3/11更新②

「そうだね。しかも上層部は汚職を隠すことと、利権を守ることに必死だ。市民もそれに抗えるほどの力は無い。ただ、それでも僕がいる」

 祥貴からは強い信念を感じる。

「祥ちゃんはご立派やね」

「そう言ってくれるのは、ごく少数だよ。人間はどこまで行っても甘い汁を啜りたいものなのだよ」

「そういうもんかあ」

「まあ、病院跡地については僕が調査しよう」

「ええの? 忙しいんちゃうん?」

「丁度一山片付いたところなんだ。市民が困っているのも放っておけないしね」

「おおきに。こんど激辛ラーメン奢るわ」

「わかっているじゃないか」

 恵吾と祥貴は固く握手をした。そして、綿奈部のデバイスの通知音が鳴った。

「千葉、魔魅子の情報だ」

「見つかった?」

「読んでみろ」

 綱吉は恵吾にデバイスの画面を見せる。メールの内容は以下の通りだった。

『先日の女性について、犯人のアジトを突き止めました。買い出しの内容から推察するに、生存を確認。しかし、警備が厳重で侵入不可。ナノデバイス検知器がある為、盗聴、カメラのハッキングも難航。引き続き監視は続けます。動きがあれば、また連絡します。私立探偵R』

「生きてるってことか」

「無傷なのでしょうか」

「何とも言えないな」

「何の話だい?」

 恵吾は事情を知らない祥貴に、魔魅子が連れ去られてしまったことを伝えた。

「何故僕に相談してくれなかったんだ!」

「警察に頼りたくなかってん」

「嘘だ! どうせ自分の責任だとか思って、自分で何とかしようと思っていたのだろう!」

 祥貴は激昂し、恵吾は俯いていた。

「もっと周りを頼れよ! 自分で何でもできると思って! そんなことだから……」

「東雲さん。その辺にしてあげましょう。私たちにもすぐに通報しなかった責任があります」

 一方的に責められる恵吾を見かね、真理愛は間に入った。

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