ドラゴンと畑
「美味かったか~?オーガ」
「ん!」
俺は半分しか食べていないのだが。美味しいのなら良かったけれど。
「じゃあ、ご飯も食べたし、どうする? 城の案内でもするか?」
「案内、というと?」
「リリス坊は今後多分ここで生活することになるだろう? 案内したら2日はかかるが、知っておくに越したことはないからな!」
ちょっと待てちょっと待て。いま2日って言ったよな? 城の中を見るだけで2日もかかるのか? ちょっとかかりすぎなんじゃ........
「なあ、この城って、一体........」
「えーと、確か........そう、地上6階建てで、地下に3階あるぜ~」
「いっぱい!」
あ、うん、そうだな。一杯だな。
「規模が違いすぎる..........」
俺が思っていた感じよりかなり大きいぞこのお城。
「まあ、ほとんど使ってないんだがな!」
勿体ない。というか、一人でこれは使えないか。
「つかう、3かい!」
3階だけしか使っていないと。じゃあ、案内してほしいと言ったら、またシャトーが手抜き掃除をするのか?だが、長く暮らしているオーガが使わないんだったら、俺も行く機会は無いだろう。
「いや。必要なときに案内してもらえればいい」
「そうか~それは残念だ」
掃除する手間が省けて喜ぶかと思ったが、意外な反応だな。
「よかった~。掃除する手間省けた~」
聞こえてるぞ聞こえてるぞ。小声で言っても聞こえてるぞ。
「じゃあ、何をするんだ?リリス坊。オーガと一緒にごろごろするか? それとも..........」
「そと、あそぶ? なか、あそぶ? 」
遊ぶか、だらけるか?どっちもいいかもしれないが、俺はさっきから一つやりたい事ができたんだ。
「そうだな、俺は..........畑が作りたいんだが、いいだろうか」
「畑?」
「はたけ?」
オーガがきょとんとした。俺がやりたいのは畑仕事、と言うより、自給自足だ。
「ああ。確かにオーガが魔術を使って出せば食事には困らないが、それに慣れきってしまうと万が一魔術が使えなくなったときに食べられるのもが何もないだろう?..........俺が」
但しこれは俺だけの話だ。オーガは食べなくても大丈夫。シャトーは論
外。ないとは思うが、備えあれば患いなしというし、最低限のものは作れるようにしておきたかった。
「なるほど、畑か」
「大規模なものでなくていいんだ。その......家庭菜園ぐらいで」
「ちいさいはたけ?」
そうそう。この城の城壁(って言ってもただの石)から入り口までに十分なスペースがあるから、草を取って耕せば多少の物なら作れると思うんだが。勿論、種は無いからその辺の薬草になるが。
「いいんじゃないか? 何事も備えることは大切だしな」
「はたけつくる!」
「手伝ってくれるのか?」
「勿論だぜ~。楽しそうだし」
「りりす、てつだう!」
手伝ってくれるのはありがたいが..........
「あの..........」
「よーし! ちょっと待っててくれよ。使えそうな道具を取ってくるからな!」
シャトーの声が消えた。いや、大丈夫なのか?城の外なんだが......
「りりす、じゅんび!」
オーガはワクワクしてるな、尻尾が。
「いりぐち、いく!」
オーガに手を取られ、俺とオーガはシャトーより一足先にエントランスへと向かった。
「はたけ、どこつくる?」
エントランスの階段でシャトーを待つ(?)間、オーガが目を輝かせながら聞いた。具体的にどうこう決めているわけではないんだが.......
「そうだな.......日当たりがいいところと栄養がありそうなところ、だな。」
「たいよう、あたる?」
「ああ。南向きがいいと思うぞ。」
「みなみ?」
「そうだ。」
「みなみ..........」
オーガがうーん、と考えていると、遠くの方から声がした。
「オーガ、リリス坊ー!待たせたなー!」
階段の降りたところの..........そこの扉の中からか。開けれるのか?それとも、魔法で開けるのか?
「悪いけど開けてくれないかー?」
開けれないのかい。声を聴いたオーガがトコトコと扉まで歩き、ガチャリと扉を開けた。
「おっとお..........」
園芸用の一輪車を起用に傾けて
「それ、どこから..........」
「ちょーっと倉庫で探してきたぜ!ま、足りなかったら
まあ、それでいいんじゃないか?
「シャトー、みなみ、どこ?」
「ん?南?」
「りりす、みなみ、はたけつくる。」
オーガが早速質問した。
「南か.....そうだなあ......あ、いい場所があるぜ!」
「あるのか?」
「ああ、案内するぜ~」
「はたけ、いく!」
シャトーって、物に意識があればどこでも行けるんだな。ベテランのお城ってそんなものなのだろうか。
いや、そんなはずはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます