第101話 【管理番号5061】
101.【管理番号5061】
GP集めと素材集めの2週間が過ぎて俺達は今、放棄ダンジョンへと来ていた。
「遠かったなぁ」
「かなり距離がありましたね」
山田さんと二人、同時にため息を吐いてしまう。それほどここに来るまで大変だった。
飛行機で北海道まで飛びそこから自動運転のタクシーで5時間、さらに途中からは道路が無いので徒歩に切り替え山道を歩きそうしてやっと着いたのがここだ。
「流石にこれだとまた来るのが大変だから何か考えないとまずい」
「そうですねぇ」
これから放棄ダンジョンを攻略するにあたって補給などで何度か戻る必要も出てくるだろう、その時の事を考えると毎回この移動は疲れる。
主に徒歩で2時間以上かかるのはめんどくさい。
「最寄りの街まででもいいからバイク使えないかな?」
「確かに使えたら楽かもしれないですね、ちょっと連絡してみます」
普段ダンジョン内でしか使っていないバイクだがそれが今回外で使えたら楽なのになって考えが声に出てしまったがどうやら山田さんには何か策があるようだ。
山田さんが携帯を取り出し電話をし始めたのでその間に人のいない村を観察する。
木造建築の家にツタが生えていて人がいなくなってからかなりの時が経っているのがわかる。放置された自転車に扉の無い家、農具なども置きっぱなしで持っていけなかったものは放置されているのだろう。
その代わりと言っては何だが自然豊かで雰囲気はいい感じだ、村の中には小川が流れており小さいが魚の姿も確認できる。
「神薙さん」
「はい」
電話をし終わった山田さんが戻ってきた。
「バイクの許可は出ませんでしたがその代わりヘリを出してもらう事になりました」
「ヘリ?」
「はい、ダンジョン協会で所有しているヘリコプターを1台まわしてもらうことになりました。利用する場合は事前に連絡するだけでいいみたいです」
「了解です、わざわざありがとうございます」
「いえいえ、試験のサポートするのも私の役目ですから」
「じゃぁ取り合えず【資格の塔】の時と同じで5日間はここに居る予定でいきましょう」
「わかりました、連絡しておきますね」
取り合えず【資格の塔】を攻略したときと同じ間隔で戻る様にしよう、それにしてもヘリコプターを飛ばしてくれるだなんてダンジョン協会は太っ腹だな。
「それじゃぁ準備していきますね」
「はい」
◇ ◇ ◇ ◇
放棄ダンジョン【管理番号5061】が放棄された理由は当時このほかにもダンジョンが沢山あり出てくる魔物も珍しいわけでもなく素材が何か特殊な物が出ると言うわけでもない至って普通と言えるダンジョンだったからなのだが。
なぜ今になって再開発が出てきたのかと言うとその普通のダンジョンと言うのが意外と数が少ないからだ。
ダンジョンが出現し始めた遥か昔、当時はダンジョンの出現という前代未聞の問題に対して世界がとった行動は大きく分けて2つ、ダンジョンを攻略するか放置するかだった。
放置するのは楽だった何もしなければいいのだから、それに比べて攻略を決めた人達は大変だった、何も情報が無い中多分そう言う感じだろうという憶測でダンジョン攻略を始めたのだから。
だがその行動は無駄では無かった、ダンジョンから産出される素材、武器防具にアイテムにと宝の山だったからだ。
それを見た放置を選んだ人達もダンジョン攻略をし始めるぐらいには魅力的な出来事だった。
しかし人手は限られている、あちこちに出現したダンジョンの全てを同時に攻略していくにはどうしても人が足りない。そうなったときにどのダンジョンを優先するべきか。
そこで選ばれたのが何かしら特徴があるダンジョンだ、他よりも少しいい素材が出るだとかそんな理由でいい、何か普通ではないダンジョンばかりが優先されていった結果、今俺がいるここの放棄されたダンジョンの様に特徴も何もない出てくる魔物も素材も宝箱の中身が一般的なダンジョンは放置された。
しかし時代が進むにつれて特徴のあるダンジョンにはある問題が出てくるようになった、攻略している探索者達の成長の仕方が歪になっているのだ。
極端な話になるが、例えば毒沼がダンジョン全体にいきわたっていて何かしらの手段がないと攻略できないような特殊なダンジョンがあるとする。
出てくる素材は現代の医療でも治療できないような病気を治してしまうほど強力な薬草、それを手に入れるために毒沼に耐えれるように【毒無効】などのスキルを手に入れた人がいたとしよう。
その人はそのダンジョンではどんな人よりも強いと言えるだろう、普通には攻略できないダンジョンを何も気にすることなく歩き回れるのだから。
だがそんな人でも普通で一般的と言われるダンジョンへ行けば何もできずに死んでしまう。
特殊なダンジョン専用と言えるスキル構成にステータス、探索者としての偏った知識、そんな物は普通のダンジョンでは通用しないのだから。
そこまで極端な人はいないかもしれないがそれに近い人は実際にいる。
ダンジョン協会からすれば何かに尖った探索者がいてもいいが沢山はいないほうがいいと考えている。
