『鳥居坂の鬼』
一月に一度やってきては私を
『
話を聞けば狭間からやってきた鬼連中が『
「いてえ」鬼が叫ぶ。「こいつ、ただの人間じゃあねえぞ」他の鬼が言った。数を数えるとちょうど五匹だ。私に注意が向いた隙に、女が逃げていく。それを追おうとするほど計算の出来ない鬼はいなかった。
「こ、この野郎、
大声を出してももう遅かった。私は返す刀と小太刀の
集会所に戻ると小男たちが一斉に私を見た。「それで、鬼たちは」「皆殺しにした」虎皮の衣類を放り投げる。「すぐに報酬をくれ」「はい、ありがとうございました」小男の一人が満面の笑みで言ったかと思うと、近くにいた頭を下半身に埋め込んでいる頭の低い男を叩き付け、「ほら、早く金を持って来い」と怒鳴った。小男たちの中にも、階級というものがあるらしい。情けない話だ。「なあ依頼主よ」「はい何でございましょう月島様」「今の彼はお前の召使いか何かか」「ええ小さい頃からの
金を受け取って、私は坂を上っていく。鬼は決して許せる存在ではない。力任せに男を痛めつけ、女を犯す。酒で酔わせて集団で襲う。女を愛そうとはしない。ただ快楽のための
鬼たちがいた中腹に、もう花が
「最低な男だね。鬼を殺したその日に、鬼を抱こうって言うのかい」
「一度鬼も抱いてみたい」
「最低な台詞だね」鬼は言う。「鬼より
「これも自然の
「そうだね。あんたの言う通り。私も覚悟はしてるさ。自分より強い存在に無理を言われたら、断れる道理はない。私がそうだったんだから」
「なら、抱かれてくれ。
「殺したくせに」鬼は言った。
「殺したはしたし、許せもしないが、私はあの鬼たちが嫌いではなかった」
少なくとも私は、
人生を構成する要素は、言語でも、種族でもなく、心なのだと、青臭い私はいつまで経っても信じようと努めているのかもしれない。
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