第91話 オークション開催
91.オークション開催
「す、すごい会場だね」
「確かに驚きの広さですね………」
人が5人ほどは入れる個室に前面にはマジックミラーが取り付けられていて部屋の中が見えないようになっている、厳密にはマジックミラーではなくそういう性質を持った魔物の素材らしいのだが使い方が同じだしみんなそう呼んでいる。
マジックミラーの外にはどこかのスタジアムのように真ん中に舞台があり円形状にここと同じ個室がいくつも並んでいる。
「新井さん、これ見て下さいよ。ご飯食べ放題ですよ」
「わぁ、ほんとだ。しかも召喚獣用のフードまである」
部屋についている投影型ディスプレイで食事メニューを眺めていく、一般的なファストフードからレストランにあるような食事までメニューが並んでおりそのどれもが無料で提供される。
召喚獣などの魔獣用のペットフードも豊富な種類があり運営の本気度がうかがえる。
「神薙君は何か飲むかい?お茶を頼もうと思うんだけれどついでに頼むよ?」
「じゃぁコーラをお願いします」
「了解、後ついでにムンちゃんとランちゃん用にこれも頼んでみようかな?」
新井さんが楽しそうに選んでいるのを横で眺めている。
今回やって来たここは以前から予定していたオークションの会場だ、国とダンジョン協会が協力して開催されるこのオークション、規模が想像以上だった。
一応事前にある程度の下調べはしておいたのだが自分の眼で見ると圧倒される。
オークションの事で驚いたことは色々あるがその中でも特に凄いなと思ったのがその秘匿性だ。
会場や開催日などの情報は一般的に公開されているが参加者については物凄く気を使っているのか誰にも分らないようになっている。
参加者の一部を除いてそのほとんどは自動運転のタクシーでやってくる、その車はいつも日常的に使っている自動運転のタクシーなのだが特殊な機能と言えばいいのか全面スモークガラスになり中が見えないようになる秘匿モードというのがある。
今回オークションに参加するという事でそういう機能があるんだよ、と教えてもらった。
普段は使えずこういった特別な機会の時のみ使用可能な物らしい。
使用するには国から発行されるパスワードを自動運転のタクシーへと入力するのだが、映画とかに出てくるスパイが使用する車みたいで楽しかった。
そういった感じで中に誰がいるかわからない自動運転のタクシーで会場へと乗り込みそのまま入場する、その後個室へと車ごと横づけして入室する事になる。
ここに来るまでに誰にも会う事も無く完璧に誰が参加するのかは秘匿されている、といっても運営側は誰が参加しているか把握しているだろうけれど。
そこまで手間をかけるならオンライン参加でもいいじゃないかと思うかもしれないがこのオークション、オフラインでしか参加できない。参加したければここに来るしかないのだ。
なぜオフライン参加のみなのか、理由は色々と噂があるか定かな事はわからない。運営がその辺は情報公開していないからだ。
「神薙君、はいコーラ」
「ありがとうございます」
考え事をしている間に注文していた物が届いたようだ。
「ん、部屋に人が来た気配がなかったですけどこれどこから届いたんです?」
「そこの壁から出てきたよ」
「ここから配達されるのか………」
部屋の隅の壁に何かそれっぽいここから出てくるんだろうなって感じの物がある、っていうか受け取り口って書いてあるな。
「はぁ、後2時間も何してようかな」
オークション開始時間は昼過ぎの2時、俺と新井さんが会場に着いたのは12時にまだなっていない時間帯だ。
昨日は緊張とわくわくでなかなか眠れず、今日は早くに起きてしまった。なので早めに新井さんに連絡いれておくかーとおもって連絡したら新井さんも早く起きてしまったらしくそれなら早めに行くかとなってきたのだ。
この個室にはふかふかのソファに豪華な机にゲーム機などをつなげるディスプレイなどもあるので暇をすることは無いのだろうけれどそういう気分でもない。
と言うかここまで来てほかのことをする余裕がある人なんて何回も来て慣れている人ぐらいだろう。
