第112話 【月面】 #2

112.【月面】 #2









「ほんと、何もないな」


【月面】ダンジョンの探索を開始してから3時間ほどが経ち、これまで出会ったのはここにきて最初に倒したのと同じのっぺらぼうの宇宙人だけだ。


他の魔物が出ないかなと周りを探してみるも、あるのは灰色の景色だけで何か施設があるわけでもなくただひたすらに何もない土地が続いている。



「マスター」


「ん?どうかした?」


「はい、偵察用ドローンで魔物を見つけたのですがどう見ても牛にしか見えないんです」


「ここって【月面】ダンジョンだよな?」


「はい」


「ここに牛?」


「はい」


月に牛?どういう事だ?

偵察用ドローンの映像を確認すると、そこには白と黒のまさに牛といった見た目のやつがいた。


映像だけでは詳しく分からないので発見した場所までバイクで進んでいく。


「牛………だな」


「はい」


灰色の地面に草も無いのに何かを食べている仕草をしている牛。端的にいって不気味だ。


「あ、UFO」


どこからともなく現れた銀色の円盤型UFOが牛へと近づいていく。


「キャトルミューティレーション!?」


UFOから円形の光りが照射され牛がふわふわと浮かび連れ去られようとしていて、牛が悲しそうにモーモーと鳴いているのが聞こえる。

しかしそんなことは知った事かと、牛を格納し終わったUFOはそのままどこかへと飛んで行った。


「あれも魔物の部類に入るのだろうか」


機械の魔物がいたんだしUFOの魔物がいてもおかしくはないとは思うけど果たしてアレはありなのか?


「マスター、UFOが欲しいです」


「え?アレが欲しいの?」


「はい」


「どうしてUFOが欲しいの?」


「どのような技術が使われているのか気になります」


「なるほど?」


まぁ確かにUFOにどういった技術が使われているのかはすごく気になるな。


因みにありとあらゆる技術が進歩した現代でもUFOは今でも未確認飛行物体だし、今でも時々ニュースになるほどにはそれっぽいのが撮影されてたりする。


「技術的な部分が欲しいとなるとどうやって倒すかが問題になるな」


普通に撃ち落としてしまうとUFOに穴が空いたりして肝心な部分が確認できなかったりしそうだし【魔法転換:銃弾(雷)】とかだと機械的な部分があったとしたらそこが壊れそうだし。


そう考えると意外と難しいことなのか?鹵獲って。


相手を傷つけずに倒すとして有効な手段と言えば何だろう?毒とか呪いとかそっち系か?


「ふむ」


毒………そうか、毒か。そう言えば【魔法転換:銃弾(毒)】があったな。

どういった毒か分からないが試してみるか。


「まずはもう一度UFOを見つけるところからだな、さっきと同じでいいなら牛から探すべきか?」


「はい」


偵察用ドローンを飛ばし先ほどと同じ様に牛を探す事にする。






◇  ◇  ◇  ◇






「やっと見つけた………」


UFOを探し始めて5時間、一向に牛が見つからず気がつけばそれだけの時間が経っていた。

どうやら思ってた以上にレアな魔物だったようだ。


UFOが来る前に牛を倒してもUFOが来るのかとか。キャトルミューティレーションしている最中に牛を倒してしまうとどうなるのかとか。

他にも色々試したい事があったのにこれだけ見つけるのが大変だと難しいかもな。


「マスター、UFOです」


牛を見つけて数分といったところだがUFOが早速きたようだ。


【魔法転換:銃弾(毒)】を今回はスナイパーライフルで使用することにする。

アサルトライフルでもよかったのだが【魔法転換:銃弾(毒)】がどの程度の強さの毒か分からなかったので1発ずつ確実に当てれそうなスナイパーライフルを使う事にした。


「よし、キャトルミューティレーションし始めたから撃つぞ。ヘレナも射撃体勢で待機していてくれ」


「はい」


バイクを降りて【赤雷】シリーズの内1つの機体を背中側へと回し体を預け銃の反動を受け止めてもらう。

ヘレナには万が一のためにいつでも攻撃できる状態で待機してもらう。


UFOはキャトルミューティレーションを実行中で動きを止めたまま隙だらけなので撃つ。


「おー、効いてる効いてる」


【魔法転換:銃弾(毒)】を食らったUFOは突然ふらふらと揺れ出した。どこか苦しんでいるようにも見えるので恐らくあれが毒を食らっているという状態なのだろう。


キャトルミューティレーションが中断され連れ去られる途中だった牛は空中から地面へと落ちる衝撃で気絶してしまったのか倒れて動かない。


「毒が余程苦しいのかな?全然こっちにこないな」


毒を食らってふらふらと飛び続けているUFOはこちらを攻撃する余裕もないのか動きが無い。


1分経っても、2分経ってもふらふらとするだけで中々倒れないUFO。目に見えない攻撃だからどの程度のダメージか分からないけれど、動けないってことはそれなりのダメージを食らってはいるはずなのだが。


「あ、落ちた」


5分ほどが経った頃にふらふらと飛び続けていたUFOはやっと墜落した。

墜落してから少しの間本当に倒せているか確認するために暫く待ってから近づいていく。UFOは所謂円盤型というやつで近くで見ると意外と大きい。

直径20メートルほどだろうか、結構でかい。


「動きそうにはないな」


「はい、マスター。完全に沈黙しています」


倒せたのが確認できたのなら【格納庫】から回収用ドローンを何体か呼び出して協力して運んでもらう。

【魔法転換:銃弾(毒)】の効果を確かめたいのでドローンのあとに続いて俺達も【格納庫】へと入っていく。


【格納庫】へと入ると早速と言わんばかりに作業員ロボットがUFOへと群がり解体を始めている。


「【魔法転換:銃弾(毒)】があたった場所を調べてくれる?」


「はい、ここです」


ヘレナが操作する作業員ロボットがUFOを近くに持って来てくれて弾の当たった場所をよく見せてくれる。

UFOの一部が緑色に変色している。


「変色はしているけど、中身はどうだった?」


「はい、変色しているのは外側だけで中身に変化はありませんでした」


「ふむ」


表面だけで中身に浸食は無しか。


「変色した部分は素材的に何か変化はある?」


「はい、変色している部分は他の部分と比べて材質が柔らかくなっています」


「どの程度?」


「この程度です」


そういって作業員ロボットが変色した部分を機械の腕で軽く押すとそれだけでぱらぱらと崩れていった。


「うわ、めちゃくちゃ柔らかくなってるな」


すごいな、毒のダメージだけでなく材質の変化まで起きるのか。この先銃弾が弾かれる敵とか出てきた時に有効な手になるかもな。


「取り合えず今日の探索はお終いにしてUFOの研究でもするか」


「はい」


何時間もUFOを探して疲れたので今日はこの辺で探索はお終いだ、また明日探してみよう。試したい事は他にもあるし。







◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


エアコンが壊れてしまいました。暑いです。


暑さのせいでろくに眠れず寝不足になり、執筆をする気も起きずだらだらとしていたら更新が遅れてしまいました。

まだまだ暑い日が続くと思いますが皆さまもエアコンの調子にはお気を付けください。今壊れるとやばいです。






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