怒鳴りつけ、恵吾と魔魅子を会議室へと案内する。


『何の用だ!? 午後は予定が詰まってるから電話さんじゃねえって言ったろ? 木村ぁ!』

 木村のデバイスからしゃがれた声が聞こえてくる。木村は部屋に入るとすぐに柊木会柊木組組長の柊木宗盾に連絡した。

「すみません。今本社に千葉恵吾が来てまして……会長か組長を出せと騒いでいまして」

『あぁ? 千葉恵吾ってこの間の?』

「ええ……話がしたいと。どうしますか?」

『すぐ向かう』

「いいんですか?」

『うるせえよ! 黙って言うこと聞いとけ! この時点から俺の客人だ。俺が着くまでの間、VIPルームでもてなしてやれ』

「会長には?」

『親父には黙っとけ! いいな? 余計なことすんじゃねえぞ!』

「わかりましたよ」

 返事を終えないうちに通話は切れていた。

「聞こえていたかもしれないが、組長は話を聞くそうだ」

「ほなこんな普通の会議室やなくて、VIPルームとやらにいこか。茶出してくれるんやんな?」

「ボーイさん、お荷物持ってくださる?」

「お前らな……!」

 調子に乗る恵吾と魔魅子に怒りを覚えながらも、木村はVIPルームに二人を案内した。

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