世の中のオスよ!これで学べ!

羽弦トリス

世の中のオスよ!これで学べ!

僕は文房具を取り扱う会社の社員の雨宮だ。

僕は今、ある女性に心を奪われ今、仕事どころではない。

今年、新卒で入社してきたジュリちゃんに恋をしている。

顔は、芸能人で言えば……そうだ、『もたいまさこ』に激似で可愛らしい。

先週の金曜日に、お互い温泉巡りが趣味なので、温泉旅館にお泊まりデートに誘うと喜んで、今日は仕事が終わると温泉旅館に直行なのだ。

定時まで後、5分。

僕のデスクの隣のババアは、帰り支度を始めた。

僕も、ロッカーで制服を脱ぎジャケットを羽織った。まだ、3月上旬。寒い。

温かい温泉で薄汚れた心を洗い清めたい。

今日の為に友人から、BMWを借りている。

デキル男は車からだ。


キーンコーンカーンコーン


終業のチャイムが鳴る。駐車場でタバコを吸いながら、ジュリを待った。

ポケット灰皿に吸い殻を仕舞うと、

「センパーイ」

「おっ、ジュリちゃん。車乗りなよ」

「スッゴーイ」

「何が?」

「車ですよ!WBCですよね?」

「……野球じゃないか」


車は動き出した。

途中、僕は寄り道してから伊勢志摩方面に走り出した。

高速で1時間程走り、下の道を15分走ると目的地の温泉旅館・珍光に到着した。

2人は予約の部屋に、仲居さんから案内されて、

「本日は温泉旅館・珍光にご予約頂き誠にありがとうございます。素敵な奥様ですね。あっ、女優の『木の実ナナ』さんに、そっくりですね?奥様」

ジュリは照れていた。可愛らしい女の子だ。

「辞めてくださいよぅ、仲居さん。これ、チップ」

「お心遣いありがとうございます。お食事は、お風呂の後が宜しゅうございますね?」

「うん。8時でいいよ」

「かしこまりました。それでは、失礼致します」

僕はジュリと2人きりになり、来る途中寄ったケーキ屋さんで買ったケーキの箱を取り出した。

「ジュリちゃん、ケーキ食べようか?お風呂の前は、甘い物食べた方がいいんだよ」

「うわぁ~、ありがとうございます。雨宮さん」

僕はケーキの箱を開いた。

箱の中身は、ショートケーキとモンブランがぐちゃぐちゃに混ざり型が崩れていた。

「あっ、ジュリちゃん、ごめん。ケーキぐちゃぐちゃだ。僕の人生そのもの」

「でも、混ざったら美味しいかも知れませんよ」

ジュリが、『ガッキー』に、似ている気がした。いったい、この娘は誰ににているのだろうか?

僕とジュリちゃんは、付属のスプーンでケーキを食べた。

美味しかった。

「先に、お風呂入りなよ」

「先輩が先で、お願いします」

「じ、じゃあ、混浴は?」

「いいですよ!」

僕はバッグを持って、トイレに向かった。


「『オスの交尾…その32。混浴』先ずは身体の洗いっこ。かぁ~。できるかな?『注意……勃起しないこと』な、なんだって。もう、僕ははち切れんばかりだよ~」

僕は20分ほど、男性誌を読んで部屋に戻ると、

「先輩、お先にお風呂頂きました」

「な、なんだ……そうか?僕も直ぐに汗を流してくる」


混浴風呂には、ジジイかババアしかいなかった。

夕食時間。

僕とジュリはしこたま酒を飲んだ。


『なんだ、今日のお泊まりは……。もう計画がぐちゃぐちゃ。5万円損したわぁ~』


僕は日本酒飲みながら、海を眺めていた。

すると、寝てたはずのジュリが隣に座り、

「ずっと、雨宮さんと海見ていたいなぁ~」

「な、何ですって!」

「この本、読んでたでしょ?」

そこには、「オスの交尾48手」を手にしていた。

トイレの後に、バッグの下に隠していたのだが。

もう、終わりだ。

僕の人生はぐちゃぐちゃ。


「そんな、雨宮さんが好き!」

「えっ?」

「おやすみぃ~」

「お、おやすみ……これって夢?」

僕はしばらく、真っ暗な海を眺めていた。


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世の中のオスよ!これで学べ! 羽弦トリス @September-0919

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