ぐちゃぐちゃ

遊多

ぐちゃぐちゃ

 ある夏休みのことでした。

 たまたま学校で友人のマーくん、メグちゃんと肝試しをする話が出て、夜、お化けが出るとウワサの古屋敷へ忍び込むことになりました。

 クスノキの生えた屋敷に入ると、二度と人には戻れない。お父さんも、お母さんも、口を酸っぱくして入るなと言い聞かせていました。

 しょうじき、ぼくは怖いものが苦手です。そのため、屋敷の前に来たところで、あしがガクガクと震えてしまいました。


「おい、もうビビったのかよ。まだ屋敷にすら入ってねえぞ」


「いい加減にしてよ、山に入ってからそれじゃん」


「ら、らっれぇ……」


 ぼくは呂律ろれつが回りませんでした。

 くるしい、かえりたい、たすけて……そんな感情だけが頭に浮かんでいました。


「わーったよ。なら、レンはそこで待ってろ」


「レンのビビり、メグより意気地なし!」


 そう言って、二人はぼくに振り返りもせず置いていってしまいました。

 れいの屋敷に入った二人は、ずんずんと廊下を、そして階段を行きます。月明かりしか頼りがなく、脚を進めるたび、木造の家屋なのに湿り冷えた空気が肌を舐めます。

 が、強がっていられるのも、ここまででした。

 しんじられないほどの臭いがハナを抜け、二人の背に寒いものを走らせました。


「お、おい。他にも、だれかいるのかよ」


「いやな事言わないでよ。ここ、空き家って……ヒィ!?」


「ど、どうなってんだよ、あれ!?」


「ん、ぅぶえぇ……」


 マーくん達は見てしまいました。

 イキモノと呼んでよいかもわからない、赤と肌色の混ざった肉塊……ぐちゃぐちゃ、を。


「よ……寄るなぁ!!」


 めが、うでが、あしが、たくさんうごめいています。

 ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃと。


 ウワァァと泣き叫びながら、マーくんはひたすらに逃げました。

 ちなみに、なぜぼくが友達の動きをわかったかというと。


「オマエ、も、そう、か」


「レイも、オレも、みんなと、最初からぐちゃぐちゃに」

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ぐちゃぐちゃ 遊多 @seal_yuta

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