第98話 【資格の塔】 #2

98.【資格の塔】 #2








「ついに来たか………」


【資格の塔】2日目、【野営地】でしっかりと休み英気を養って攻略再開だ。


20階層目の課題は【条件:ゴブリンシャーマン×1の討伐】と書いてある、ここにきて今まで避けてきた魔法持ちの敵の出現だ。

しかもこの書き方的に1階の時と同じで進んだらすぐにいるパターンっぽい。


今まで魔法持ちの敵は出来るだけ避けてきた、出会っていたとしても魔法を撃つ暇を与えないように倒してきた。

だが今回ばかりは魔法攻撃をうける覚悟がいりそうだな、となりそうだがそうはならないなぜなら───


「というわけで、ヘレナ出番だ」


「はい」


「どぅえぇっ!だ、誰ですか!?」


【格納庫】スキルを使い渦からヘレナ専用人型機とこういう時があるだろうなと思い作っていた機体を呼び出す。


「神薙さんってソロじゃなかったんですか!?」


「ソロですよ、ヘレナは俺のスキルですね」


「スキルですか?なるほど………人造人間を作り出すようなスキルと言う事ですね?珍しいですがそういったスキルがあると言う事は知っています」


「あー、そうですね。そんな感じです」


何やら山田さんには心当たりがあるらしいが全然違うんだよな、詳しく説明するのがめんどくさいので一人で納得しているなら話を合わせておこう。

魔法契約で俺のスキルを知っても大丈夫だと分かっていても全部説明する必要もない。


というわけで、ここからはヘレナも一緒に攻略する。そして新しく製作した機体の【蒼雷】だ、見た目は【赤雷】と同じなのだがボディの素材が魔法防御力の高い物になっているのと全体的に青いカラーリングを施してある。


魔法防御よりにしたからと言って物理的に弱くなるかと言われるとそうではなく、というかそもそも魔法防御力がある素材は物理攻撃力に強い素材にプラスされているものが大半なので物理的にも【赤雷】より強い。

ファンタジー素材的な話をするなら似たようなので言うとミスリルとかそう言うのだな。


因みに俺とヘレナの着ている防具はこれよりはるかに物理も魔法も防御力が高い、だからと言ってうける気にはならないので盾役を作った。


【蒼雷】の武装は機関銃がひとつに前面に盾の役割がある装甲が何枚か重なってつけられている。

大きさは【赤雷】よりも大きくなっており【蒼雷】を横は人が4人ほどしゃがめば隠れれるほど、後ろは2人ぐらいだろうか。

そう考えるともうほとんど車だな。


「それじゃぁいくか」


「はい」


ヘレナと俺の装備確認をしてから【蒼雷】を先頭にして進んでいく。扉を越えて中へ入るとそこには杖を持ったゴブリンシャーマンが………吹っ飛んでいった。


「ギャ?ギャギャ!!ギャッ──」


「ヘレナさん?」


「はい」


端的に今起こった事を説明すると、【蒼雷】を先頭に中へ入る→俺がゴブリンシャーマンの姿を確認する→次の瞬間には【蒼雷】がゴブリンシャーマンをひき殺していた。


「何故に?」


「隙だらけだったもので」


「なるほど、それなら仕方ないか」


「はい、仕方ないです」


当然ながら【蒼雷】を操作しているのはヘレナだ、そのヘレナが攻撃するチャンスを逃さなかっただけという事だ。文句の言いようもない、仕方ない。


ただ、魔法攻撃をついに見る事になるのか、とか。どんなの使うんだろうな?とか。このために用意しておいたんだよな【蒼雷】って、とか。こう、色々思った気持ちをどこへもっていけばいいのか。


