第92話 オークション
92.オークション
「聖騎士の剣ねぇ、めちゃくちゃかっこいいなこれ」
オークションが開始してから10分ほどが経ち色んな物が紹介されていくのを見ているが特にこれといった欲しい物もないのでポテチを食べながら眺めている。
個室から見える舞台の上ではいくつものブースが立ち並んでおりそこで進行役の人がそれぞれ出品物を紹介している。
どこで手に入れた物か、どういった効果の物か、ひとつひとつ丁寧に詳しく話している。
ブースは武器、防具、アクセサリーなど種類別で分かれており自分が見たい物を見る感じだ。
なぜ同時進行でやっているのかというと出品数がかなり多く途轍もない量があるからだ、進行役を1人だけにしてしまうと何時間かかるか分からないほどにはある。
今のわかれている状態でも予定では3時間かかる事になっている。
空中に投影されている映像はいくつにも分ける事ができるのでそれぞれのブースを同時に見る事は一応可能なのだが映像を同時にみる能力はないので現実的じゃない。
複数を同時に見れるとかそういったスキルがあれば見れるのかな?
今紹介されているのは事前にこういった物が出ますよというのが告知されている出品物になる。
事前に知らされている物だけでなくシークレット枠という何が出るのか隠されている出品物も後半にあるらしく楽しみだ。
そして今見ているのは武器の出品物で【聖騎士の剣】と呼ばれる物だ、効果としては一定範囲を清める【浄化】というスキルを装備中使えるのと【闇属性】への抵抗力アップに武器固有スキルである【ホーリー】という聖属性の魔法攻撃が使える、あと見た目がすごいかっこいい。
その次に出てきたのは【聖騎士の盾】、先ほどの剣と同じシリーズらしく他にも鎧などがあるみたいだ。果たして盾は武器枠なのか防具枠なのかという問題は気になる所だがここでは武器扱いのようだ。
「新井さんそっちは何かいいのありました?」
「そうだねぇ、これが気になっているかな?」
隣で別のブースを見ていた新井さんに声をかける、どうやら気になっていたのがあるみたいで映像をこちらへと飛ばして見せてくれる。
「気持ち美味しくなるかもしれないお皿?何ですかこれ」
映像に映っているのは深めのお皿で白地に青い模様が入っている物だ、名前は【美味しくなるかも?】というよくわからない名前で効果としてはこのお皿に入れた料理は気持ち美味しくなるらしい。
「効果が面白いと思ってね、それに開始金額も安いから」
オークションの出品物にはそれぞれ開始金額が設定されている、例えばさっきの【聖騎士の剣】なら開始金額は3000万からだった、そこから最終的には1億2千万ほどで落札されていた。
そして新井さんが見せてくれた【美味しくなるかも?】は開始金額10万からとかなり安い、オークションだから高価な物ばかりかと思っていたがこれを見る限りそうでもないみたいだ。
「そういう神薙君の方は何か気になったのはあった?」
「んー、これとかですかね?」
「何々?【七聖盾】?自動防御してくれる浮遊する盾か、面白いねこれも」
この後に出てくる予定の【七聖盾】、これは発動すると使用者の周りを浮遊して敵の攻撃を自動で防御するという物なのだがそれだけでなく使用者の耐久力も上げてくれる。
敵の攻撃を防御した盾は壊れてしまうが時間で再び盾が出てくるという物だ。
開始金額は700万、ちょっといいなと思ったけどそこまで欲しい物でもない。
「お、これは欲しいなちょっと参加してみるよ」
「見てていいですか?」
「もちろん」
どうやら新井さんがオークションに参加するようだ、今現在進行形で紹介されているのは【従魔の首輪】という物でどうやらテイムした魔獣や召喚獣に付ける事でステータスアップの効果があるようだ。
開始金額は300万、安い物ではないが召喚獣がメインである新井さんにとってはいい物かもしれない。
「それではこちら【従魔の首輪】の開始金額は300万になります皆様奮ってご参加ください。それではスタート、310、350、400、450」
開始してすぐに【従魔の首輪】は450万まで上がっていった、基本的に値段を上げていくのは10万単位でほとんどの人が50万づつ上げていっている。
一応1万円単位から上げる事は可能なのだがこれが普通なのかマナーなのかわからないが細かく上げていく事はないようだ。
「500、550………もうありませんか?おっとここで650入りました」
新井さんを見ていると500で参加してすぐに550があがりその後で650万になったことでさらに上げるか悩んでいるようで手が止まっている。
「もう、ありませんか?………………っとここで700が入りました。どうやらここまでのようです700で落札になります!」
「ふぅ………」
「おめでとうございます」
「ありがとう、どうやらぎりぎりいけたみたいだね」
どうやら新井さんがうまい事競り落とせたようだ、このオークションではネットの物とは違い終了時間が進行役の人に一存されている、なのでどのタイミングで終わるかがわからない。
とはいってもある程度流れなどがあるので終わりを読む事は出来るのだがそれでも確実ではない。
【従魔の首輪】が700万で安いのか高いのか分からないが新井さんは満足そうなので構わないんだろう。
新井さんはそのまま入金も済ませていく、この後少しすると落札した商品がこの部屋に届く事になっている。
オークションで落札した物は手元に届けてもらうか指定された場所へ運んでもらうかを選べる、ただし運んでもらう場合は数日かかる。
今回落札した物は首輪で小さい物だし部屋で受け取る事にしたようだ。
「あ、これ俺のやつだ」
「言ってたやつかい?確か魔金だったっけ」
「ですです、何やら普通の金とは違うらしくて珍しい物だからと出品する事になって」
素材ブースに出てきたのは俺が倒した【ゴランデル王国】のゴブリンキングが住んでいた城にあった宝物庫の宝だ。
