第104話 【管理番号5061】 #4

104.【管理番号5061】 #4









「マスター、偵察ドローンが1機落とされました」


「またか。しょうがない、これ以上被害が出る前に今だしてるやつも戻そう」


「はい」


現在地は72層、ちょっと前からドローンが飛行系の魔物に追われて危なかったが限界が来たのか落とされるようになってきた。

代わりにゴブリンの王国である【ゴランデル王国】攻略の際に使ったクモ型の偵察機を放つ。


クモ型の機体は小さく見つかりにくいが発見されてしまうと簡単に壊されてしまうだろう、今いる場所のような開けたエリアではあまり使いたくなかったが仕方ない。


「うーん、一度地上に戻るべきか」


「そうですね。ドローンがおよそ3割、【機銃】がおよそ5割損壊しています。【赤雷】シリーズも細かい傷がありますし【不壊】の武装も見直す必要がありそうです」


前回地上に戻ったのは10日前だ、今までは決めたように14日に1度地上へ戻っていたが深い階層になるにつれてタイミングも変えていくべきなのかもしれない。


「地上へ戻ろう」


「はい」






◇  ◇  ◇  ◇






「それじゃ、私は報告に行ってきますね」


「はい、お願いします」


72層から1日かけて地上へと戻ってきた、移動にはバイクを使ったが操作はヘレナに任せた、その方がスピードを出せたからだ。

外へ出ると心なしか空気が美味しく感じる。ダンジョン内も別に空気がよどんでいるとかそういう事は無いのだが何となく気持ち的にそう感じると言うだけだ。


地上へと出てから少しして山田さんとはダンジョン協会へと報告の為に別々になる、彼女には報告の義務がある、大変そうだが頑張って欲しい。


報告内容は色々とあるらしいが俺が直接恩恵を受ける事と言えば地上の様子だ。


ここへ来た当初は廃村で草がボーボーで道があるのかどうかも分かりづらかったほど放置されていた土地だが今ではある程度整備されて何やら新しく建物まで増えている。


今も見える範囲だけで作業用ロボットが動いているのが見える。


この光景こそ山田さんの報告により俺が受ける恩恵だ、何もなかった場所に建物が出来てそのうちの一つに泊まる場所が出来てちょっとしたお店もある。


これらすべてダンジョン協会が用意した物で利用するにあたってかかる費用などは免除してくれるみたいで遠慮なく利用して欲しいとのことだ。

言わば俺が放棄ダンジョンを攻略するためのダンジョン協会側の支援という事だな。


順調に攻略しているという報告を山田さんがすることによってダンジョン協会側も安心して再開発に乗り出せるわけだ。


取り合えず宿泊施設となっている建物へと入っていく、中に人の気配は無くロボットが何体か動き回っているだけだ。


受付を済ませて渡されたキーに書いてある部屋番号へと向かう。


301号室か。


エレベーターで指定された階まで上がり部屋を見つけて中へと入り、部屋の中を見て回る。


「部屋の中はどこも同じなのかな?」


トイレとお風呂が別にありキングサイズのベッドと大き目のテレビ、ベッドの横には探索者用なのか大きなクローゼットがあり鍵もかけれるようになっている。

机の上には仮想空間へ入るための簡易ヘッドギアとネット有線の接続先がついている。


