第109話 【機獣都市】 #2

109.【機獣都市】 #2









「ここの時計って外と時間合ってるのかな?」


ガラス張りの建物を出て今度は時計塔へと行くことにした。

バイクに乗り込んで途中に出てきた敵をバイクを降りることなく倒していき素材の回収はドローンに任せて進む事5分、時計塔が見えてきた。


時計塔はロンドンにあるような形の物で大きな建物と一緒に併設されている。


「いえ、どうやらでたらめな時間のようです」


「でたらめなのかぁ、確かによく見ると針の進むスピードがおかしいな?」


時計塔を眺めていると、針がいきなり10分ほど進んだかと思うとその後ピタッととまり動かなくなったり。挙動がおかしい。


「取り合えずあの建物の中でも探検するか」


時計塔とそれに併設された大きな建物へとバイクを進める。


「ここはちゃんと入口が付いてるな」


ガラス張りの建物と違い、ここには両開きのドアがきちんと取り付けられていた。

中へ入るためにバイクと【赤雷】シリーズを【格納庫】へと戻しておく。


武器もアサルトライフルをメインにするのは変わらずサブにショットガンとハンドガンをいつでも出せるように用意しておく。


「それじゃぁ行くよ」


「はい」


扉を開き、まずはクモ型の機体を先行させマッピングを行わせる。

頭防具内のディスプレイに次々とマップが組みあがっていくのを眺める、この建物の広さがどれほどの物かわからないがこのスピードならそう時間がかからずマップが出来上がりそうだ。


出来上がっていくマップを横目に室内へと入っていく、中は薄暗く明かりが心もとない。暗視を使うほどではないが、使わなければそれはそれで見落としがありそうな微妙な明るさで何とも言えない。


室内に入ってすぐ左右には通路があり、正面を見れば少し広いホールの様な物になっており両側に階段が見える、どうやら2階へと繋がっているようだ。


左右の通路は狭く、2人が横に並べばいっぱいになりそうなぐらい。


「【気配感知】に見えている敵から倒しに行くか」


先行させているクモ型からの情報と【気配感知】の情報を合わせてどこに敵がいるのか判明していっている。折角だし見えている敵から倒していく事にする。


左右にある通路の右から行くことにする。アサルトライフルを構えながら敵がいる部屋へと向かっていく。


「あ、そりゃそうか待っててなんてくれないよな」


敵がいる部屋まで10メートルほどまで来た所で敵が部屋から出てきた、そりゃそうだ。敵だってこっちを感知することぐらいできるわざわざ待つ必要も無い。


部屋から出てきた敵はスチームパンク風の全身が機械になっている人型の魔物。

ここは【機獣都市】っていう名前だし獣系しかいないのかと思っていたがああいう人型もいるんだな。


まずはいつも通りアサルトライフルで1発………撃ったところであまり効いて無さそうだったのでそのまま連射する。


「硬いし、機械だからやっかいだな」


頭と胴体部分の7割ほどが消失してやっと動きがとまった。

機械系の魔物の厄介な所はこれだ、例え腕がとれようが足が無くなろうが。体を制御する部分が生きていると動き続ける。

普通の魔物なら痛覚があるので攻撃すればある程度動きは止まるのだが、機械系だとそうはいかない。


同じ機械系で言うと、機体の素材としてお世話になっている【アルミーシュ】ダンジョンがあるが、あっちは精密な機械という感じでどこか壊れれば他の部分に支障がでるから倒しやすい。


だが【機獣都市】の機械の魔物はよりファンタジー色の強い魔物だと思う。

現実的な機械に近い魔物の【アルミーシュ】。ファンタジー寄りの機械系の魔物の【機獣都市】。同じ機械系でも特徴が違うんだな。


「ん」


戦闘音を聞きつけたのか【気配感知】にこちらへと向かってくる敵を感知した。


「さっきと同じ人型………なるほど、【機獣都市】か……」


通路の奥から現れたのは先ほど倒したのと同じ人型の体が機械で出来た魔物なのだが、それが走り寄ってくる途中で変形して獣型へと変わっていった。


先ほどの倒した敵は変形する間もなく倒したから気づかなかったのか。


「ヘレナ、頼む」


「はい」


後ろで待機していたヘレナへと声をかけ攻撃を開始してもらう、なぜ自分で行わないのか、それは彼女の銃には【魔法転換:銃弾(雷)】の弾を込めたマガジンをさしてもらっているからだ。