まぁ今回は敵が1体だけだったから瞬殺だっただけで、先に進めばもっと多く出てくるだろう。多分。

その時になればどうしようもなく魔法攻撃をうけることになるだろう。


「先に進むか」


「はい」


気を取り直して、先に進もう。






◇  ◇  ◇  ◇






【資格の塔】100階を目指して攻略を開始してから10日が経った、現在の攻略階層は62階。


50階を越えてからエリアがフィールド型になり、条件もただの討伐でも探すのが大変になったり、採取でも目的の物がどこにあるのか探すのに時間がかかったりと思ったより進んでいない。

勿論偵察用ドローンを飛ばしたし【ゴランデル王国】を攻略したときに使ったクモ型のも全部使ってこれだ。


後は10日の間に休みを2日入れてあるので実質8日しかダンジョンに行ってない。

俺は潜りっぱなしでもいいのだけれど、それを山田さんにも強要するのはどうかなと思い彼女と話してそう決めた。


最初は潜りっぱなしでもいいです、と言ってはいたけれどやっぱり山田さんの事を考えると俺の気持ち的にやだなとおもったのでそう決着がついた。


他にも休みを入れた理由は体を休めるだけじゃなくて。山田さんは俺の【野営地】というスキルの事を知らなかったので食料は十分に持って来ていても替えの服が無かった。

それを補充するという意味でも休みがあって丁度良かったのかもしれない。


そういえば20階層で肩透かしを食らった魔法を使う敵についてだけれど、あの後30階層を過ぎたあたりから普通に敵として出てくるようになって魔法攻撃を改めてちゃんと見る事となった。


感想としては思ったよりしょぼかった、火の玉が飛んでくるのは見てて面白かったが【蒼雷】が全部防いでくれたし脅威を全く感じなかった。


恐らく敵の魔法スキル的な物のレベルが低かったからしょぼかっただけかもしれない、ダンジョン探索している人の配信とかだと結構派手なのを見るからね。


後は次の階層に進む条件も複雑なのが増えてきた。


35階

【条件:エリア内のどこかにあるスイッチ3つ全てを押す】


とかだったり。


47階

【条件:エリア内にいるオーガを倒し札×1を手に入れる】


とかだったり、しかもこの条件倒して札を手に入れると書いてあるがドロップするかどうかは運なので人によっては百体倒さないと札がでなかったりするらしい。

俺の場合は16体目に出た。


他にも。


49階

【条件:エリア内のどこかにいる影狼×2を同時に倒す】



とか言うめんどくさいのも条件に出てくるようになった。倒すだけなら数も少ないし簡単そうに見えるが同時と言うのと30階層を越えてからは目標の敵以外にも普通の敵が出てくるようになったので意外と大変だ。


50階からはフィールド型になり鬱蒼とした森になり、端から端まで歩いて数時間かかるのが普通なぐらいになっていった。

条件も少し変化して。



52階

【条件:エリア内のどこかにあるゴブリンの巣×1の破壊】


そんな風にただの討伐でも規模が大きくなってきた。一見ソロで巣を破壊するのは大変そうにも見えるが………俺にはドローン爆撃があるので空から爆弾を落として安全圏から破壊した。


因みに、巣を爆弾で破壊したときに山田さんが絶句していた。どうやら想像していた攻略法とは違っていたようだ。


そんなこんなで今まさに攻略を開始しようとしている62階だが。


【条件:エリア内のどこかにあるオークの巣×2の破壊】


となっている。


「今度はオークの巣か」


「また爆撃しますか?」


「んー」


巣の大きさにもよるが爆撃に使う爆薬の量的に結構GP使うんだよな、1回の巣の破壊におよそ250万GPほど。

そして今現在の残りGPは3600万ほどになる。


【資格の塔】では素材が残らないのでGPを補充しづらくこのままだと減り続けるだけだ、なのでこの先の事を考えると別の手を考えたい。



「節約したいから〝龍殺しの一撃〟を使おう」


「なるほど、わかりました」


1日1回消費を気にせず撃てる破壊光線と考えれば〝龍殺しの一撃〟はかなり優秀だ、ただ使う場合は考えて撃たないと上手く倒せないだろう。


「まずは巣を見つけようか」


「はい、偵察用ドローンを飛ばします」


62階のフィールドは森があり崖があり大きな湖も見える広大な土地だ、見える範囲で飛んでいる魔物は見えないのでドローンを使用しても大丈夫だろう。空から探せば早めに見つかるはずだ。


