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 恵吾は困惑していた。頭に血が上り祥貴に刀で切られたはずだった。同じような状況が前にも――。

「お前の仕業か、どいつもこいつも鬱陶しいのう」

 恵吾はナノデバイスを起動させようとするが、反応しない。

「ジャマーか」

 舌打ちをし、覆面の男に殴りかかる。男はひらりと身をかわし、足をかける。恵吾は体勢を崩すも、受け身を取り、男を見上げる。覆面から覗く目は緑色に光っている。

「無駄ですよ」

「黙れや」

 ホルスターから拳銃を素早く抜き、覆面の男目掛けて弾丸を放つ。恵吾の腕前は鍛え抜かれた軍人並みであったが、覆面の男には当たらない。正確には当たっているはずなのに、覆面の男がズレているような感覚。

「さあ、着いてきてもらいますよ」

 恵吾は男の言葉を無視し、銃を撃ち続けるが、一発も当たらない。すぐに銃弾を撃ち尽くし、マガジン内の全ての薬莢が床に落ちる。

「では行きましょうか」

 覆面の男のそばに控えていた重装備の男たちが、恵吾目掛けて何かを放つ。ネットランチャーによって恵吾は身動きが取れなくなり、大人しくなる。祥貴や綱吉が助けようと動き出そうとするも、動きが止まる。襲撃者の自動小銃の銃口が祥貴達に向けられていた。

「このまま見逃がしてくれれば穏便に済みます」

 祥貴と綱吉は無言で覆面の男を睨みつけながら、両手を挙げ、抵抗の意思がないことを示す。

「怪我人が出なくてよかったです。では行きましょう」

 控えていた男達は恵吾に注射を打ち、二人がかりで抱え、覆面の男に続いて部屋を出て行った。取り残された祥貴は応援に向かってきている警官に連絡を入れ、覆面男の足取りを追おうとする。


 恵吾が目を覚ますと、ベッドに寝かされていた。特に拘束されている様子はない。身体を起こそうとするが、痛みでうまく起き上がれず、素直に寝転んだままにすることにした。

「あ、恵吾くん! 目が覚めたんだ!」

 声がする方へ目をやると、見知った姿の少女がベッドの脇に座っていた。神園魔魅子だった。

「魔魅子ちゃん……?」

「いやあ、危ないところでしたね」

 別の方から声がし、そちらを向くと、覆面の男が立っていた。

「お前、顔見せろや」

 恵吾は怒りがこもった声で覆面男に話しかける。

「おっと、失礼」

 覆面の男が、覆面に手をかけゆっくりと覆面を脱ぐ。

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