第8話 二人の仲間



死んでから電車に乗るのは二回目だが乗り心地は最高だった。


電車の窓からは、水中にいるような、空にいるような景色が広がっており、こんお世界に来てから、一番の景色だった。


ミロクを捕まえる協力をすることを決めた俺はムトハと共に、黄泉の国行き電車に乗っていた。


ムトハによると、黄泉の国に仲間がいるということなので、まずは着いたら紹介し、そのチームに入ってもらうとのことだった。


もう少し詳しく話を聞きたかったが、彼女は先ほど駅で買ったおにぎりを美味しそうに食べている。


電車の揺れるリズムに身を委ねながら、俺は少し目を閉じて休むことにした。


しかし、その瞬間、隣の席から大きな鼾の音が響き渡った。


「ぐぅーん…ぐがーーー」


思わず目を開けると、隣の席に座る少年が、まるで地鳴りのような鼾を漏らしているのが見えた。彼は無防備にも、口を大きく開けていて、その音はまるで車内の音響装置が壊れたかのように大きく響いていた。


周囲の乗客たちも、その鼾の音に気づいたようで、不快そうな表情を浮かべていた。俺もまた、彼の鼾に苦悩の表情を浮かべながら困惑した。


仕方ない。起こしてみるか。


「あの・・・」


「あれ?!ミルじゃん!!」


声をかけようとしたとき、おにぎりを食べていたはずのムトハが彼に大きな声を上げた。


「っておい!起きろミル」


起きない彼に対して、ムトハは容赦なく、ど突く。


「なんだよ~も~せっかくいい気分だったてのに~」


その少年は眠そうに目を開けた。


「あ。紹介するね。私の部下で君の仲間になる人だよ」


「え」


今までずっとこんな近くにいたんかい?!


「はぁ~地獄でゴーストの後処理してたら突然帰るって言うから~同じ電車に乗れたのは良かったけどムトハが紹介してくれないから、緊張しちゃって声かけれなかったよ~」


「ごめ、おにぎりに夢中で」


「初めまして、僕ミル」


「初めまして、俺ルクト」


「こいつ武器屋って呼ばれてる」


「欲しい武器あったらいつでも言ってくれ!」


「あーありがとう」


「じゃ、僕また寝るから着いたら教えて!」


「え」


そしてまた地鳴りのような鼾が車内中に響き渡っていた。


それからそれほど経たず、黄泉の国に着いた。


「さあ!着いたよ黄泉の国。どうかね久々のシャバの空気は!」


「そこそこ」


駅からでるとそこは、大きな街が広がっていた。


近代的な建築というよりは美しい古い街並みでとても栄えており、特に驚いたのは建物の大きさだった。とにかく高い。100階建ては余裕であるような建物がたくさんある。


そして電車では人しか見なかったが、動物のような顔の人もちらほらいるし、空も飛んでいる人もいる。


まさにあの世でしか見れないような景色だった。


「待ってたよムトハ」


「まひる、お待たせ」


まひると呼ばれた女の子は、髪はロングで年齢は俺と同じくらいの女子高生だと思った。


見ているのに気付いたのかこちらを睨みつけてきた。


「そいつ誰」


「紹介するね。地獄で拾ってきたルクト」


「はぁー地獄?罪人じゃないでしょうね」


「罪人だけど、貴重な事件解決に繋がる人でこれからの仲間だから仲よくね」


「えぇ…」


露骨に嫌そうだった。まだ一言も話していないのにどうやら嫌われてしまったらしい。


ここは自己紹介でそのイメージを壊さなければ、


「初めまして、ルクトです。地獄にいたので、この世界のことはあまり知らないのですが、足引っ張らないように頑張ります」


なんだなんだ、さっきからジッと見ているだけだ。


「私シンヤ。何か問題起こしたり使えなかったら、いつでも地獄送りにしてあげるから」


シンヤ?


「え、さっき、まひるって」


「下の名前で呼ぶな」


「あ、はい」


気にしない気にしない。女子としゃべるのだって生きていたころでもなかなか無かったわけだし。


「ルクト、気にすんな!」


「僕も最初なんな感じで素っ気ない態度とられてたからさ」


「あんたも今でも変わらないわ」


「あ、はい」


かわいそう・・・


「さてさて、自己紹介も済んだようだし、これから三人には協会からの仕事に行ってもらいます」


このチームで上手くいくのか不安ではあるが、ミロクを捕まえるため、そして会いたい人を探すため、俺はなんだってやってやる。






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