【アルミーシュ】ダンジョンの機械には効果的だったがここではどうだろうかと、試すためにマガジンを俺とヘレナで分けていた。


「撃ちます」



「おー、やっぱり効果あるな」


【魔法転換:銃弾(雷)】をうけた敵は走ってきた勢いのまま体が硬直してズサーッといった感じで転げてしまった。

その隙を逃さず追加で銃弾を撃ち込んでいき倒しきっておく。


「追加は無し。よし、回収しよう」


敵を倒した後少し待機していたが追加でくる魔物の影は無いので倒した素材を回収していく。


「マスター、これを見て下さい」


「何々?これは魔石か?」


ヘレナが渡してきたのは青色と紫色のグラデーションが綺麗な手のひらに収まるサイズの歪な石。どうやらこれが魔石のようだ。


「綺麗だけど玩具っぽさがあるな」


水槽とかに入れたら綺麗に見えそうな石だ。


「弱点とか、何かわかったことある?」


「はい、他の魔物と一緒で倒すだけならば魔石を狙えばよさそうです。魔石の位置も所謂心臓部分にあるようです」


「魔石を狙えばいいのは魔物の共通だしなぁ、出来れば素材として魔石は回収したいけれど」


「はい、素材として回収を優先するならば拘束してから魔石だけを抜き取るのが一番いいかと」


拘束してから抜き取るか……確かにそれが出来るなら一番いいんだけどなぁ。


「そうなると【魔法転換:銃弾(雷)】じゃ厳しいか?回収する時に危ないし」


【精霊の弾丸】だとどうだろう、あまり使う機会のないスキルアーツだが。試してみるか。


「取り合えず先に進もう」


「はい」


次に出会った敵に試してみる事にして先に進む事にする。


因みに人型から獣型へと変形する魔物は1体6万GPでした。まぁまぁおいしい。






◇  ◇  ◇  ◇






「ヘレナは左!俺は右をやる!」


「了解」


時計塔に入ってから3時間ほどが経過し、ほとんどの部屋を通過して最後にやって来たのはこの建物内で一番おおきな部屋でその中に明らかに他とは違う様子の魔物が待っていた。


【気配感知】で大体の敵の大きさがわかるのだが、これまで建物内にいたどの敵よりも大きな形をしていた。


入ってすぐ目に入ったのは、部屋の奥でその大きな体を広げて待つ敵の姿。

その見た目は死神の様にも感じて、見ている間にも体を色んな形へと変形させていっていた。


熊になったり象になったり、他にもよくわからない動物のような見た目のナニカになったり。


攻撃をしようと銃を構えた瞬間、部屋の中に新しく敵の気配が生まれ何十体のも人型の魔物が出てきた。

ヘレナには左側のを相手してもらってその間に俺は右側を相手に、分担する。



銃を撃ちながら【格納庫】から【赤雷】シリーズを呼び出していく、部屋の広さ的に3体で限界の様だが前にでて盾になってもらう。


「あぶなっ」


奥にいるこの部屋の主っぽいやつが腕を伸ばして攻撃してきたのを慌てて避ける。


攻撃を避けつつ【赤雷】シリーズを盾にして銃を撃つ。


「やっぱこれが一番効果的か」


撃たれた魔物は体の一部が凍って動けなくなっている。


【魔法転換:銃弾(氷)】これが一番効果的だと分かったのは【精霊の弾丸】を試した後。

【精霊の弾丸】は確かに相手を拘束したが使える回数がそこまで多くないので結果的に使えないと分かった。

それに比べると【魔法転換:銃弾(氷)】は毎日の日課でそれなりの数を生成していたので十分な弾がある。


スキルアーツには熟練度的な物がある、同じ技でも使っていくと効果量が変わったりするのだ。

そのおかげか毎日のように使っていた【魔法転換:銃弾】は今では1日1万発ほど生成できるようになっている。


【魔法転換:銃弾(氷)】で動けなくなった魔物に追加で弾を撃ち込み完全に動けなくしていく。

まわりの雑魚を動けなくしたら本命のでかいのだ。


でかいのも凍らせていく、【赤雷】シリーズが前で攻撃を全て押さえてくれているから撃ちやすい。





「マスター、終わりました」


「おう、ボスっぽいのも丁度終わったところだよ」


戦闘時間は10分もかかっていないだろう、あっという間に制圧し終わった。

一応まだ殺しきったわけじゃないので警戒しつつ【格納庫】から作業員ロボットを呼び出していき魔石を回収させていく。


四肢を氷で固められ動けない魔物の胸を開き魔石を回収していくのは、考えようによってはかなりぐろい事をしているような気がするが……相手は機械なのでよしとしよう。

深く考えると駄目な気がする。



「マスター、これを見て下さい」


「んぁ?今度は何だ?」


ヘレナに手渡されたのは拳大ほどの黒曜石のような石。


「これは?」


「これは先ほどのボスっぽいやつの核なのですが、どうやらそれが【ランバル】の核のようです」


「ん………?これが?」


「はい」


「あれ?ここって巣だったの!?」


「はい、どうやらそのようでした」


知らないうちに俺達は巣に居たのか………?そう言えば何だが敵の数が多いなとは思っていた。

倒した魔物だけで200体ほど、小さな部屋が沢山ありそこから数体ずつ出てきては倒すを繰り返していたのだが気づけばそれだけの数を倒していた。


「はからずしも目的を達成してしまったのだが、なんだか消化不良って感じだな」


肩透かしを食らったかのような感じ、なんともモヤモヤとした感じ。


「よし、もう一個巣を殲滅するか!」


どうせ巣なんて他にもあるだろう、そこをちゃんと攻略しよう。


満足するまでやってみよう、倒してみよう、殲滅しよう魔物の巣。






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