探偵 角田剛夢の事件簿 ③
かがわ けん
依頼者の家の前へ到着する。電話で聞いた通り公園の真ん前だ。
「……ちゃ、……ちゃ」
音の方へと視線を送る。そこにベンチコートを着た女が立っており、俯き加減でぶつぶつと呟いていた。
関わっても碌なことはない。俺は依頼者の家を訪問した。
*
「いくら金欠とは言え流石にキツイな」
俺は深夜の公園にいる。三月初旬の深夜はゲレンデと変わらない。防寒対策をしても凍えるように寒かった。
依頼は深夜の公園の調査だった。最近公園で小動物が殺される事件が頻出しているらしい。しかも夜中に公園から奇声が上がる日もある。警察も動いているが、深夜に張り付くほどの対応はしてくれない。取り敢えず三日間深夜の公園を調査して欲しいとの内容だった。
*
依頼の三日が過ぎた。結局この三日間は何の異変もなかった。
時間は朝七時。非常識ではあるが、出直すのは億劫だ。俺は依頼者宅へ向かった。
インターホンを押すも反応がない。だが中からテレビの音はしている。灯りもついているし在宅のはずだ。試しにドアノブに手を掛けると鍵は掛かっていない。俺はドアを開けた。
鼻を突く異臭が漂う。生臭く吐き気を催す臭いだ。明らかな異変に俺は躊躇なく中へと進んで行った。
リビングからテレビの音が聞こえる。先ずはここだとドアを開いた。
カウンターキッチンに女が立っている。だが先日会ったこの家の妻ではない。
一心不乱に料理をしており俺には気付いていないようだ。俺は一気にその女と距離を詰めた。
「ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ、ハンバーグ。私の人生ぐっちゃぐちゃ」
女は歌を歌いながら、ボウルの中の肉を手で捏ねている。
彼女のエプロンは血まみれだった。
「おい、お前は誰だ。ここで何をしている」
「ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ、ハンバーグ。逢引きミンチでぐっちゃぐちゃ」
「いい加減にしろ」
「ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃ、ハンバーグ。愛する彼もぐっちゃぐちゃ」
探偵 角田剛夢の事件簿 ③ かがわ けん @kagawaken0804
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