4/19更新

「千葉さん。僕ですよ」

 覆面を取った男は、恵吾の見知った顔だった。確か最後に会ったのは、ユートピアでTRPGをした時だっただろうか。いつものオリーブのコートではなく、ミリタリージャケットに身を包み、肩には死神とリボルバーのロゴの入ったワッペンを付けている。中肉中背で、センター分けの黒髪は清潔感を与えている。ユートピアの常連客の一人で山田拓(やまだたく)だ。

「山田くん……?」

「いやあ、お久しぶりですね」

 恵吾はきょとんとした顔で拓の顔を見つめていた。

「応急処置はしたのですけど、ちゃんとアヴェさんに診てもらった方が良いですよ」

「おおきに……」

「ああ、説明しないといけませんよね。千葉さんは丸一日ぐらい寝てましたかね」

「いや、そこはまあ、ええんやけど」

「私の依頼とか、私を攫った理由とかそこからだよね? 恵吾くん」

 魔魅子がフォローを入れる。

「そうやな、一から教えて欲しいんやけど……自分は敵なんか?」

「おっと、これはこれは。そうですよねどこから話しましょうか」

 拓は暫く考えた後、口を開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る