第7話 煌恋院スミレの価値観
わたくし煌恋院スミレと申します。
今日、一筆したためたのは他でもない。
今の私の主。古宇森圭についてです。
古宇森圭は人間関係に五月蠅いです。
ええ、それはとても。
わたくしとの関係性について聞いた時も長話を聞かされました。
一言一句覚えています。
わたくしはそういう生き物ですので。
ではお聞かせします。
頼まれなくても。
「君との関係? 人質と誘拐犯じゃないのか。親の了承を得てるから犯がつくのかは怪しいから保護者と言い換えてもいいが、それがどうかしたか? ああ、そうか、またおやつ代わりに情報を食わせろとか言う話だろう。全く君のせいでボクはやたら長話だけが得意になっていく、いいか? 上手くなってるんじゃない、得意に、特異になってるんだ。これは悪癖だよ、全く、それでなんだっけ、君との関係性? 君はボクに片思いでも抱いているのか? 違うだろう。そしてボクもまた君を命の担保以上に見てはいない。君はボクの重りだ。いや浮きかな。海で溺れないためのライフジャケット、それが君だ。ボクはそれ以上の価値を君に見出した事も無いし、それ以下と見限った事も無い。ああ、そうだな、殺しの才能なら君のが上手だろう、ボクは中の下だからね、君は化け物だ。ボクは手錠を嵌めていない君が怖くて仕方がない。間一髪生き残った自分は奇跡だと今でも思う。あの業火の中で高笑いする君はまさしく殺人鬼だったよ。そういう意味では君はボクにとって畏怖の対象でもあるな。尊敬と恐怖で以て相対する存在。そう書くと神様みたいだけど、まああながち間違いでもないかもしれない。君を崇める事は無いけれど、祟り神の如く、荒魂の如く、鎮める事だろうさ、ここまで聞いて君とボクの関係性はひどく込み入っていて複雑なものに思えるけれど、やっぱり単純な計算式に直す事が出来る。つまりは『ボクの命=君自身』だ。それで満足かな。結論を確定させるにが嫌いなボクでもこればかりは否定できないな。なにせ自分の命が懸かっている。否定も肯定も、誠実で無ければならない。おっと普段の受け答えが誠実じゃないとは言わせないぜ。これでもボクは馬鹿正直に話しているのさ、賢いフリをしたつもりなんて無いんだぜ。だけどまあ、人に本心を明かした事もまた無いかもな。隠してるわけじゃなくて、ボクに本心というものが無いのさ。移ろいゆくものは嫌いだけれど、ボク自信が移ろわないとは一言も言ってないからね。ボクの確固たる価値観は、その瞬間瞬間に切り替わるものだから。つまり……む、だいぶ話が横道にそれたな。結論に戻ろう。ボクの命の保証書、それが君、連帯保証人がボク。それで満足かな」
わたくしは溜め息を吐くと。
「長いですわ、私はチヨコレイトを所望します」
「はいはい我が儘お嬢様」
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