「というわけで巣が見つかるまでは休憩しましょうか」


「はい、ありがとうございます」


周囲の警戒用に何機か偵察用ドローンを残し山田さんへと声をかける、基本的に彼女は何もしないけれどだからといって休憩が必要無いというわけでもない。こうして時々様子を見るようにしている。


見るようにしているのだが山田さんは今回の試験を任されるだけあって見た目以上に体力があるようだ。今もぱっと見は全然平気そうに見える。



「マスター、見つけました。ここから4キロ先にある川の近くです」


「了解」


【気配感知】を気にかけつつその辺の岩に座って休憩していたところから立ち上がる。


「ヘレナ、空に魔物は見える?」


「いいえ、どうやらこのフィールドには空を飛ぶ魔物はいないようです」


「ならバイクで行くか」


飛んでいても平気なら飛んで行こう、【格納庫】からバイクを取り出し乗ってから飛行モードへと変形させる。


「山田さん、後ろに乗ってください」


「は、はい」


「ヘレナは悪いけど飛んでもらえる?」


「了解」


山田さんを置いてくわけにもいかないのでバイクの後ろへと乗せる、だがそうするとヘレナの場所がない、今回は悪いけど自力で飛んでもらうしかない。

この先も3人で移動するならバイクのサイドカーを作るべきかもしれないな。一応作る予定でいよう。


山田さんとバイクに乗りヘレナは先導するように前を飛んでもらう、その間に〝龍殺しの一撃〟を取り出しておいて用意しておく。


「マスター、見えてきました。あそこです」


ヘレナがそう言うと同時にヘルメット内のディスプレイに目標が強調表示される。


「あそこか、どこから撃てば一撃でまとめて倒せそう?」


「少しお待ちください………計算完了。マスター、ディスプレイに表示した位置からお願いします」


「了解」


絶対に1撃で倒さないといけないってわけじゃないから適当に撃ってもいいかもしれないがどうせなら1撃で倒したいじゃん?というわけで計算をヘレナに任せる。


「山田さん、少し離れていてください」


「はい」


ヘルメット内のディスプレイに表示された場所まで移動して山田さんには少し下がっていてもらう、近くにいても平気だとは思うけれど一応ね。


「このぐらいかな」


ディスプレイに表示されたカーソルに合わせて〝龍殺しの一撃〟を構える、目の前は木々が覆い茂っており巣が見えないがヘレナの計算を信じるしかない。


〝龍殺しの一撃〟を構えた瞬間銃身が4つに分かれ回転し始める、そこにエネルギーが溜まっていく。

どんどんとエネルギーが収束していきこれ以上溜まらないという所まできたらトリガーを引く。


次の瞬間見えるのはものすごい音と同時に伸びていく光の柱、5秒ほど照射が続きふっと光が消える。


「どう?」


「はい、巣の破壊を確認しました」


どうやら無事に巣は破壊出来たようだ、爆撃するよりこっちのほうが楽だな。ただまぁチャージ分を考えるとそんなに撃てないが。


「じゃぁもう一個の巣へ行こうか」


「はい、既に場所は見つけてあります」


「山田さん?行きますよ」


「はいっ!」


「どうかしましたか?」


「いえっ!なんでもないです!」


「そうですか、それじゃぁ飛びますね」


バイクに乗り込み山田さんを乗せようと振り返ると目を見開き固まっている山田さんの姿があった、声をかけるとうわずった返事が聞こえてくる。

彼女には〝龍殺しの一撃〟は衝撃的だったかもしれないが慣れてもらうしかない。


次の巣も同様に破壊する予定だからね。






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