今だって普通と言えるダンジョンが全く無いかと言われるとそうでもないがダンジョン協会はもうちょっとそう言う普通なダンジョンの数自体を増やしたいみたいだ。
長々と話したが要するに、普通のダンジョンが少ないから試験ついでに普通だからと放棄されたダンジョンを攻略してもらって再開発しようと言う事だ。
そんな感じの事を山田さんに説明してもらった。
◇ ◇ ◇ ◇
「よし、まずはドローンで偵察から始めるよ」
「はい、マスター」
放棄ダンジョン【管理番号5061】の入り口で俺とヘレナと山田さんは待機していた、事前にある程度聞いていた情報によるとダンジョン内には魔物が溢れているだろうと言う事。
なのでまずは偵察からだ。
偵察用ドローンを飛ばしダンジョン内へと進めていく。
「中は洞窟型か、それに入ってすぐのところに魔物がいるのか」
目の前には空中に投影型のディスプレイを表示させていて、そこにドローンの映像をうつしている。
映像にはダンジョンへと入ってすぐの所にゴブリンが群れで動いているのが見える。
突然現れたドローンに驚いて威嚇しているゴブリンの群れの上を通りさらに奥へと進んでいく。
「ゴブリンにコボルト、オークにクモ系のもいるな」
よくここまで多種多様な魔物が揃った物だとおもうほど色々な種類の魔物がいるがそのどれもが一般的な魔物ばかりだ。
「あんまり広くないな」
ドローンを飛ばす事20分ほどで次の階層へと行く階段を発見した、どうやら1階層はそこまで広く無い様だ。
魔物が物凄い数密集しているがどれも強いとは言えない部類の魔物ばかりだ。
「ヘレナ、開始しよう」
「はい、作戦を開始します」
ある程度見れたので今回考えてきた作戦を開始する。
作戦名【敵の数が多いならこちらも数で押し切る】作戦だ。
【格納庫】の渦を出して2週間の間に集めた素材で作った機体を呼び出していく。
最初に出てきたのは銃に四つ脚が生えている見た目の機体だ、脚が4つあり土台がちょこんとついていてそこに銃が乗っかっている、そんな奇妙な機体が次々に出てきてダンジョン内へと入っていく。
今回使うのはアサルトライフルが取り付けてある機体だけだがこのほかにもショットガンやロケットランチャーなどを取り付けているタイプのも用意してある。
この機体に名前は特になく【機銃】と呼んでいる。
【機銃】は見た目の通りかなりの低コストで作られていてかかる費用と言えば銃本体ぐらいのものだ、足の部分の素材はダンジョンで取れるしGPもその時稼げるし実質無限に作れてしまう。
そんな【機銃】を100機ほど作った。
最初は1000機とか1万機作ってもいいなって思ったのだが脚をつくる素材があっても銃を買いそろえるGPに余裕がなかったので無理のない範囲で切りのいい数と言う事で100機に落ち着いた。
因みにこの【機銃】達は俺の装備している【群れの王の証】の効果で能力値が大幅にアップしているので見た目以上に強い。
「ふむふむ、十分戦えてるな」
ダンジョンへと突入していった【機銃】を追うように偵察用ドローンを飛ばし映像を確認する。
映像には【機銃】が一斉射撃でゴブリンの群れをなぎ倒していっているのが見える。
【機銃】は地面だけでなく壁や天井にも足を延ばしそこから射撃しているのでかなり一方的な戦いだ。
機体が軽いからこそ天井や壁にはりついて3次元的な動きがなせる。
ドローンの映像を眺めながらさらに次を呼び出していく、今回作ったのは他にもある。
【格納庫】の渦から次に出てきたのはバイクほどの大きさのこちらも四つ脚で先ほどの【機銃】と違うのは攻撃手段である銃がついていないところだろうか。銃の代わりに四角い大きな箱が乗っている。
それが10機出てきた。
四つ脚箱がダンジョンへと入っていったのを見てドローン映像へと視線を切り替える。
「うまく機能しているな」
「はい」
映像の中では先ほど入っていった四つ脚箱が【機銃】へと機械の腕を伸ばしマガジンの交換を行っている。
【補給機】それが作った機体だ、主に【機銃】のマガジンの交換などをするように作った。1つの【補給機】にマガジンが50個それが10機で500マガジン。さらに全ての【補給機】のマガジンが無くなった場合に備えて【格納庫】にはさらに【補給機】が10機控えてある。
待機している【補給機】と交代している間に戻った機体にマガジンを補給する感じで途切れないようにしてある。
マガジンは今のところ普通の物だ、GPに余裕が出来次第にはなるが空間拡張されたやつへと追々変更していくつもりだ。
「マスター、そろそろ回収用ドローンを出しますね」
「あ、そうか回収しないとな」
ヘレナに言われてすぐに【格納庫】から回収用ドローンを飛ばす、映像で見てるだけだから気づかなかったが倒したゴブリンなどが邪魔で【機銃】の進みが遅くなっているようだ。
「そろそろ俺達も中へ入るか」
【機銃】がダンジョンへと突入してから結構な時間が経った、さすがにもう入口付近は安全だろう。
ドローンからの映像をヘルメット内のディスプレイへと表示を切り替え出していたのもを片づけていく。
「それじゃぁ行こうか」
「はい」
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