第40話・暗黒の始まり
「うーん、とりあえず差し迫った状態じゃないかなぁ。金属系ゴーレムの発生は遠そう……」
となれば、今すぐに報告する必要もない。後で冒険者ギルドにカルシュタインを売りつける時にでも報告しよう。
ただ、レベルアップ後クリアカルシュタイン・ゲレムと出会えれば非常にラッキーだ。
†アリス†:クロくんなんでも知ってるなぁw
「いや、なんでもは……多分?」
この世界で俺が知らないことがあるかどうかが不安になってきた。
「あ、居た……」
声を落として言う。目線の先には、カルシュタイン・ゲレムがいたのである。
色は黄色で、狙っていた個体だ。
ゴーレム狩りも、この世界では鉱物生産の一手段であり、またゴーレムによって現実世界ではありえない合金が生まれることもある。鉱物生態系はわりと偉大なのだ。
†アリス†:割と小さい?
「平均的な個体ですよ。さ、では行きます!」
ゴーレムは視覚の他に魔力感知と振動感知をしている。俺の魔力は1、この程度の魔力はどんな生物でも持っている。ゴーレムの知覚範囲外だ。
カルサイトの目は霞んでしかものを見れない、だから地面を揺らさないように近づいて、肩の関節にダガーを突き込んだ。
「こうなったら
カルシュタイン・ゲレムの肩から腕が地面に落ちる。すると、腕が落ちた肩が少し跳ね上がるのだ。
それを利用して跳躍、再び俺は身を隠した。
「結構腕も重いですからね……飛距離を稼ぐのに十分な力で跳ね上がってくれます……。最初に落とすのは左腕がおすすめです。ゴーレムは左、右と腕を使って攻撃するので、これでだいぶ戦いやすくなります……」
声は落としての解説だ。できるだけ、位置を悟らせないように。
ゴーレム系と呼んでいるが地域によって呼び方が違う。アイン・ブルクを含む地域はゲレムと呼ぶのだ。
†アリス†:クロくんマジアサシン!
基本的に俺のビルドはアサシン向けのダメージ倍率を大きく受ける。だから、戦い方にもアサシンっぽいクセがついている。
「では次は右腕を……」
またしても飛びついて、右肩を落とした。
「ここまで来たら、黄色いカルシュタイン・ゲレムはざこです! 人語を理解しないですが煽りたい方はこの時に。ざぁこ! 手も足もでなくなっちゃったね、カワイソ! ほら、コアはがされちゃうよ! など声をかけてもいいでしょう!」
実は昨日メスガキ構文なるものを見たのである。だからちょっと真似をしてみた。
視聴者さんが喜んでくれるかな……なんて。
†アリス†:カルシュタイン・ゲレムそこ代われ!
それはちゃんと功を奏してくれそうだ。よし、午後の放送でもやろう。
「あ、ゴーレムコアは基本的には必ず回収してください! 冒険者ギルドが変異待ちしている時がありますので、その時だけは放置してくださいね! でもまぁ、これはタダ同然です……。でも体が大きいゴーレム系のコアは高く売れますよ!」
体の大きいゴーレムコアはうまくいくと、ゴーレムを再生成してテイム飼い慣らせる可能性があるのだ。その場合、体が大きいだけで肉体労働者になってくれる。
†アリス†:ほへー、いろいろありますなぁ!
「あ、体の大きいゴーレムのコアを高く売りたいなら〆ないでくださいね! その場合魂片が手に入りませんが……」
コアは〆ないと死なないのである。
だが、小さいゴーレムのコアは利用価値が低いためどんどん〆るべきだ。
†アリス†:はーい!
「さぁ、どんどん狩ってレベルを上げますよ! 指数関数で辛いのは低レベル時だけです! レベルさえ上がってしまえば、最強のビルドです!」
ステータスでダメージを通さないと倒せない相手は……一応ドリルさんとの共闘でなんとかなる。
というか、ドリルさんは将来的にパーティーに来てくれれば、戦力的にもすごく助かるのだ。ファーマメイジの最終到達点は、高火力を出力するウィークポイントメイカーだ。
ウィークポイントがあると、アサシン系のダメージ補正もさらに上がる。
性格的には、多分パーティーのみんなは受け入れてくれると思うのだが、プレイスタイルの見極めが必要だと思う。ガチ勢たるもの、押し付けることなかれだ。
†アリス†:ちなみにさ、魔力系魔法で相手するとカルシュタイン・ゲレムはどう?
「地獄です!」
魔力系魔法は四大元素魔法とは違い、相手の魂に直接攻撃をぶつける魔法だ。
利点は、ダメージを軽減する方法が存在せず、しかも回復系の効果を減退させるデバフをつけられることである。
ただし、ゴーレム系には相性が最悪である。
†アリス†:残念……
アリスさんはどうやら魔力系魔法使いだったようだ。
「代わりに、スライム系統の天敵ですよ!」
スライムはこの世界のヤベーやつの一角である。HPが低い代わり、火属性と魔力魔法以外でダメージを与えることができない。
さらに、水分量が多いため火属性の効果もかなり軽減されるうえ、なんでも食べて回復する。
魔力系魔法使いの独壇場である。
†アリス†:やった! あ、そうだ! 魔力系のビルドも教えてくれたりは……
「じゃあ、一緒に狩りするときに!」
と言っても、最強を出すのは最難関のビルドだと思っている。
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