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(盾のロゴ……シールドセキュリティか)
武装した集団はシールドセキュリティの部隊だった。手際よく店内の制圧を進める。
「千葉恵吾! 居るのは分かっている! 大人しく降伏し、出てくれば殺しはしない!」
「狙いは俺なんか。みんな床下から逃げて。俺が食い止めるから」
恵吾は小声で三人人に指示を出す。
「僕も残るよ」
「いや、祥ちゃんはみんなの安全を守ってほしいねん。信頼してるし、頼んだで」
「しかし……」
「ええから、早よ行って」
恵吾たちのいたテーブル下の蓋を開けると、通路があった。
「通路抜けたら公園まで通じてるから、落ち着いたら様子見に来てくれたらええし、そん時にマスターの回収頼んだわ」
「任せろ」
恵吾は通路へと入る三人に声をかけ、綱吉もそれに応える。
「俺はここや! 何の用や!」
恵吾はテーブルの陰から立ち上がり、両手を挙げる。
「神崎魔魅子の失踪前に、最後に接触していたのはお前だな?」
「やったら何やねん! マスターは無事なんか?」
「死んではいないだろう。今はな。お前に聞きたいことがある。連行しろ」
マスターの状態を推測し、恵吾は歯軋りをする。リーダー格の男に指示を受けた男達は、恵吾を拘束しようとする。
「縛らんでも逃げへんわ! 触んな」
「うるさい! 大人しく言うことを聞け!」
銃床で頭を殴られ、恵吾の意識は鈍い痛みで満たされる。腕に注射をされ、恵吾の意識は遠のいていったーー。
『バシャッ』
(冷たい)
ぼんやりと意識が戻ってくる。恵吾は両手を縛られて椅子に座らされていた。上半身の服は脱がされ、背もたれと離れないように拘束されている。
「目を覚ましたか」
武装した男が恵吾に水をかけたようだ。手にはバケツが見える。肩には盾にSSと書かれたロゴのついたワッペンが付いていた。窓のない個室には、恵吾の他に三人の男。全員が室内用のマシンガンを提げ、不穏な空気が窓のない狭い部屋を満たしている。
「お陰様でぐっすり寝れたわ」
恵吾は目の前の男を睨みつけながら、デバイスの起動を試みる。デバイスは腕に装着されたままだったが、反応しない。
「お前に聞きたいことがある」
「俺はお前と話したいことはない」
『バシャッ』
水をかける音が響く。
「お前は俺の質問に答えるだけでいいんだ。余計な事は口にするな。まず確認だが、神園魔魅子が連れ去られた時、お前は一緒に居たな?」
魔魅子が攫われた時のことが鮮明に蘇る。恵吾はあの日から自分を責め続けていた。何故守れなかったのか? 何故覆面の男に負けたのか? 恵吾にとって魔魅子は大きな存在だった。
「黙秘するわ。弁護士呼んでくれ」
恵吾は嘲笑うように言い放った。
「はあっ」
質問している男は溜め息をつき、隣に立っていた男に顎で指示を出す。隣に立っていた男は、腰から何かを取り出し、恵吾の腕に当てる。
「ぐぅっ」
恵吾が呻き声を上げる。男が使用したのはスタンガンだった。恵吾の全身に痛みと痺れが同時に襲う。
「まだ、ちゃんと目が覚めていなかったようだな。神園魔魅子の居場所はどこだ?」
「黙秘や」
スタンガンを持った男は再度スタンガンのスイッチを入れる。
「うぁっ」
スタンガンを当てられた部分は、赤く腫れ、火傷している。恵吾は痛みで意識が飛んでしまいそうなのを必死に抑える。
「神園魔魅子はお前に何か伝えたか?」
「黙秘や」
質問している男は拳を振り抜いた。恵吾の唇の端から血が流れる。
「神園魔魅子の居所は? こちらも暇じゃないんだ。早く知っていることを話せ」
「何も知らん。大体なんでお前らが魔魅子ちゃんのこと探してんねん」
男は恵吾の腹にパンチする。恵吾は呻き声を出し痛みに耐える。ふと、控えていた男が、小声で装着していたイヤホンに話し出す。
「隊長。柊木会長がお呼びです」
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