静けさ

田舎の真っ暗な夜。幼い私の目は黒しかとらえることができない。

耳に入るのは心の音だけ。

心臓が鼓動し、不安を頭脳に伝えてくる。

周囲と隔離されたかのような錯覚。

目を開けていても、閉じていても何かが変わるわけじゃない。

ただ、ひたすらに願った。


「早く夜が終わってほしい」


_______________


数十年が経ち、私は都会に引っ越して社会人となった。

仕事と休日の双方で、私の目と耳は疲れ切っていた。

下を向きスマホをいじる人々、流行り物に夢中になる人々、商店から流れるコマーシャルソング、パシャパシャと鳴るシャッター音……。


心の疲れを抱えたまま、自宅に戻りスマホをいじる。

そして、自分の変化に気づいた。


「田舎暮らしは退屈だと思っていたのに、今じゃ都会暮らしを窮屈に感じてる。ひっそりとした田舎に戻りたいなあ。静かな場所がとても恋しいよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る