The Bitter Cake into the Sour Chaos

@Pz5

Humpty Dumpty sat on a wall.

ハンプティダンプティ塀の上Humpty Dumpty sad on the wall

ハンプティダンプティ落っこちてHumpty Dumpty had a great fall

お城の馬と家来の全部でもAll the king's horses and all the king's men

ハンプティダンプティは元に戻せないCouldn't put Humpty Dumpty together again


 卵を割る。

 1つはあの人のため。

 卵を割る。

 1つは自分のため。

 卵を割る。

 最後の1つは2人のため。


 それを漉した砂糖とアーモンドパウダーにあわせたら泡立て器で混ぜる。

 そこへさらに小麦粉も。


 準備の作業が楽して、思わず歌を口ずさんでしまう。

 レシピではここを分けてすることにしているけれど、何でだろう?


 そしたら今度はそこにメレンゲの少し前まで泡立てた卵白を入れてへらで優しく。

 溶かしバターも加えてまたへらで軟らかく。


 生地をの練るときは、分量さえ決まってしまえば後は優しく丁寧に愛撫してあれげば良いこの時間が好き。

 ボールからの柔らかな手応えが、あの人との甘い時を思い出す。


 少し生地を落ち着かせたら、型に流し込んでオーブンへ。


 ビスキュイ・ジョコンドを焼いてるその内に、今度はコーヒーシロップとショコラガナッシュを。

 香ばしいコーヒーとお砂糖が、熱く甘く蕩け合う。


 私は甘いイチゴのショートケーキが好きだけど、あの人が好きなのはビターなガトーオペラ。

 だから、次のあの人の誕生日には、あの人が好きなオペラに私が好きなイチゴを併せた、私達の将来のためのスペシャルケーキを。


 コーヒーシロップを煮詰めたら、冷ます間にショコラガナッシュを。


 温度に気をつけて、ゆっくりチョコレートを溶かしたら、そこにたっぷりと生クリームと溶かしバターを加えて粘りを見ながらかき混ぜる。

 ゆっくりと、でもしっかりと。

 温度には気をつけて。

 音も聞きながら、ときどき唇でも確認を。

 とても甘い、この時間。


 焼き上がり落ちつかせたビスキュイを型で3枚に切り出し、別の深い型に入れたら、そこにコーヒーシロップを塗りこめる。

 たっぷりと濡らしたら、じんわりと撫でて染込ませていく。

 ここで焦らず、そのまま馴染むまでしばらく置いて、次の材料の準備を。


 次に造るのはバタークリーム。

 卵をお砂糖と混ぜたらゆっくりと泡立てフワフワにして、そこにバターを加えていく。

 最初は固くおおくてびっくりするけど、ゆっくり泡立て器でならしていくと、とろとろと馴染んでいく感じがとっても気持ちいい。

 しっかり馴染んだクリームの中に、更にコーヒーシロップと彼の好みでブランデーを。

 乳白色のクリームがあの人の色に染まるようで、何だか妙な気持ち。


 これで準備は万端、後は重ねていくだけ。

 幾重にも。


 さっきできたあの人好みのクリームを、先にしみ込ませた生地の上に半分だけ流し込み、ヘラで丁寧にならしていく。

 ここで空気が入らないように、慌てず丁寧に。

 ゆっくりならしたら、その上にビスキュイを被せてコーヒーシロップを塗り込んだら、ショコラガナッシュを先ずは薄く。

 これも丁寧に塗りこんだら、今度は私のイチゴをスライスして並べ、その上からショコラガナッシュを流し込む。

 これをイチゴがなくなるまで繰返す。

 ほろ苦く、でもとても甘いあの人のショコラガナッシュと私のイチゴが重なりあっていく。

 私のイチゴが全部あの人のショコラガナッシュに呑まれたら、その上にゆっくりビスキュイを重ねコーヒーシロップをしみ込ませ、その上にまたバタークリームをたっぷりとかける。

 蕩けたバタークリームが生地と馴染んでならされたら、軽く撫でて冷蔵庫へ。


 これで本番はおしまいだけど、最後にもう一仕事。

 冷やしている間にグラサージュ用のチョコレートソースを。

 お砂糖とカカオパウダーをお水で溶いてじっくり馴染ませたら、ここにも生クリームを加えてゆっくりとろとろに煮詰め、最後にゼラチンを少々溶かし込む。

 それを漉して滑らかにしたら、熱いそれを冷やしておいたケーキの上にかけて行く。

 ケーキを揺らしてまんべんなく拡げたら、しばらく休ませ、再び冷蔵庫へ。


 これでケーキは完成だけど、これは2人の特別品。

 あの人の誕生日の為にチョコレートのプレートにメッセージを。

 本来は飾りに金箔を乗せるのだけど、それだと可愛くないので、金ラメで。

 これも冷蔵庫で一晩休ませる。


 後は切り出して、メッセージプレートを乗せたら仕上げに私の色のドライストロベリーパウダーをまぶして完成。


 一見冷たくて苦い、でも中身はとろとろに甘い、2人の為の特別なオペラの完成。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る