俺の彼女は人見知りのツンデレだが、俺の推しVtuberらしい

山川ぼっか

第1話 俺の推しVTuber 葵ちゃん!

 今日もこの時間が始まる。俺にとって大切な時間。毎日22時。いや、俺たちは5分前から配信画面で待機をする。コメントを見ていると他の仲間たちも続々と集まってくる。時間が近づくたびに楽しさで鼓動が早くなっている自分を感じる。


 22時……。待機画面が切り替わる。それと同時にコメントのながれる勢いが一層早くなる。




 :始まった!!!


 :日も楽しみにしてたよー!!


 :雑談枠いつも助かる!


 :あおちゃん今日もありがとう!!




 決して本人が出てきたわけではない。しかし、彼女の登場を今か、今かと待っていた俺たちは配信時間になっただけでうれしい。早くなったコメントには投げ銭も流れている。高校生の俺にはそこまでの財力がないので、容易にはできない。彼らを羨ましがっていると。




「こんあお~! ハチさんのみんな……。待ったかな……?」




 そう言うと画面の前の彼女は首をかしげる。黒髪のロングで頭には葵の花をつけている。今日もひらひらしている水色のワンピースがかわいい。ハチさんとは彼女のファンネームのことを言う。そう、この配信を見ている時は俺もハチさんだ。




 :こんあお~!!!




 彼女の挨拶に合わせて「こんあお」というここでの挨拶コメントが大量に流れる。




 :今日も可愛いよー!!


 :あおちゃんのためならずっと待てるよ!




 彼女……いや、あおちゃんの挨拶にコメントの勢いがいっそう早くなる。俺もしっかりとコメントを送る。大量にコメントが流れれば読んでもらえるわけではないと分かってはいる。しかし、挨拶に返事をするのはマナーというものだし、読んでくれている。俺はそう思って送っている。




「みんなありがとねー!! 今日は雑談枠ということでみんなから募集した……えーっとなんだっけ。マシュマロじゃなくてマロンじゃなくて……なんだっけ……」




 :マカロンだよ!!


 :マカロン!!


 :ぱっとでてこないあおちゃんもかあいいよおおお!!!




「そうだ! マカロン! ハチさんたちありがと~!!」




 :うっかり忘れちゃうあおちゃんもかわいいよ!!




「えーっと……何しようとしてたんだっけ……。そうだ! ハチさんたちからもらったマカロンを読んでいきます~!!」




 彼女のスタイルは基本が配信である。開始時間は決まって22時である。日中は花の精霊として精進するための修行をしているので配信時間は夜になってしまうらしい。雑談配信やゲーム実況、ごくまれに歌枠配信もしてくれる。性格はほんわかでおっちょこちょい。ちょっとでも違うことに興味がいくとやろうとしていたことを忘れてしまうところもあるがそこもかわいい。そんな彼女だが、今日はマカロンというSNSを使った質問の返信をするという雑談枠の配信である。




 @こんあおー! 今日もかわいいって分かってます。大好きです! これからもがんばってください!




「わわっ! 最初から告白なんて大胆だよお。でも、私もハチさんのみんなのこと大好きだよ!」




 :ああ、もう死ねる。ありがとう


 :大好き…神か、、、


 :精霊なんだよなぁ、、、でも神


 :これは切り抜き待機wwww




「もうみんなそんなに喜ばないでよっ! もしかして、私が大好きって言うだけの配信が必要なの?!」




 :真面目にやりそうで怖いwwwwww


 :どんな配信でもあおちゃんの配信なら俺は最後まで見る


 :需要しかないww


 :ぜひお願いします!!


 


「みんながそんなに言うなら本当にしちゃうからね? 本気にさせないでよね!」




 :ツンデレですね。ありがとうございます


 :ツンデレ助かる






 本当にコメントが流れるのも早いし彼女のトークもつられてか調子が良くなる。俺はこのあおちゃんと視聴者が一体になって勧めていく感覚がこの配信で一番好き。もちろんあおちゃん自身が好きということは大前提ではあるが。


 彼女のマカロン返信はまだまだ続く。




「みんながからかうから次のマカロン行く!」




 @あおちゃん本当に大好き! 結婚して! 




「……!」




 :話題をそらすと言いながら自爆をしていくwwww


 :悶てるあおちゃん!!  よき!!


 :これは決まったな




「そんなに私とがいいの? でも私は精霊としての修行中だからもう少し待っててねっ」




 :いつまでも待つから!!


 :これはあおちゃんと結婚できるということか!!!




 あおちゃんと結婚とかしてえええ! 確かに俺にだって、いや。俺なんかでも彼女はいる。でも、無口だし冷たいのよね。そう! アオちゃんみたいにもう少し気さくな感じだといいんだけどな。なんで俺、あいつに告白したんだっけ。ってかライン(DM)の返信が22時前にあってすぐに返したのになんで返事こないんかな。別に寂しいとかそういうわけではないんだけどさ。


 ダメダメ。この配信を見ているときくらいは彼女のことを忘れて楽しまないと! 気持ちを切り替え配信を見ると話題が変わっていた。




 @こんあおです。私には彼氏がいるのですが最近、わたしのことよりもあおちゃんの話ばっかりです。どうすればいいですか。




「あああああ、なんかすごい悪いことをしちゃってる気がする……。君のためにお休みしたほうがいいのかな……。」




 :あおちゃんが配信しないと生きがいがなくなっちゃうよー


 :え、まじ?


 :それはこまるんだが




「そうだよね、配信しないと今度はみんなが悲しいよね……。私どうすればいいの?!」




 :全力で悩むあおちゃん……やっぱり俺の推しだあああああああ!!


 :これをわざわざ拾ってまで悩んでるんか……。神か。


 俺もたまにあおちゃんの話だけを延々としてやろうかな。。。




「どうしよう……。そうなんだよ、最初はみんなと考えたいなって選んだんだけどそうだよね。みんなは悲しいもんね」




 :さっきの質問者です、、彼氏と一緒に見ているし、私の推しでもあるのでお休みはしないでください!!


 :投稿者きたwwwwww


 :まさかのあおちゃん推しカップルwww




「本当に?! それならもっと私のはなしして仲良くなって!! でも、ちゃんと彼女のことはかわいがって褒めるんだぞ? 彼氏くん!」




 :やっぱりあおちゃんの彼女になりたいいいい


 :あおちゃん天使!!!


 :質問者の彼氏です。もっと可愛がります! ので抜けますね!




「あああああああダメダメダメ!! 配信終わってからにして! 私の配信を最後まで楽しんでその後に彼女とここ良かったねーとかやってさり気なくでも君のほうが可愛いよとかね!……。」




 :自分で言っておいて悶てるwww


 :これでこそあおちゃん!!




 このあともあおちゃんはマカロンに答えるたびに照れたり、悶たりの繰り返しを続けていくのであった。

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