そんなわけで後2時間ほど何をして過ごすか悩んでいる。
◇ ◇ ◇ ◇
時間があるのでここでこの間のネームドであるゴブリンキングを倒した時の事を話したいと思う。
話すと言ってもほとんど確認し終わっていたのでそこまで言う事もないのだがドロップ品である王冠と最終的にどれぐらいGPを稼げたのか、そして最後に宝物庫で手に入れた物がどうなったか、それを確認したいと思う。
まずはドロップ品である王冠についてだが、ダンジョン協会へ鑑定に出したところ1週間ほどで戻ってきた。
内容としてはこんな感じだ。
【群れの王の証】
<群れの王である証の王冠、装備者が群れと認識するもの全ての能力値を大幅にアップ>
具体的な数値は書いていないがヘレナによると8割ほどパワーアップするとのことだ。
群れの王の証と書いてある通り俺が装備するしかないのだが王冠がなぁーって感じで装備するのがちょっと嫌な感じ、かといって装備せずにおくには能力が魅力的すぎる。
この能力値という曖昧な表示、ヘレナの体感らしいのだが思考能力などもあがるらしくさらに細かい計算が出来るようになったと言っていたのだが普段の時点で俺には到底到達できないレベルの話しなのでそれ以上と言われても凄さがわからない。
そしてこの装備のさらに何だかなぁって思うところが効果を見てわかると思うが装備者本人にはなんの恩恵もないのだ。
ただまぁ俺が装備する事でヘレナとさらに【不壊】や【赤雷】にバイクやドローンに偵察機にその全てがこの効果の対象になるみたいだ。恐らくこの先に作るもの全てに効果があるのだろう、そう考えると使わないという手はない。
次に稼いだGPだがこれはそこまで増えていない、理由としては回収したゴブリンのほとんどが欠損していてまともなGPにならなかったからだ。どうやら爆発をやりすぎたらしい。
それでも使用したGPを越えて黒字にはなったのでどれだけゴブリンがいたんだって話しになる。
そんな感じで最終的に今は3500万GPほどある。
そして最後に宝物庫にあった金貨などのあれこれだが、これも買い取りは出来ないと言われてしまった。
どうやら宝物庫にあった金貨などはただの金ではなく魔金とよばれる物だったらしく普通のとは違う物みたいだ。
そしてこれも今回のオークションに出品されることになった。またもやお偉い人と会う事になり話しをして買い取れないと言われてオークションに出すことになり、と前回と同じ流れだった。
しかも対応してくれたのは前と同じ偉い人で短期間で同じ様に会う事は珍しいと言われてしまった。
そしてついでと言っては何だがそこでAランク試験を受けれるようになったと教えてもらった。
申請を受けてから試験が用意できるまで何か月かあるので早めに出しておきたい、オークションが終わればやるつもりだ。
後は何かあったっけ………あぁそういえば拡張パーツがつくようになった〝龍殺しの一撃〟なのだがあの後別の日にダンジョンで試してみた。
結果としてはとてもじゃないけど普段使い出来ないなって感じだった。
確かに前のに比べると威力も下がって使いやすくはなったのだがそれでも威力が高くて使いにくいという結局あまり使えない感じになってしまった。
それでも早く殲滅したいときとかには出番があるだろうから全く使わないという事にはならないだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
「皆様お待たせしました、もう間もなくオークションが開始いたします」
「お、もうすぐか」
ボーっとしたりムンちゃんやランちゃんと遊びながら時間を潰していると投影型ディスプレイの画面が切り替わりアナウンスが始まった。
「楽しみだね神薙君!」
「はい、どんな物が出てくるんだろう」
いよいよ始まるオークション、何が出品されるかは噂程度にしかささやかれていないので何が出てくるのか分からないから楽しみだ。
何か面白い物があれば買ってみたい。
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