第7話 仲直りとお弁当
今日は少しばかり早く起きた。教室に早く着いて一人でいるのも、誰かと話すのも嫌なので、いつもは時間ギリギリに登校している。だけど、今日は早く
毎日同じ時間の電車に乗ると、当然のことだが顔ぶれも同じ事が多い。あの人今日も頑張っているなとか、今週もあと少しだからお互い頑張ろうとか、心の中で思ってしまうのは私だけだろうか。車内でそわそわとしてしまった。私は変わらないものが好きだ。
教室に入ると肖子はもう席に着いていた。側には誰もいなかったのでラッキーだった。私は肖子の席に向かった。
「……あ、のー、
自分でも最大級の余所余所しい言葉にびっくりした。
「なんの用ですか?
不機嫌そうに肖子は答えた。
—─そうだよね。あんなに他人みたいに話しかけたらダメだよね。
「あ、あー、ひるやすみ!来て!」
訳の分からない言葉だけ残して私は逃げるように立ち去った。
完全に間違えてしまった。謝りたかっただけだけど、肖子が私なんかと仲が良いことが知れ渡ったら迷惑がかかるなんて考えたら、緊張してしまい上手く伝えられなかった。昼休みにまた来てくれるかな。
私はいつも昼食を食べる教室で肖子を待っていた。
──ガラガラガラ……。
扉を開ける音と共に肖子が姿を見せた。
「ショーコ!」
私は嬉しさのあまり少し涙ぐんでしまった。
「……昨日はごめんなさい。一緒に帰る約束無視して帰っちゃって」
「もう、その事はいいから。それより今朝の態度はどうしたの?」
「あ、う……それはね、私なんかと仲が良い事がバレたら迷惑か──」
言い終わる前に涙でいっぱいになってしまった。
「ごめん、泣くのは私の方じゃないのに。ほんとに嬉しかったのに……」
矢継ぎ早に弁明の言葉を必死に言葉にした。声になっているか分からないが必死に伝えようとした。すると、急に視界が暗くなり柔らかい感触が目の前に現れた。
「もうわかったから」
肖子は私の体を抱き寄せた。私は咄嗟に制服が汚れてしまうと離れようとしたが、より強い力で抱きしめられてしまった。
「いいから。大丈夫だから。ここには誰も来ないでしょ」
「──うん」
私は抵抗をやめて体を預けた。
「迷惑だなんて思わないからさ。誰になんと言われようが私が守ってあげるし、マヤの友達辞めるなんて事しないから。あんな他人みたいな態度取るのはやめてね。教室でもショーコっていつもみたいに呼んでよ」
「う、ん」
私は咽び泣くように返事をする。
どれくらいの時間が経過しただろうか。気持ちも落ち着き、呼吸も安定してきたので私は顔を挙げた。
「ショーコ、ありがとうね」
「もう落ち着いた?どうせならお昼も食べさせてあげようか? マヤちゃん」
肖子は子供をあやすように私の頭を撫でる。
「もーう、酷いんだからショーコは! でも、も、もしかして……お願い出来たりするの?」
「え! それって本気? いいけどさ」
肖子はハンカチで私の涙を拭い、自分のリュックからお弁当を取り出した。
「これ私が作ったんだ、はい!」
こんなにスムーズに事が進むとは思ってなかったのでびっくりしたが、差し出された卵焼きに口を開けるしかなかった。
「──美味しい」
「そりゃそうだよ! 自信作だもん」
私は彼女の膝の上で次々と運ばれるお弁当を受け入れた。
「たくさんここに入ってよかったね」
そう言いながら私のお腹をさすってくる。
「もう許してよ。恥ずかしいよー」
私は身悶えて彼女の膝から降りた。
「ありがとね。どれも美味しかった」
「それは良かった! マヤはいっーつも不健康そうな昼食なんだもん。心配だったよ」
私の菓子パン生活を気遣ってくれてただなんて。本当に嬉しかった。
「そんな事までありがとうね。感謝し足りないよ。」
「もう泣かないでよね。流石に今からマヤの事をあやしてたんじゃ、午後の授業間に合わないよ!」
「それはそうだね」
私は笑って返事をした。
「ねぇショーコ? 私ショーコのこと好き」
「私もだよマヤ!」
友達としてなのか恋心から来るものなのかお互い確かめようがなかったが、今は両思いだという事が知れただけで嬉しかった。
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