近年では無線でも有線と遜色ないレベルの通信速度になったとはいえ、やはり中には有線にこだわる人もいる。そういった人への配慮もあるようだ。


この宿泊施設を使用するのは3回目、毎回部屋は違うが中は同じようだ。


取り合えず確認が終わったので部屋の中で【格納庫】への入り口を作り中へと入っていく。


「ヘレナ、状況はどう?」


【格納庫】へと入りすぐ見える位置にヘレナがいたので声をかける。


「はい。【赤雷】シリーズの修理は既に終わり、【機銃】は9割ほどが復旧済み。残りは【不壊】の武装を変更するのみです」


「了解、ありがとう」


どうやら地上へと帰る間にほとんどの作業は終わってしまったようだ、後は【不壊】の武装か。


「今の【不壊】の武装は〝パイルバンカー〟に〝多連装ロケットランチャー〟と〝多連装ミサイルランチャー〟か。確かに火力はあるだろうけれど過剰気味か?」


「そうですね、現状を考えると火力よりも手数を増やしたいところです。ですが、大物が出てきた時に火力のある武器は欲しい所です」


うむ、悩ましい。手数を増やそうとするなら重機関銃あたりを取り付けるのがいいのかもしれないがそうすると一撃の火力が出るランチャー系が使えない。


武装を取り付けるにも重量や設置場所の問題もあるしな。


「いっその事大きく改造するか?」


今の状態ではダメなら大丈夫なように改造してしまえばいいのか。


「それもありですね」


「じゃぁちょっと考えてみようか」


【不壊】の武装は両肩に〝多連装〟系を乗せて右手に〝パイルバンカー〟を取り付けている状態だ。

付けてある武器の数だけで言えば少ないが重量などを考えるとこれ以上増やすのは厳しい。

では重量の軽いエネルギー系の武装ならどうかと言われるとそれもまた難しい、エネルギー系の武器は便利なのだがやっぱり実弾系の武器ってのもロマンがあって捨てがたい。


ならば仕方ないでかくして重量が増えても大丈夫なようにしよう。


そうと決まればまずはアプリを立ち上げどういった風にするか大まかな設計図を書き始める。


改造か………そう言えばヘレナの専用人型機って今は俺の【GunSHOP】スキルの銃を使っているが何も俺と同じ様に遠距離攻撃ばかりの必要も無いんだよな。

言い方は悪いかもしれないが最悪破損しても修理の出来る機体だ。そう考えるともっとアクティブに動けるように何か考えるべきか………?


その辺もヘレナと話し合うか。






◇  ◇  ◇  ◇






「わぁ、凶悪になったな」


2日間の休みを終えて再びダンジョンへと戻り現在は75階、目の前では改造のし終わった【不壊】が暴れている。


変更点はいくつかあるがまずはその体、改造前は8メートルほどの大きさだったが今は12メートルとかなりでかくなった。

体を大きくした分、もちろんそれを支える脚なども大きくして全体的にひとまわり以上でかくなった感じだ。


次に武装、体を大きくして積載量を増やしたことで以前の装備をそのままにさらに新しく〝重機関銃〟を2つ取り付けた。

実弾系の物にしたので弾切れを起こしてしまうがその場合は補充ドローンを飛ばすつもりだ。


そんな新しくなった【不壊】が1機で魔物達を蹂躙している。


前方の腕に取り付けた盾でひき殺し、頭の上やや側面に取り付けた〝重機関銃〟で蹴散らし、肩についている〝多連装ロケットランチャー〟と〝多連装ミサイルランチャー〟で爆散させて。


