Humpty Dumpty had a great fall....
♩
—
—
—
—
—
—
—
—
♩
今日はあの人の誕生日。
お出かけの準備で思わず出る歌。
あの人の星座の牡羊座。
私の歌詞はお家にあった古い本から。
最近のとは少し違うらしい。
でもこれで憶えてしまったから、なかなか変えるのも難しい。
今日は暖かい春らしいお天気。
今日渡すプレゼントもケーキもしっかり持った。
今日の私は春色パステルカラー。
あの人はいつもシックなキレイ目だけど、今日はどんなかな?
最近は少し色味も入ってもっと素敵に。
でも、いつものシックなのもとっても素敵。
さあ、最後のチェックは玄関の鏡――
ぐちゃ
何の音―—?
玄関で振り向いた拍子にバッグが棚に――
嘘――?
中身は――?
ふたを開けて中を見る。
はしのが少し崩れただけ。
これなら大丈夫――
私の分だから大丈夫――
それでも、気分が落ち着かない。
ああ、約束の時間――
急がないと――
何とか電車に乗る。
間に合った。
あの人の処へ――
あの人は、駅で迎えてくれた。
今日もビターでシックな格好で。
ただ、何故だろう。
表情も少し苦い気がする——
あの人が口を開く。
「もう――——————」
何故だろう。
言葉が聞き取れない——
ただ、苦みばかり――
ぐちゃぐちゃ
ぱき
思わず、荷物を落とす。
何も聞こえない——
何故だろう。
ただ、急いで荷物を拾い、そのまま駅の中に戻る。
ちょうど帰りの電車のドアは開いていた。
そのまま、気付いたら家にいた。
暖かい日。
窓に漏れる日が明るい。
あれから、何回光と闇を見ただろう。
憶えていない。
ただ、ずっと暖かな日々。
何も無く、平穏に流れる日々。
何も無く。
箱の中身は――
もう、見られない——
あれからずっと、見られない——
♩
―
―
―
―
♩
The Bitter Cake into the Sour Chaos @Pz5
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます