第2話 ツンデレ? 僕の彼女の向日葵ちゃん

 こんなVtuberオタクの俺にだって彼女の一人や二人……。いや、二人はいないか。しっかりと彼女が一人だけいる。しっかりと現在進行形だし、未だに俺なんかに彼女がいる理由は理解できないが、今日はそんな彼女とのデートである。

 水族館や遊園地、はたまたおしゃれな公園に連れて行って手をつないだりご飯食べたりするのがデートなのだろう。だが俺にそんな勇気はない。今日も地元の図書館デートなのである。そんなところにデートなどオタクのおまえには似合わないと思っているかもしれないが彼女との出会いは図書室。ある意味、出会いの場所をデートコースとして選ぶ辺りイケていると自負している。

 彼氏として当然ではあるが待ち合わせには30分前に着いている。俺の友達の恋愛マスターに聞いたのだ。間違いがない。今日のファッションは下手に格好を決めるのではなく、無難にまとめるのがオレ流。図書館集合では味気ないとのアドバイスから最寄り駅で待ち合わせ。駅前の時計に集合である。

 少し時計に寄りかかりながら彼女を待っていると駅の改札から少し小柄の彼女が走ってくる。少し前髪が長く、眼鏡をしているのが彼女。すぐに彼女を見つけ大きく手を振る。


「お――い! こっちこっち! 」


 特段混んでいる訳でもないし、ほかにそれらしい待ちがいるわけでもない。だが、やってみたい。それだけ。

 俺の素振りを見て恥ずかしそうにしつつ、俺の元へとかけてくる。


「森君、そういうのは……」


 もちろんここでの選択肢は1つ。


「いや、全然。俺も今来たところだから」


 くううううううう! 出来る男のセリフだとデート必勝法という本で読んだのだ。彼女は照れている。きっと。


「格好つけてるの? 最初の手を振るのといい恥ずかしいからやめてほしいんだけれど」


 いつもこうなのだ。しかし! 彼女は恥ずかしいのからこそ素直になれないのだろう。なので俺は懲りずにこの態度をいつも続けている。


「で、図書館に行くんでしょ? 先週も行った気がするのだけれども」

「まあいいじゃないか。俺たちが出会った空間でもあるわけだし……」

「先週もそれを言ったよね。他にないの?、そのセリフ以外にさ」


 飽きられているように見える? おまえら本当に付き合っているのかって? 違うのだよ。きっと彼女は照れているだけなのである。そう、きっと。


「じゃあ近くにある動物園にでも行くか?」

「……。」

「どうしたんだよ。動物園じゃ不満なのか?」

「はー……。本当に分かってない! そうじゃないの! でも、動物園でいい!」


 彼女は俺にも分かるくらいの大きなため息をつく。

 なんだよ、ため息をつくからダメかと思うだろ。動物園でいいなら素直に喜んでくれればいいのに。出鼻をくじかれてしまった気もする。彼女の考えが全く分からず、立ちすくまって考えていると。


「ねえ、行かないの? おいていくよ」


 彼女のことで考えていると今度は急かしてくる。機嫌が良さそうな雰囲気をしつつも、語気には強さを感じた。女性というのは本当に分からない。

 しかしだ。ここで心が折れていたらいい彼氏が務まるはずはない。駅から動物園までの道のりはしっかりと車道側を歩くことを心がけ、危険そうな箇所には率先して前を歩く。これが出来る彼氏の鉄則という物である。と、本に書いてあった。

 

 そして、今回のデートには1つだけミッションがある。それは手をつなぐことである。え、それだけ? キス、接吻くらいはしろよだって? 俺だってここまで何もしないとは思わなかった。付き合って半年ほどにもなるカップルという物は自然と手をつないでキスをなんだかんだでする……。いや、出来るものなのだと信じ込んでいたのである。しかしだ! ここまで彼女の身体に触れたのは本を渡す時くらいだ。付き合いたての頃は何度かチャンスがあったとは思うのだが、そのチャンスをつかみきれずにここまで来てしまった。今日も黙って図書館デートのつもりだったので今日も望みが薄いかと思っていた。だが、動物園に戦場が変わるのなら話は違う。園内の動物を見つつ、ひたすら歩くのだ。黙って二人で本を読んでこれが良かったあれも良かったではなかったであろうチャンスが増える。ので今日こそ手をつなぐ。元々望みは薄かったものがチャンスに変わった。自称恋愛マスターの親友とのミッションを達成させられる!


「あのさ、私、待ってるのになにをガッツポーズしてるの? 行かないの?」

「行きますよ!」

「じゃあ早く来てよ」


 多分、大丈夫だと思われます。はい。

 



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俺の彼女は人見知りのツンデレだが、俺の推しVtuberらしい 山川ぼっか @ke0122

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