8畳ほどの部屋ならパンパンになるぐらいある金貨に金の盃にお皿にネックレスなどのアクセサリーと装飾がやたらとキラキラした剣や防具などいっぱいある。それをまとめて一つで出品してある。
ホントなら呪われていたアレこれもあったのだが持ちたくなかったので放置してきている、おそらくあの瓦礫の下敷きになっていただろうけど探すことも無く帰った。
「おおぅ、すごいギラギラだ………」
「眩しいね………」
台車に乗せられて運ばれてきた宝物は誰かが磨いたのか輝きが手に入れたときよりすごい気がする、照明もあるし余計に眩しい。
因みにあれ全部で開始金額は5億からだ。
うん、最初聞いたときはマジで?って思った。正直貴金属に詳しいわけでもないし相場なんて知らないが高いと思う。
一応ある程度は自分で調べた、魔金とはどういう物なのか。
何でも魔道具を作る際の触媒になる事に加えて美術的価値もあるらしい、一体どういうところに美術的価値があるのかさっぱりだが需要はあるようだ。
触媒については調べたけどよくわからなかったどうやら魔道具を作る際にどこかしらの素材になるみたいだが作り方などは秘匿されているので使うという事しかわからなかった。
「わぁ、すごい値段上がっていく………」
「これは帰りに焼肉でもおごってもらわないといけないね」
【ゴランデル王国の宝物】と紹介された魔金の山は5億からスタートしてすぐに1億か1000万単位で上がっていき今は9億にまで上がっている。
焼肉なんて余裕で奢れる。
「12億か………ちょっと逆に怖くなってきた」
最終的に【ゴランデル王国の宝物】は12億で落札された、金額が大きすぎて現実味がない。
12億、ここから手数料が1割引かれてから手元に入ってくる。税金などはこの手数料に含まれるので後々に税金を払わないといけないという事もない。
なぜこんなにも優遇されているのか、答えは単純でここに課税してしまうと誰も売らなくなってしまうからだ。
せっかく頑張って倒して頑張って探索して手に入れた物を売ってもほとんど税金で持っていかれたとしよう、それで一体だれが売ろうと思うのか。
ダンジョンが出来て最初の方は普通に課税されていたそうだが歴史の教科書にのるほどの事件が起きてからは今のほぼ課税の無い状況になっている。
◇ ◇ ◇ ◇
「やっとシークレット枠か」
オークションが始まってから2時間が経ち事前に情報があった出品物が全て落札されていった。
ここからは情報の全くないシークレット枠になるのだが、こういった物はどこまで隠していてもある程度噂というのはまわってしまうものだ。
あれが出品されるらしいよ、とか。そういった感じの物だ。
「さて、シークレット枠最初の商品はこちら【聖剣リーリア】です。【試練の迷宮】から出土されたこちらの剣は聖剣の名の通り途轍もない効果を持ち合わせております。まず使用者には<上級>【身体強化】Lv:10に<上級>【全属性耐性】Lv:10、<上級>【自然治癒】Lv:10、<上級>【剣術】Lv:10、さらには武器固有技である【守護天使】が使えます」
聖剣、言わずも知れた物語などでよく出てくる強力な武器だ。有名どころで言えば何個か名前が思いつくだろうけれどそれ以外にも聖剣と名のつく武器がダンジョンから色々と出てきている。
聖剣の中でもランクがあるらしく今出品されているのはランクが低い方だろうけれどそれでも効果が凄まじい。
ついている効果は全てレベルキャップしていて固有技もついている、ちなみに武器と同じスキルを持っている場合、元々あったスキルに武器のスキルが上乗せされて強化されるので同じスキルがある場合単純に物凄く強化される。
「最低落札価格5億から開始となります」
聖剣のオークションが開始してすぐに値段が上がっていく、6億、7億、8億、一気に10億と驚くほどみんな積極的だ。
「凄い値段になっていってますね」
「驚きだね………」
こうして話している間にもどんどんと値段は上がっていきついには20億を超えた。
「25億!25億入りました!他にはありませんか?28億!28億入りました!」
とんでもない金額になっていってるな………
最終的に【聖剣リーリア】は30億で落札されていった。
「続いてはこちら、【ゴルディア】と【シルディア】になります。このつがいが出品されるのはおよそ50年ぶりとなりかなり希少な物となっております」
進行役がそう言うと出てきたのはあの金さん銀さんだ、そんな名前だったんだな。
「あれは神薙君がオークションに来ることになったやつか、でかいね」
「はい、こうしてみるとでかいですねあれ」
舞台の上には立ち上がった状態で固定された金さん銀さんがいる、体高6メートルに角は3メートルもあるので存在感がすごい。
「剥製にして飾るもよし、素材としての使い道も多いでしょう。最低落札価格は10億になります」
俺にとっての本命のオークションが始まった、開始してすぐに1億づつ値段が上がっていく。
「11億!12億!15億!20億!まだまだあがります!25億!30億!」
やばいやばい、めっちゃ値段上がっていっている。金さん銀さんの価値を知らないから分からないのだがこれが普通なのか?
「31億!32億!………ありませんか?33億!34億!………………34億で落札になります!」
「ふぅ………」
思わず息をのんでしまっていた、まさかここまで値段が上がっていくとは。
「34億かぁ、とんでもないですね………」
「すごいねぇ」
魔金と合わせて46億か………こんなにお金持ってどうしよう?使い道が分からない。
今回のオークションにこのお金を使うのは無理だし、今度何か買い物でもするか?
今探索者用の口座にある5億はオークションで使い切ってもいいかもしれないな。
取り合えずちょっと興奮が冷めやらぬなのでボーっとしよう。
46億かぁ………………
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