第95話 戦闘力

95.戦闘力









「どこで覚えてきたんだそれ………」


ヘレナ専用人型機が完成してから2日後、俺達はダンジョンへと来ている。

オークションが終わってからなんだかんだ言ってこれてなかったので気がつけば1ヵ月ぶりぐらいのダンジョン探索になる。


来ているのはBランクの【骨踊る墓場】という場所で、名前の通り主にスケルトンが出てくるダンジョンだ。


ここを選んだ理由は人型の敵で丁度よさそうなのと墓場という場所が比較的開けたフィールド型のダンジョンで障害物が少なく動きやすいという点に墓場というと暗い場所をイメージするがここはダンジョン外と明るさが連動しており昼間に来れば明るい場所で戦える。

後はここにはスケルトン系しかでないのでゾンビなどの臭いがやばいやつがでてこないのも決め手だ。


そんなダンジョンで今現在進行形で目の前で戦っているのはヘレナだ。

もちろん【不壊】や【赤雷】ではなく今回つくったヘレナ専用人型機で戦っている。


ハンドガンを2丁持ち、銃剣をつけてまるで何かの舞を踊っているかのように戦っている。

腕をふり遠心力を乗せて銃剣で切りつけつつ反対側の敵には銃を撃ち、そのまま流れで別のスケルトンへと当て身をして押し倒し銃を撃ってきっちりと倒す。


俺も前に似たような事をした覚えがある、2丁拳銃で近接戦闘を試したことがあるがあれはステータスに物をいわせてそれっぽい動きをしただけの真似事だった。

だが今目の前で行われているヘレナの戦闘は明らかに何かの型のように見える、いったいどこでそんな武術を覚えたのか。


「終わりましたよマスター」


「うん、お疲れ。ところでヘレナはその動きどこで覚えたの?」


「これですか?」


スケルトンを倒し終わったヘレナにそう聞くと彼女は素早い動きで型のような物を見せてくれる。


「そう、それ。何だか武術っぽいよねそれ」


「はい、これは私が編み出した2丁拳銃用の武術です」


「編み出したの?」


「はい、映画やアニメから着想を得て私なりに創ってみました」


「へぇ凄いな………」


「言うなればこれは【銃型】」


「【銃型】ってそれ………字面が違うだけでリベリ〇ンじゃん」


「はい」


映画に影響されちゃったか-


そうはいってもだ、そもそも何かに影響されたとしてもそれを形にして実際使えるようにするっていうのはとても難しい事だ。

それが簡単にできるのはヘレナだからか、俺とかとは違い自分の体をまさしく機械のように正確に動かせるわけだからな。


「まぁそれもいいけど普通に長物も使ってね」


近接で戦闘をするという事はそれだけ身を危険にさらすと言う事だからな、その分アサルトライフルなどの方が遠距離から安全に戦える。

ヘレナの体は機械でパーツの素材も予備があるからとは言っても壊れるところは見たくない。


勿論のことだがヘレナは防具を着ている、流石にダンジョンへと行くのに普段着のような恰好ではいかない。

ヘレナ専用人型機はそのボディはもちろんかなりいい素材を使っているので素での防御力はある方だと思う、ヘレナの体と同じ素材の破片を使って耐久力を試したのだがアサルトライフルの弾をはじき、スナイパーライフルの弾丸でも少しへこむ程度でC4で爆発させてみても表面が少し焦げる程度と硬い事が分かった。


