とある家具職人の楽しい一時

LeeArgent

殺しはないですが猟奇的につきご注意ください

 辺りに散らばる四肢は、一体何人分のものかわからない。


 この白く細い脚は女性のものだったろうか。

 この傷だらけの掌は男性のものだったろうか。

 カエデのように小さい掌は、間違いない、子供のものだろう。


 だって覚えてないんだ。一体何人分の墓を暴いたかなんて。


 今目の前の作業台には、女性の裸体が横たわっている。

 チェーンソーの電源を入れる。エンジンが歌う。そのメロディに合わせて、私はハミングする。

 合いの手を打つように、肋骨がパキッ、パキッと音を立てる。随分と良い音を出すね、君。


 やがて胸も腹も切り開かれて、中から腸が溢れ出た。

 ううん……この臭いにはなかなか慣れない。まあ、叫ばない分、作業は楽だけどね。


 横たわる彼女から内蔵を取り出す。今回の工作には、内蔵はいらない。要るのは尾骶骨と大腿骨だ。


 私は、このを非常に楽しんでいた。誰だって作ることは好きだろう? 私の表現法はこれなんだ。

 

 仲間からは、変わり者だってよく言われる。自分でもそう思う。

 家具作りの材料が、墓から持ち出した死体だなんて。


 彼女の身体から下半身を切り離し、上半身は作業台の足元に置く。

 彼女の顔は綺麗だから、背もたれに彼女の皮を張ろう。今は使わないから、ここにいてね。


 彼女の太腿から肉を剥がし、ある程度骨をむき出しにする。うぅん。でも、大分肉が残ってしまったなぁ。


 そうだ。こういう時のために、漂白剤を用意してるんじゃないか。


 私は、肉がこびりついている骨を抱え、隣の部屋へと向かう。

 

 大きな水槽に骨を入れ、漂白剤をどばどばと。

 こびりついた肉片に、ぷくぷくと泡がまとわりつく。強いアルカリ性を有する漂白剤だ。数日のうちに肉片を溶かして、真白の綺麗な骨になるはずだ。


 ああ、楽しみだなぁ。

 作り上げる工程も楽しいけども、完成した椅子を眺めるのも、使うのも楽しみだ。


 君らも、創作家ならわかるだろう?

 作る楽しみってものをさ。

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