たった1機でほとんどの敵を相手している。


「あ、オーガが吹っ飛んでいった」


【不壊】に体当たりされたオーガがぽーんっと跳ね飛ばされた。


体が大きくなり積載量が増えた分重量も増えて動きが若干遅くなったものの問題はなさそうだな。


これならこの先も楽に進めそうだ。






◇  ◇  ◇  ◇






と、言うわけでやってきましたボス部屋。数え間違えていなければここは丁度80階のはずだ、ダンジョン協会の見立て通りと言う事になる。


「門がでっかいなぁ、これってどうやって開くんだ?」


目の前にそびえたつのは大きな大きな鉄の扉。【不壊】が3機縦に重なっても通れそうなほど高く、横に2機ならんでも通れそうなほどでかい扉だ。


「こういった扉は進む意思を持った状態で触れると開くようになっているんですよ」


「へぇそうなんだ」


流石にそういったギミックがあるか。


ボス部屋に入る前に一通り確認していく、防具や武器は問題なし、体調面も問題無し、マガジンなどの備品も問題無し。

【赤雷】シリーズや【不壊】と【砲懐】は中に入ってからすぐに呼び出す予定だ。


「ヘレナも準備は大丈夫?」


「はい」


「山田さんは?」


「大丈夫です!」


全員準備は完了しているようだ、なら行くか。


扉に手をあてて先に進みたいと念じる、すると扉がゴゴゴッと音を立てて開いていく。


「また変わったボスエリアだな」


ボス部屋の中は左右を大きな断崖絶壁の山に挟まれた谷間で中心に川が通っており小さな一軒家の家がぽつぽつと建っているが他は道と草原だけだ。


海外でこういった場所が現実にありそうな感じだ、景色は綺麗だな。


「さて、ボスはどこかな」


風景を見て楽しむのもいいがここはボス部屋だ、敵の姿を探すがどこにも見えない。

今のうちに呼び出せる機体は全てだしておく、【赤雷】シリーズと【不壊】に【砲懐】それに偵察用のドローンも。

【機銃】は出したところでボス級が相手なら役には立ちそうにもないし出さないでおく。


「ヘレナ、偵察を───」


「マスター!敵です!」


ヘレナがそういった瞬間、初めに感じたのは自分に落ちる影、次に来たのは立っているのがやっとなほどの風圧、そして最後に大きな咆哮。


「グルァァァァァァァァ!」


「っ!まじかー最後にこれか」


太い手足、背中から生える大きな翼、顔はトカゲの様で額には鋭い角が伸びている。

西洋竜と言われる部類の物でよくアニメなどでみる魔物。


ドラゴン。


ありきたりな魔物だ、種族名や見た目などはアニメや漫画などでさんざんみた。だが実際に目の前にするとその迫力に言葉が出ない。

体高30メートル、全長は尻尾も入れると70メートルほどか?


ドラゴンには種類によってその強さに大きな差がある、とはいっても一番弱い物でもAランク、強い物になるとSランクからそれ以上になりもはやはかれる強さにおさまらなくなる。


「神薙さん!流石にドラゴン相手はまずいです!」


「山田さん?」


ドラゴンはこちらをひと睨みしたかと思うと再びどこかへと飛んで行った、おそらくこちらの様子を伺っているのだろう。


「ぱっと見になりますがあのドラゴンは恐らく【ドライグ】です、見た目は普通の赤い竜ですがその実力はAランクの中でも上位の部類になります。あれを倒すにはパーティ単位でないと危険です。幸いこのボス部屋は戻る事が可能なようですし一度考え直した方がいいと思います」


「なるほど。とりあえずヘレナ警戒態勢、いつでもボス部屋を出れるように準備」


「はい」


まずはどうするにしても警戒態勢をとるのが先決だ、ボスであるドラゴンは様子見の段階なのか遠くを飛んではいるがこちらからも見える位置を飛んでいる。


「山田さん、もし【ドライグ】に襲われてもあなた一人なら逃げれますか?」


「私は………逃げるだけなら一人でも大丈夫ですが」


「なら平気ですね」


「まさか戦うつもりですか?」


「はい」


「………………わかりました、私はあくまでも試験官として徹します。ですが万が一にでもどうしようもないと判断すれば介入しますからね」


「ありがとうございます」


彼女からすれば無謀な挑戦に見えるのだろう、まぁ客観的に見ても危ない事をしようとしている自覚はある。

だが、しょうがない。



【ドライグ】を一目見たときから思ったんだ、倒してみたいって。



ドラゴン討伐なんて凄く面白そうだ。


「ヘレナ、最初から全力でいくよ」


【格納庫】からバイクを取り出し乗り込みながらヘレナへと声をかける。


様子見なんてしない、一撃で殺すつもりでいく。


〝龍殺しの一撃〟を取り出しいつでも撃てる状態へと形態を移行しておく。


「わかりました、武装使用許可の承認を」


「承認」


【不壊】を改造したときと時同じくしてヘレナの武装を新しく作った、それを使用する。


「確認、【ヘレナ・フルウェポン】」


【ヘレナ・フルウェポン】

名前がちょっとアレだがこれ以上いいのが思いつかなかったから仕方ない、そのうち何かいいのを考えよう。


ヘレナの周りに【格納庫】へ入る時の渦がいくつも現れてそこから武装が出てくる。今現在の彼女の装備は肌にぴちっとした感じのボディアーマーだがその上からさらに装甲を取り付けられていく。


足の先から膝上まで覆うように装甲が装着され、両手には肘までの装甲、背中には大きなフライトユニット、頭にはティアラのようなヘッドギア。

体の中心のほとんどは装甲が無く、あるのは体の端のほうだけだ。


どう見てもアニメで出てくるような、それって防具として意味あるの?って感じの武装だがヘレナのコレはちゃんとこの形なのには理由がある。


元々ヘレナ専用人型機はそれだけで一種の武器と言えるほどの能力を持っている、なのでいわばこの武装の形はその能力をブーストするための物だ。


足と手はその機体の力で自分自身を壊さないための装甲の役割もあり、しかもこの装甲自体にも武器がついている。

背中のフライトユニットは機動力をさらに上げて、頭のティアラは………あれだけは何の能力もないが見た目的にね。



「それじゃぁ行くぞ」


「はい」


準備が出来たのでこちらから戦闘を仕掛ける、未だに【ドライグ】は飛んでいるのでまずは【不壊】の〝ミサイルランチャー〟での攻撃だ。


「これでは………流石に倒せないよね」


ミサイルだけで倒せるとは思っていないが少しでもダメージを与えたいとは思っていた、だがミサイルを撃たれた【ドライグ】は何度か避けたあと口からブレスを吐き、ミサイルを誘爆させて壊した。


