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「マスターの容体は?」
綱吉が処置している真理愛に話しかける。
「大きな怪我としては、まず腹部の銃創。弾は取り除きましたが、出血が多いのが気になります。それと、弾が頭をかすめたようで、その後倒れて頭を強く打ったようです。そのため意識はまだ戻っていません。これから検査をしますが……」
真理愛は腹部の縫合をしながら答える。
「検査が終わるまでなんとも言えないか」
「ええ……」
「千葉くんはシールドセキュリティに連れ去られていたよね?」
扇子を閉じたり開いたりしながら、祥貴は重たい口を開いた。
「そうだな」
「残念ながら多くの人員を動かせないな」
「なぜですか?」
「警察上層部に柊木会と癒着してるやつがいるんだな?」
祥貴は首を縦に振らない代わりに答える。
「柊木会の絡む捜査にはいつも人員を割けないんだよね。いざ、摘発しようとしても、なぜか通報が多発したり、大規模な訓練の予定が入れられたり……勿論抗議したこともあるけどね。こればっかりは僕でもどうにもならない」
祥貴は電子煙管(きせる)を取り出し、カートリッジを装着して苦々しく煙を吐く。
「さすが、天下の警察様だな」
「そう言われるとなんとも言えないね」
芝居がかったように祥貴は肩をすくめる。
「お前は協力してくれるんだろうな?」
タバコの火を荒々しく灰皿に切れ長の目を鋭くさせ、祥貴を見つめる。
「勿論捜査協力してもらうよ? 重要参考人さん」
煙管を軽く叩きつけ、カートリッジを灰皿に落とし、祥貴は冷ややかな目で綱吉に視線を返す。いつもは千葉恵吾が間に入り和やかな雰囲気を作る。恵吾がいない時はマスターの目があり、争いは起きない。一方は攫われ、もう一方は意識がない。
「二人ともやめましょう。千葉さんの場所はわかるんですか?」
真理愛の言葉で争っている場合ではないことを綱吉と祥貴は理解し、一時対戦状態となった。
「追跡情報からすると柊木ビルだな。途中で追跡装置は壊されているようだが」
「まあ、シールドセキュリティの本部もあるしね」
「どうしますか?」
「準備がいるね」
「そんな悠長なことしてられるか。すぐ行くぞ」
「待ってください。私も準備をしてから向かう意見に同意します」
「柊木ビルは柊木会柊木組の本部でもあるし、シールドセキュリティの本部でもあるね。対策は必要でしょ?」
「そうですね。ただ、ここで準備というのは……私たちが襲撃される可能性がありますし、この状態のマスターを巻き込むわけにもいきません。ユートピアは警察の現場検証でそれどころじゃありまけせんし」
「俺のガレージも今は仕事の荷物でいっぱいだぞ」
「んー、じゃあどうしようか」
三人は俯きがちに考え、暫く静かな時間が過ぎる。
「あの場所はどうですか?」
真理愛は提案を二人に伝えた。
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