第44話・ダーク・ドーン
現実でもゲームでも今は充実しているような気がする。気分だけでも、心は随分と支えられて前に進める。
人間としての芯のようなものはきっと、愛情によって支えられるのかななんて思った。
しかしとて、今日は狩りだ。Lv10の相手を4体が討伐目標。
「こんにちはー! 元双剣の攻略放送午後の部、今日も始まります!」
放送は意気揚々と始めた。新しい自分に生まれ変わったような気分、それは最強なのだ。
そう、今の僕は、最強だ。
卍最強ドリル卍:メスガキで放送して!
ハニー・シルバームーン:メスガキクロたんを摂取にしに来た!
闇を駆ける黄金の閃き:メスガキクロちゃんでしか摂取できない栄養素が存在する。
ダスクえっち:アーカイブに残ってたメスガキ……エッチじゃん?
せっかく謙虚を形からやろうと思っていたのに……。
僕の決断はなんだったのだろうか……。
固まっていると、視聴者たちは更なる追撃をかけてくるのだ。
ダメじゃん寿司ズ:メスガキクロちゃんだと!? なにそれ、供給しなきゃダメじゃん!
シュバルツカッツェ:朗報:β最強プレイヤーがメスガキ
とワイ、ライト:絶対に可愛いと思います。
ฅにゃん皇帝ฅ:もっとメスガキするべき!
あぁ、もう仕方ない。あの一回がなんでこんなことを引き起こすのか。
雑な導入と、恥ずかしさたっぷりの低クオリティだったのに。
「ふぅ……」
息を吐く。そして、整える。僕は今からメスガキだ。
「みんな僕がいないとダメなんだァ? すぐ好きになっちゃって、ちょろいんだァ……。 ざぁこ、ざぁこ!」
なんだかこれはこれで気持ちのいいような……。
自分が強くなったかのような錯覚に陥る。そしてこんなに謙虚さとは無縁な言葉遣いをしているのに……。
シュバルツカッツェ:なんだ!? このリビドーはなんだ!?
ダスクえっち:エッチ過ぎて黄昏そう……
闇を駆ける黄金の閃き:それ賢者タイムじゃね?
ฅにゃん皇帝ฅ:ひっどい下ネタを見たwww
ダメじゃん寿司ズ:ダメじゃんこれ、絶対ダメじゃん! 麻薬かなにかじゃん!
卍最強ドリル卍:やば、妹と弟が同時にそこにいる感覚……
それでも、愛されてしまう。それはまるで、無条件に受け入れられているような、むず痒い嬉しさが心を満たしていくのだ……。
「ざこのみんな、教えて欲しい? ステータスが低くても、工夫だけで倒せる敵! その痕跡の残り方、生態系……」
それでも、知恵の実はもう独占しない。教えるのは楽しいのだ。
人間は根本的には教えたがりで、知りたがり。捻じ曲がるのは、押さえつけられるから。
ハニー・シルバームーン:メスガキなのに賢いから手に負えなくなった感。もっとやって!
とワイ、ライト:ワイにも教えて欲しいデス。
ダメじゃん寿司ズ:ダメじゃん、攻略情報に集中できないじゃん……。
Seven:ふふふ、ざこお兄ちゃんだからクロちゃんに教えてもらえないと困るなぁ……
あ、これ普通に気持ちいい。
「仕方ないなぁ……。じゃあね、教えちゃう! ただし、Lv10の敵はすぐに混沌とした状況を作るから注意だよ! ところで、ここどーこだ!?」
放送を始めたのは狩りをするエリア。ここにお目当ての相手が居る。
レベルアップで取得したポイントはここの敵のために敏捷に振り分け済み。今筋力を敏捷が超えている。
ダメじゃん寿司ズ:まさか!? 燃えるあいつか!?
ハニー・シルバームーン:悪夢の火だるまあああああああああ!
そう、悪夢の火だるまと呼ばれているのが今回のターゲットだ。
「レベル10突破組はなかなかやるね! そう、ターゲットはシュトロン・プッペだよぉ! 正しく対処すれば勝手に経験値になってくれるのに、そんなこともわからないのぉ?」
なかなかメスガキ解像度が上がっているのではないだろうか。
ふと湧き上がる羞恥心。だけどそれは、押さえつける。ちょっとでも気を許したら、きっと顔が水蒸気爆発を起こすのだ。
Seven:しかし、ギミックエネミーしか選ばないなぁ
とワイ、ライト:ワイトの仲間デス
ダメじゃん寿司ズ:ダメじゃん、攻略情報やっぱり入ってこないじゃん!
ฅにゃん皇帝ฅ:素材取れないやつ……
どうやらにゃん皇帝さんは、今からやることがわかったようだ。シュトロン・プッペは自爆特攻型のアンデッドである。自爆特攻するくせに、肉体がなくなると死亡するのだ。
こいつらは、エネミーのくせに二倍の法則が発動する事を狙っている。そんな犠牲ありきの攻撃は強力無比だ。俺が触れると、8フレームで焼け死ぬ。
ただし勝手に死んでくれるため、逃げ切れれば勝手に魂片をくれるお得な相手だ。普通は敏捷値がこの時点で15を超えるプレイヤーにオススメのエネミーである。
「じゃあ、素材は取れないけど、魂片は稼げる方法を教えてあげちゃうよ! これをやる方法は筋力より敏捷が高いこと。実は筋力10の条件を達成してなくても、できちゃう方法!」
そう言いながら、俺はとにかくその場で音を出した。近くにある木の枝の位置を確認しながら。
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