3/20更新

(盾のロゴ……シールドセキュリティか)

 武装した集団はシールドセキュリティの部隊だった。手際よく店内の制圧を進める。

「千葉恵吾! 居るのは分かっている! 大人しく降伏し、出てくれば殺しはしない!」

「狙いは俺なんか。みんな床下から逃げて。俺が食い止めるから」

 恵吾は小声で三人人に指示を出す。

「僕も残るよ」

「いや、祥ちゃんはみんなの安全を守ってほしいねん。信頼してるし、頼んだで」

「しかし……」

「ええから、早よ行って」

 恵吾たちのいたテーブル下の蓋を開けると、通路があった。

「通路抜けたら公園まで通じてるから、落ち着いたら様子見に来てくれたらええし、そん時にマスターの回収頼んだわ」

「任せろ」

 恵吾は通路へと入る三人に声をかけ、綱吉もそれに応える。

「俺はここや! 何の用や!」

 恵吾はテーブルの陰から立ち上がり、両手を挙げる。

「神崎魔魅子の失踪前に、最後に接触していたのはお前だな?」

「やったら何やねん! マスターは無事なんか?」

「死んではいないだろう。今はな。お前に聞きたいことがある。連行しろ」

 マスターの状態を推測し、恵吾は歯軋りをする。リーダー格の男に指示を受けた男達は、恵吾を拘束しようとする。

「縛らんでも逃げへんわ! 触んな」

「うるさい! 大人しく言うことを聞け!」

 銃床で頭を殴られ、恵吾の意識は鈍い痛みで満たされる。腕に注射をされ、恵吾の意識は遠のいていったーー。


『バシャッ』

(冷たい)

 ぼんやりと意識が戻ってくる。恵吾は両手を縛られて椅子に座らされていた。上半身の服は脱がされ、背もたれと離れないように拘束されている。

「目を覚ましたか」

 武装した男が恵吾に水をかけたようだ。手にはバケツが見える。肩には盾にSSと書かれたロゴのついたワッペンが付いていた。窓のない個室には、恵吾の他に三人の男。全員が室内用のマシンガンを提げ、不穏な空気が窓のない狭い部屋を満たしている。

「お陰様でぐっすり寝れたわ」

 恵吾は目の前の男を睨みつけながら、デバイスの起動を試みる。デバイスは腕に装着されたままだったが、反応しない。

「お前に聞きたいことがある」

「俺はお前と話したいことはない」

『バシャッ』

 水をかける音が響く。

「お前は俺の質問に答えるだけでいいんだ。余計な事は口にするな。まず確認だが、神園魔魅子が連れ去られた時、お前は一緒に居たな?」

 魔魅子が攫われた時のことが鮮明に蘇る。恵吾はあの日から自分を責め続けていた。何故守れなかったのか? 何故覆面の男に負けたのか? 恵吾にとって魔魅子は大きな存在だった。

「黙秘するわ。弁護士呼んでくれ」

 恵吾は嘲笑うように言い放った。

「はあっ」

 質問している男は溜め息をつき、隣に立っていた男に顎で指示を出す。隣に立っていた男は、腰から何かを取り出し、恵吾の腕に当てる。

「ぐぅっ」

 恵吾が呻き声を上げる。男が使用したのはスタンガンだった。恵吾の全身に痛みと痺れが同時に襲う。

「まだ、ちゃんと目が覚めていなかったようだな。神園魔魅子の居場所はどこだ?」

「黙秘や」

 スタンガンを持った男は再度スタンガンのスイッチを入れる。

「うぁっ」

 スタンガンを当てられた部分は、赤く腫れ、火傷している。恵吾は痛みで意識が飛んでしまいそうなのを必死に抑える。

「神園魔魅子はお前に何か伝えたか?」

「黙秘や」

 質問している男は拳を振り抜いた。恵吾の唇の端から血が流れる。

「神園魔魅子の居所は? こちらも暇じゃないんだ。早く知っていることを話せ」

「何も知らん。大体なんでお前らが魔魅子ちゃんのこと探してんねん」

 男は恵吾の腹にパンチする。恵吾は呻き声を出し痛みに耐える。ふと、控えていた男が、小声で装着していたイヤホンに話し出す。

「隊長。柊木会長がお呼びです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る