『七朽森の乙女』
五日も
天気の日に雨が降ると狐が嫁に入るというが、曇天が五日続くと妖狐が嫁に入る。妖狐と言って思い出されるのは、つい最近にまさにこの店で見た、
私は装備を
『
数時間後、私は『
手紙には『七朽森まで』と書かれていた。
声を掛けることもなく梯子を上る。両手を自由にしてきて良かったと心底思った。梯子の棒は全部で二十あった。これはいつか思い出すことになるかもしれぬ。そうした
「ごめんください」
私は
私は指示されるまま、切り株に通された。切り株の椅子だった。それに、机がある。椅子は二脚だけあり、他には乙女の寝ている
乙女は元は普通の人間であった。実年齢は百十九歳になるという。老人、老婆も良いところだ。ろくに身体も動かなくなった頃、口減らしに、この『
当時の師匠を私は知らない。が、三十年前というと、二十歳そこそこの時代だろう。どうにも、師匠の人生に転機が訪れた頃、つまり男性器を失った頃だと思われる。「死にたいので刃物を貸していただきたいのですが」と言った老婆に、青年であった新羅戯髑髏は、「死ぬくらいならもう一度やり直すと良いでしょう」と、一振りの短刀を
人は死の
以来老婆は三十年間、この『
私は乙女に見送られ、きっちり二十の梯子を下りた。乙女は「危ないから見送ろう」と私に言った。それが彼女の正義なのだ。思ったことをただ思った通り行動するというのが、彼女に必要なことだったのだろう。「ほら、これだ」と、乙女は黒い塊を指さした。「これが私の百数年の
瞬間的に、
私の右手に、
今まで味わったこともないような絶望が
次の瞬間、
その絶望は消え失せ、
同時に
そして地面にめり込んだ半分の刀身と、腹で折れた
「馬鹿な」乙女は言った。「
店を継いで以降、初めてしっかりとした仕事が出来たことに感動を覚え、私は『
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