これでもボディとしての利便性を落とさないようにしているのでヘレナによると防具としての強度は期待できないと言っていた。


ヘレナ用の防具は見た目がとてもSFチックだ、ぴちっとしたボディアーマーにマガジンベルトなどを付けた感じだ。

頭部は普段そのままだが戦闘時には首の後ろから防具が伸びてきてフルフェイスになる。


そしてまた俺の防具も似たような物に変更してある、ヘレナが今までのより強化したいとのことで同じ様に今の俺はSFチックなボディアーマーになっている。


【ヘレスティーナMarkII】


以前の物はロボット感の強い防具だったがそれに比べると今の装備はスッキリとした見た目になっている。

見た感じは防御大丈夫そうか?って感じだがヘレナ曰く初代【ヘレスティーナ】に比べると何十倍も防御力が上がっているらしい。



「それでは次の武装を試したいと思います」


「了解」


ヘレナにはスキルが無いので攻撃手段の数を増やすには自前でどうにかするしかなかった、なので今回いくつかヘレナ専用に武装を作った。

まぁ作ったのはヘレナなんだがお互いにアイデアを出し合って武装を考えた。


「丁度良くスケルトンが3体来ました、行きます。【武装展開】」


前から来たスケルトン3体、どれも鎧を着ていて手には剣や槍などの武器を持っている。

もっとランクの低い所なら何も装備をつけていないスケルトンが出てくるのだがここはBランクダンジョンなので結構しっかりした装備でやってくる。


【武装展開】とヘレナが呟くと背中から三角形の小さい何かが飛び出していく。

飛び出していった武装は全部で5つ、それぞれが不規則に動きながら飛んでいる。


まごうことなき【ファン〇ル】である。


【ファン〇ル】というとめんどくさいのでヘレナが考えた名前【飛翔機】と呼ぶが。

【飛翔機】がそれぞれ不規則に動きながらスケルトンへと近づいていき一定の距離まで近づくと攻撃を開始した。


5つのうち3つは射撃を開始して、残り2つが敵へとさらに近づきぶつかりにいく、スケルトン3体は【飛翔機】の不規則な動きと止まらない攻撃にすぐに沈黙した。


「いい感じだね」


「はい」


【飛翔機】はヘレナ専用の武装で最大5つある機械を彼女が制御して操作している、この武装はヘレナがAIだからこそできる武器だ。

素材は防具と同じ物を用意して、動力源として【ラドナクリスタル】を使用している。

銃弾も実弾というよりはエネルギー系の弾で魔法寄りになっているので弾数を気にすることも無くエネルギーが尽きない限り撃ち続けられる、とはいっても【飛翔機】1つにつき防具から離れていた場合は500発まででその後防具に戻りチャージが終わるとまた500発離れた状態で撃つことが出来る。


「お、もう次が来たぞ」


「ですね、次の武装を試します」


スケルトンを倒したと思ったらまたすぐに次のスケルトンがやってきた、今度は2体だけだ。

ヘレナが構えをとると背中から青い粒子がこぼれ出てくる。


次の瞬間ヘレナが飛ぶ、それはジャンプで飛んだというわけでは無く実際に空を飛んでいる状態だ。

空を飛んだヘレナはそのままスケルトンへと突撃していく、その途中でヘレナ専用人型機の腕が開きブレードが飛び出す。


スケルトンとすれ違いざまに腕を振り2体を切り裂いていく、その一撃は鎧を着たスケルトンを一刀両断するほどだ。



「すごい威力だな」


「はい、これなら使えそうです」


飛んで戻ってきたヘレナはそう言いつつ飛び出していたブレードを腕へとしまう。

先ほどの武装はヘレナのボディから出す事の出来るエネルギー系の剣だ、わざわざ体から出すために防具もそれ専用のギミックを仕込んである。


倒したスケルトンへ近づくと切断面が赤熱していてその威力のほどがうかがえる。


「取り合えずこんなものか?」


「そうですね、他にも試したい物はありますが今すぐというわけでもないので大丈夫です」


「了解、それじゃぁボスだけ倒して帰ろう」


「はい」


取り合えず今日はこんなもんかな。






◇  ◇  ◇  ◇






「Aランク試験は、1週間後か」


【骨踊る墓場】から数日後、家のリビングのソファに座り届いたメールを眺める、差出人はダンジョン協会、内容はAランク試験の日時についてだ。


今から1週間後の日曜日までに試験を受けるかどうかの最終確認を済ませたらその後試験内容が告げられるらしい。


Aランクとは実質今の最高ランクだ、Sランクもあるがあれは物語の主人公がなるような特別な何かが無いとないれないランクだから俺からすれば関係ない話しだ。

ここまでのランクになると結構な頻度でテレビに出ているのを見たりする、どこどこのダンジョンを攻略しただとか何々を発見しただとか、そういうのでよくみる。


Bランクの人でもたまにニュースになっているのを見るけれど、そう考えると俺って特に何もなくランク上がっていっているんだな。


Aランクかぁ………………もし試験がうまくいったらどうしようか、まだ合格もしていない先の事を考える意味はあまりない気もするがどうしても考えてしまう。

そういえばランクが上がると特殊なダンジョンへ行けるんだっけ、そこへ行ってみるのもいいかもしれないなぁ。



「ヘレナはしたい事とかある?」


「どうしたんですか?突然」


一人で考えていても仕方ないので部屋に一緒にいたヘレナへと声をかけるが突然すぎて何を言っているのか伝わっていないようだ、そりゃそうか。


「いや、もうすぐAランク試験だけれどそれが終わったら何しようかなって考えてて。ヘレナはしたい事とか無いの?」


「したい事ですか………今現在進行形でやりたい事は出来ていますが、もう少し【ラドナクリスタル】系の素材が欲しいですね、予備として」


「素材か、そういえばだいぶ減ってたんだっけまた取りに行かないとね」


「はい」


そう言うヘレナは現在進行形で料理をしている、ヘレナが人型の体を手に入れてから何かとあれこれ家事をやりたがる。

ある程度すると満足するのかやめていくのだが料理はなぜか続いている。


「今日は何作るの?」


「唐揚げとスナップエンドウのサラダです」


「おー、楽しみ」


「はい」


この間は筑前煮でその次がとんかつだっけ、他にも結構色んな種類の料理を作ってくれるんだよな。同じ料理でもレシピが違ったりと楽しめている。


「マスター、もうすぐ出来上がるのでお皿を用意してもらえますか?」


「了解」


取り合えず、あれもこれも全部。試験が終わってからだな、準備だけはしっかりしておこう。


「いい匂いだ」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る