見た目と罪
「は.........?」
何を言い出すんだこの子は何を言い出すんだこの子は
幻獣の王? このどう見ても子供にしか見えないベッドの上で尻尾を振りながら寝転んでこっち見てるのが?
「すまない、もう一度言ってくれないか?」
「オーガ、げんじゅうの、おう!」
耳がおかしい訳ではないようだ。受け入れたくないけれども。
「噓じゃあ......」
「ないぜ~。オレが保証しよう。」
お城のお墨付きまでもらってしまった。これが、現実か。
「オーガは幻獣族の生き残りなんだ。ここにはオーガと俺しかいないぜ。」
城は生命体扱いしてもよいのだろうか。今の話が本当ならば、オーガはこの広大な城に一人(と城)で過ごしていたのか?
「オーガは今いくつなんだ。」
ベッドの上のオーガはいちにい......と指を折り始めたが、途中であきらめた。
「ん......ん?」
「そーかそーか、覚えてないか。」
覚えてないって、ずっと一人だったからか? それとも......
「オーガが覚えてないようだからな。オレが答えよう。」
シャトーがゴホン、と咳払いをした。このお城、感情もあるのか。
「オーガは少なくとも二千年は生きてるぜ。詳しいのは......えーと......忘れちまった!」
にせん、ねん........俺のいた国はあったのだろうか。多分無いだろう。
「随分長生き、だな。」
「幻獣はこれくらい普通だぜ~」
「もっといきてるげんじゅう、いた!」
どうやら寿命の概念が違うみたいだ。
「じゃあ、なぜそのような子供の姿を?」
「にんげん、いっぱいくる!」
「じじいより可愛い子供だろ。」
なるほどよく理解していらっしゃる。
「ま、大抵塵になって消えてったけどな~」
待て、今さらっとやばいこと言ったぞこのお城。オーガは今まで何人の人間を葬ってきたんだ?
「わざとやったわけじゃないぜ~。力加減がわからなかったんだよな?」
シャトーの言葉にオーガはこくんと首を振った。
「オーガ、あそぶ、にんげん、きえる......」
ぴょこぴょことふられていた尻尾がぺたんと下に下がった。
「遊ぶ」だけで人間が葬り去れるのか......?
「オーガが本気出せばその辺の国の一つや二つ、簡単に消えちまうぜ~」
俺の立っているすぐそばの鏡から小さなささやきが聞こえた。この城......声の出力調整までできるのか。
「ま、敵意があるわけじゃないんだ。オーガも遊び盛りだからな。誰かと遊びたいんだ。こんな城に一人じゃ寂しいからな。」
「あそぶ!」
敵意がないなら安心した。どうやら葬られる心配はなさそうだ。
そういえば、いつか聞いたことがある。国の向こうの深い森にドラゴンがいる、と。確か、かなり高額な薬やら装飾品の素材になるし、いつこちらに向かってくるか分からないからと、討伐に向かう
もっとも、
「シャトー、りりす、いえ、ない!りりす、ここすむ!あそぶ!」
「ん?リリス坊は家がないのか?......さてはリリス坊、追放されたな?!」
なんでそうなるんだ。旅人とか、素材取りに来たとはならないんだな。
「そう、だが。」
まあ実際そうなのだが。
「そーかそーか、追放者か~..................追放者!?」
「ついほーしゃ?」
自分で言って何驚いているんだ。見も知らない怪我人を助ける追放者が珍しいのか? それとも適当に言ったのか?
「いや~適当に言ったんだがな~。オレもまだまだ現役だな!」
築推定二千年のどこが現役だ。
「で、何をしたんだ? 殺しか? 強盗か? 殺人か?」
おい自称現役。今同じこと言ったぞ。
「ついほーしゃ?」
こっちはまだ意味が分かってないぞ。
「いや、まあ.........濡れ衣を、着せられてな。」
「ほー!冤罪か。一体何をやったことにされたんだ?」
「りりす、ついほーしゃ?」
シャトー、頼むからオーガに説明してやってくれ。というか、正直に言うべきなのか?初対面のお城に「同僚に恨まれて毒殺計画を立てていることにされました」って言うのか?しかも今までの発言と軽さを考えると、多分笑われるぞ。
「いやー、冤罪で追放されるってことはかなりの事をやらかしたことになってるんだなあ、リリス坊は。」
間違いではないのが悔しいな。
「りりす、えんざい? ついほーしゃ?」
多分、ここではしばらく世話になると思うから、先に言っておくか。
「王家の人間の毒殺計画、かな。」
「アッハハハハハハハハハハ! ハハ、ハハハハッ!」
ほら、笑われた。
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