わたあめな子

CHOPI

わたあめな子

 ふわふわ、まるでわたあめみたいな女の子。

 優しくて、甘くて、ふわふわ、ほわほわ。


 甘く痺れて、一度ハマると抜け出せない。


 そんな甘美なキミに、首ったけ。


 ******


 いつもニコニコしている彼女の目元は、優しい半月を描いていて。彼女の優しいソプラノ音の声は、甘く柔らかな笑い声を奏でて。その音がふわりと空気に溶け込んでいくだけで、一気に感染したみたいに周りの空気もふんわり優しいパステルカラーに染まっていく。不思議なことに、彼女は香りまでとても甘い。それは優しい甘さ、では無くて。少し作りこまれた、海外の甘ったるいお菓子みたいな香りがする。でも独特な強さのそれが、少しずつ、思考回路を鈍らせるんだ。


 そんな彼女自身のまとう空気も勿論だけど、持ち物などの彼女を表す記号もすべてぬかりない。持ち物は基本パステルカラーが中心で、柄は可愛らしいユニコーンやくま、ウサギが多い。僕みたいな疎いやつでもすごくわかりやすい、たくさんの『カワイイ』に包まれている。


「おはよ~」

「……!お、おはよう!」

 わかりやすくクラスでも1、2位を争う男子人気を誇る、とってもかわいいふわふわな彼女。彼女の人気の高い理由、それはかわいいのはもちろんだけど、僕みたいな目立たない野郎にも分け隔てなく声をかけてくれるから。あまり同性ウケは良くないみたいだけど(っていうのも、体育の時、男女に分かれている時にいつも女子の方を何となく見てみると、大概一人でポツンと彼女はいるんだ)、彼女にはあまり関係ないことかもしれない。だって彼女の周りには常に、誰かしらが付いているから。


 彼女は不思議な中毒性がある。その甘さは、加減を知らないお砂糖の暴力のようで、僕にはとても甘すぎるのに。甘すぎて持て余してしまうのに。それでも彼女を気にしてしまう自分が居る。そんな気持ちを抱いているのは、僕だけじゃない訳だ。誰にでも優しくて、誰にでも甘い。だけどその“誰にでも”が“もしかして自分だけに”って言う錯覚を常に起こさせる彼女から、どうしたって抜け出せるわけがない。


 僕らは懲りずに今日も、わたあめみたいな彼女に、甘い甘い暴力を受ける。


 ******


 ふわふわ、まるでわたあめみたいな女の子。

 優しくて、甘くて、ふわふわ、ほわほわ。


 ……少なくとも、私はそんな子じゃないよ。

 でもね、作られた真綿でみんな喜んでくれるから。


 ゆっくりゆっくり、締めていくの。

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