第8話 帰り道とメッセージと夢の話
「ほら、そろそろ次の授業始まるから。」
「あ、もうそんな時間なんだ。」
私は寂しかった。情けない姿を肖子に晒してしまったがあれだけ甘やかされた後なので、もっと一緒に居たい気持ちの方が強かったからだ。
「もーう。そんな寂しそう顔しないでよ。」
「それと私のワイシャツさ、マヤの涙でぐしょぐしょになっちゃったから変えてもいい?」
肖子はそう言いながらリュックサックから替えのワイシャツを取り出した。私はごめんねと頭を下げて、教室から出た。そして扉の前で見張りをする。
ほどなくして肖子は教室から出てきた。私達は次の教室に向かった。
「それじゃあ今日の授業はこれで終わりだ。次までにしっかり課題を終わらせてくるんだぞ。いいな。」
はーいと全員の気怠そうな返事とともにチャイムは鳴り午後の授業は終わりを告げた。
カタカタとローファーの音と共に風鈴の音が聞こえる。
「マヤー。おつかれ。ほら、行こう。」
肖子が教科書とノートをまとめている私の元に駆け寄って来た。私は言われるがまま彼女の後について行く。
「肖子ちゃーん。」
教室の扉の前で手を振る何人かの女子生徒がいる。
「私はマヤと一緒に移動したいんだからね。今度は逃げないでよ?」
小声で肖子に念を押された。これから起こる事態を予測して離れようとしていたのがバレバレだ。
「あれ?
「うんそうだよ。それとマヤの事をツチノコみたいな扱いしないでよね!」
私は肖子に背中を押された。
「か、か、影井です。」
何故か自己紹介してしまった。
「名前ぐらい覚えてるよね、クラスメイトだもん。」
「私影井さんと話すの始めて。」
笑われてしまった。でも思っていたよりも険悪なムードにならなくて良かった。
それから皆んなで教室に帰った。私は肖子の後ろにひっつき虫のように隠れてながら歩いた。
「今日は逃さないからね!」
そう言って肖子は私の前に立ちはだかった。
「流石にもう逃げないよう。」
それから二人で学校の門を出た。誰かと帰るのなんて久しぶりなので少し緊張している。
「なんか緊張してる?」
「う、ん。でも嬉しいんだよ。」
精一杯笑って答えた。それから推しについて他愛もない話を繰り広げた。好きな曲ベスト3を言い合ったり彼の良さについて共感し合ったりした。
「やっぱり話が会うよね。楽しかった!」
「私も楽しかった。」
「また明日学校でね。」
「あ!連絡先交換してないよ。」
スマホを出し合って連絡先を交換した後私達は手を振って別れた。
寝る支度を終えてベットの上でスマホを見ていたら、メッセージの通知が来た。
「まだ起きてる?」
「うん起きてるよ。」
「よかった!今日は嫌じゃなかった?急に抱きしめたり膝の上に座らせたりしちゃったから。もし怖かったりしたら謝りたくて。」
「嫌じゃないし怖くなかったよ。むしろ安心したよ。それに泣き出しちゃったのは私の方だし。変に思われるかもしれないけど凄い嬉しかったよ。」
「そっか!急に心配になっちゃったんだ。ありがとー!」
「おやすみ!マヤ!」
「うん。おやすみねショーコ。」
やり取りを終えると心臓がバクバクだった事に気が付いた。嬉しいとか変に思われなかったかな。その後はそわそわしてしまい眠りにつくのに時間がかかった。
「ねぇショーコ伝えたい事があるんだけど。」
「こんな所でなんの話?」
「私ショーコの事が大好きなの、ショーコを他の誰にも盗られたくないの!だから私じゃダメかな?」
「え!もちろんだよ。マヤから言われるのずっと待ってた......。」
・・・・・・
「あああああ!」
私は飛び起きた。曖昧だけど都合が良すぎる夢だ。
私は肖子とキスをする夢を見た。
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