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「魔魅子さんが創愛グループの近親者であることはご存知ですか?」
「らしいな、創愛グループの会長さんが探してんで、魔魅子ちゃん」
「創愛司沙は義理の父に当たる人なの。養子なんだ、私」
魔魅子は苦笑いしながら恵吾に答える。
「養子なあ。そういえば、柊木会から一千万の懸賞金懸けられてんのはなんでなん?」
「柊木会と創愛グループの関係者の取引を邪魔しちゃったからかな」
「なかなか危ないことすんねんな」
「ナノマシンの動力源って知ってる?」
「マジカライトって名前やっけ? 質量に対して、莫大なエネルギーの保存が可能な最近発見された鉱石。ナノマシンの動力源にしてるし、最近の科学の発展もそれのおかげなんやろ? 現代科学に魔法みたいな夢のエネルギー源となる鉱石やからマジカライト」
「流石恵吾くん。この街の郊外でもそれが採れるんだよ。財閥もマジカライトの輸出で儲けてる部門があるの」
「今回の件となんか関係あんの?」
「エネルギーの貯蓄効率が良いっていう部分が厳密には違うの。マジカライトは本当に魔法の力が込められてるの」
「魔法の力?」
「非科学的かもしれませんが、本当です。その事を知っているのは財閥の上層部や一部の研究機関ぐらいだとは思いますが」
拓は束ねられた紙の資料を恵吾に渡す。どこから手に入れたのかはわからないが、信憑性の高いものなのだろう。簡単に目を通しながら、魔魅子に続きを促す。
「純度の高いマジカライトは、魔法の力が込められていて、色々な作用を生み出すの。使い手によって個人差があるんだけどね」
恵吾は自身の身体強化や、祥貴の炎を纏った刀を頭に浮かべていた。
「それで、今回見つかったマジカライトは純度が高くてとても大きなものだったの。それを悪用しようとしてる人が創愛グループにいて、その取引を邪魔したの。拓くんと私でね。一千万円の方は強奪したんだけど……」
「もしかして、魔魅子ちゃんの成功報酬の一千万円って……?」
「うん。その一千万円」
魔魅子は悪戯っぽく笑う。
「そんな危ないお金やったんか」
「柊木会が手にするはずだったお金だったから。恵吾くんの事を柊木会の人達が攫ったの。ごめんなさい」
「まあ、今更謝られてもしゃあないけど」
「ごめんなさい……」
「で、マジカライトの方は?」
「創愛グループの研究主任の手に渡ってしまいましたね」
「そいつは何をするつもりなん?」
「詳しくはわからないんだけど……死体を使って何かしようとしてるみたいなの」
「創愛グループの廃病院でゾンビ見たで」
「それと関係あるかも。あの人そこでも研究してたみたいだから」
「創愛司沙は知ってるんか?」
「ばれないように動いてるみたいなの。私と拓くんも動きを追ってるんだけど……」
「尻尾を掴めませんね」
拓は首を振り、ため息をつく。
「そっか、まあ、そいつを止めればええんやな」
「協力してくれるの?」
「魔魅子ちゃんとのデート俺の中では終わってへんし、成功報酬受け取るのに納得いってへんねん。協力はするけど、その前に……」
恵吾はベッドから起き上がり、拓の方へ歩みを進める。
「まだ動かないほうがいいのでは?」
「そうかもしれへんけど」
拓の身体が吹き飛ぶ。恵吾は渾身の右ストレートを拓にお見舞いしていた。
「効きますね……」
「ちょっと気分晴れたわ。まだ足りひんけど……」
恵吾は追い討ちで、寝転がる拓に蹴りかかった。鈍い音が響くはずだったが、右足が空を蹴り、恵吾は体制を崩す。
「一発で勘弁してくださいよ」
拓はデバイスを起動し、目に緑色の光を宿して立っていた。
「その能力なんなん?」
「相手の視界を奪って、認識をずらすんです。僕は視界ジャックって呼んでます」
「やから攻撃外れたり、祥ちゃんに切られたときも何もなかったんか」
「そうです」
「卑怯やな」
「一応弱点もあるんですよ? 教えませんけど」
「どうでもええわ。今度敵対したらボコボコにしたるし」
「ストップ! 巻き込んだのは私なんだから悪いのは私! だからやめて」
「はあ、わかったわかった。とりあえずユートピアに戻ろかな。みんな無事か気になるし、店もめちゃくちゃになってそうやし」
「ナノドラッグは抜けていそうですね」
「やっぱ注射されてたんか。やけに感情のコントロール効かへんなとは思ってたんやけど」
「それもなんとかしなきゃなんだよね。若い人中心に広まってるみたいだし」
三人はユートピアへと向かうことにした。
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