「ガァ」


「来るぞ!」


敵対の意思ありと見たのか飛んでいた【ドライグ】がこちらを見て吠える、そしてそのまま滑空してきた。


それを見て俺とヘレナは左右に分かれて飛ぶ。


「グルゥガッ!」


「【不壊】が………」


滑空してきた【ドライグ】がそのまま【不壊】へと体当たりをかましていった。

ぶつかられた【不壊】は大きく吹き飛ばされたが損傷はそこまでひどくなさそうだ。


【ドライグ】はぶつかった衝撃で速度が落ちたのでそこを狙い〝龍殺しの一撃〟を撃つ。

しかし【ドライグ】は素早い身のこなしで〝龍殺しの一撃〟のビームを避ける。


「スピードが必要か。ヘレナ、隙を作るから仕留めてくれ」


『了解』


〝龍殺しの一撃〟を避けた【ドライグ】は今度は俺を標的にしたのかこちらへと飛んでくるのでバイクで逃げながらアサルトライフルを撃つ。


「【マハト】………でも無理か」


スキルアーツで威力をあげて撃つがそれでも効かない、弾を徹甲榴弾にしても効かず【魔法転換:銃弾(雷)】でも効かない。


いや、徹甲榴弾はちょっと嫌がっているな。これをメインにするか。


武器もアサルトライフルよりも一撃の威力がでるスナイパーライフルへと持ち替え撃っていく。


「ヘレナ、【不壊】は動かせるか?」


『はい、損傷は軽微です。しかしぶつかられた場合は後数回しか持たないでしょう』


「次の1回耐えれれば大丈夫だ、【不壊】と【砲懐】を並べて吹き飛ばしづらくしてくれ」


『了解』


「準備が終わったら教えてくれ。【不壊】の方へ近づける」


「ゴァァァァ!」


「あぶなっ!」


バイクのスピードには追い付けないのか【ドライグ】との距離は変わらないが相手はブレスを吐いてくる。


『マスター、準備が出来ました』


「よし、それじゃぁ行くぞ。衝突の衝撃で速度を落とすから仕留めてくれ」


『はい』


バイクを切り返し、空から滑空して【不壊】の方へと逃げる。【ドライグ】がこちらを狙うように時々撃つ手を休めず注意を引く。


「下を通る!」


バイクを最大速度まで上げて【不壊】と【砲懐】の下を通る。


「ゴギャァァァァ!!」


後ろで大きな衝突音が聞こえるか振り返っている暇はない、最大速度のまま通り過ぎ進んでいく。


「ヘレナ!」


『エネルギー解放【抜刀・村雨丸】』


「ギャォォォォォン」


ヘレナへと合図を出すとともに振り返る、そこには大質量のエネルギーで出来た刀を振り下ろす姿があった。

【ドライグ】の首を切り落とし静かにたたずむヘレナ。


「倒せたか」


「はい」


首の無い【ドライグ】を見て確実に死んだのを確認してから近づいていく。


「エネルギー残量はどうだ?」


「エネルギー残量9%、活動に支障はありませんが戦闘は不可能です」


「計算通りとはいえやはりギリギリは危ないか、はやめに撤収して充電に取り掛かろう」


「はい、武装解除」


武装を解除すると【格納庫】への渦が開きそこへ装甲が戻っていく、中々便利な機能だな。

ついでに【格納庫】から回収用のドローンなどを出していく。


「取り合えずこれでAランク試験もお終いだ、長かったけど楽しかったなぁ」


Aランク試験の目的はこれでお終いだ、後はゆっくり回収して帰ろう。


これで俺もドラゴンスレイヤーか………………ん?倒したのヘレナだからこの場合はヘレナがドラゴンスレイヤーか?でも俺も一緒に戦ったし同じ扱いになるのか?


………まぁいいか、なんでも。







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