鞏幽くんは独りよがりがすぎる。
ネクラギ。
第1話 牙
−−ーーー
『地震速報!地震速報!震度4!震度4!速やかに自身を守る行為をとってください。』
ーーー−−
危機を感じて眠りが覚めたが不安しかない物騒な文章が耳を通り脳内に浮かぶ。
かなり度の強そうな眼鏡をかけた黒服の女性が
テレビの中で必死に低めの声で語りかけていて中継映像はどれもカメラが揺れている事から非常に危険な状態という事が身にしみて感じた。
( 「そう、身にしみた。」 )
中継映像を観ていると同時に自身も揺れていた
この部屋も一心同体揺れると共に恐怖を知る。
思考を思い巡らせていると1階から部屋のある2階へと階段を分かりやすく音を鳴らし存在感を主張しながら誰かが登ってくる。
母だろう。
父は朝速くから仕事だろうし、母がこんな状況であろうと息子を心配して来てくれたのだろう。
なんと優しき母を持ったことか………。
最近は『親ガチャ』という言葉があるが
『親ガチャ』ミスったと言った奴の親は
『子供ガチャ』をミスっている説まで。
だから母はミスったと子に言わせてそんな説を言われて心を傷つかせないようにしてくれている相互な関係なのかもしれない。
『ガチャ…ダ ド…ガチャーン!!』
ドアが強引に開けられた。
『Good Morning!! 駕或ぃぃぃ〜〜!!』
素直に優しさに喜び感動していたのに
この場違いのせいで反抗期に戻りそうだ。
彼は怒りを露わにする僕を薄目で見ながら
『奥様ったら〜』とでも言っている様な手の動きで先程まで高沸していた感情で気付かなかった
目覚し時計のアラームを止めた。
『がぁくんったら6時に起きれないものねぇ』
彼は続いてターン継続中と言わんばかりに
僕を茶化してくる。
『くうゆう君、ちょっと説明して貰っても?』
クラスメイトである彼に問いを投げかけてみた。
『君さぁ起きるの遅いって怒られるでしょ?』
問いを問いで返された。
『ま、まぁ そのための目覚し時計だしね。』
『でも起きれてなかったんだし意味ないじゃん』
的確なツッコミが鋭い。
『だからどうしたら起きるか相談されたわけ』
『まぁ並大抵では目覚めないよね。』
『それは確かに認める。』
すると彼は人差し指の先をくるっと回して喋る
『結果、地震だったら目覚めるかなぁって』
なんだ、この頭の中が1と100しか無い者は。
『それでテレビで録画流してみた!』
『朝起きてテレビついてるの違和感ないの?』
ドッキリは心臓にとても悪いと実感した。
……………………あれ?
『あの揺れって何?揺れてたよね?確か。』
『それは〜俺がこの家揺らしてた』
『どうやって?』
鞏幽(くうゆう)君は簡単に話す。
『気合で!!』
鞏幽くんはなんか「天のなんちゃら」とか
「なんとかの実」を食べたのかと言う程の力を
持った、いわゆる化け物だ。
『あと編集で緊急速報のアナウンサーを君のお母さんを使ったぁ』
…だからわざとらしい低い声で度の強い眼鏡だったのか、陽気な母らしい。
『よし、学校行くぞ!がぁくん!』
『おん、朝ご飯まだやねんけど。』
奇妙で面倒な毎日がこれからまた始まる。
鞏幽くんは独りよがりがすぎる。 ネクラギ。 @at_neclagi
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