『幽除の鐘』
北の地方に『
千雨という女は私と同じようにこの『
「お時間ございますか」千雨の第一声はそれだった。「私は暇をしているよ」それは私が『
千雨は
私は千雨を一日につき五千円で買った。『
千雨は「迷惑は掛けません」と言った。「ですけれど、生ませていただきたいのです」とも言った。私はそれを一人で決められずにいた。役に立ったのは『
『
つまりはそういうことであるようだった。「元は病院でしてね」道理で部屋数が無駄に多く、一面が白いわけだった。「千雨様には傷一つつきません。ただね、ちょっとやって赤子を
私は答えを出せぬまま、また『
私が『
亭主がやってきて、夕飯を運び入れた。焼き魚やら山菜やらの
「亭主」「なんでございましょう」「千雨という女を覚えているか」「それはもう昨日のことのように」「その後のことを聞いても良いか」「
翌日になるまでに時間はそうはかからなかった。朝日が雪を照らしているうちに、私は亭主に聞いた通りの道順で、『
雪がひどくなる前に『
「亭主はどうも、今まで切った縁に苦しめられていたんだなあ」
私が言うと、亭主はふうと息を吐いた。「月島様は何でもお見通しだ」「あの鐘は亭主が作ったのかね」「いえ。ですが私のためにあると言っても間違いじゃありません」「その後、楽になったのかね」「夢見は悪くなくなりましたが、あったかさもなくなりました。だからね、恨まれていても、呪われていても、大事な守護霊さんとは別れちゃいけないと私は思うんですよ」「千の悪霊より、一の守護霊ってことかい」「悪霊なんかの覚悟とね、守護霊の覚悟は違います。一度鳴らしたら終わりなんですよ。まあね、軽い気持ちで鳴らすべきじゃありません。このままじゃ呪い殺されちまうって段になって、初めて鳴らす鐘です」さあ朝食が出来ましたと言って、亭主はまた私の部屋に二人分運んだ。「もしそうなったらまたいらしてください。私は一生ここで宿をやりますから」「もう剪定はしないのかい」「ええ。あんなことはね、するべきじゃないんだってことを、私は知りました。どんな命でも、生まれてこなきゃなりません。私はそれを知るのにね、何百という命を
今回は一晩だけなんだ、と言って、多めに金を払ったが、亭主はそれを受け取らなかった。「以前いただいた余銭がまだまだ残っております」「私はそんなに払ったかな」「ええ」亭主は外まで私を見送り、真っ赤な
「よろずのことだろう」
私が言うと、亭主ははっとした表情になって、観念したように息を吐いた。「それもご存じでしたか」「
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