第89話 王 #2
89.王 #2
突然の攻撃で驚いたがやる事は変わらない【格納庫】から【赤雷】を呼び出し動き出した王の護衛を任せる。【忘失の外套】の効果が切れて姿が見えてしまっているがこのまま小柄なゴブリンを倒すしかない。
【忘失の外套】の効果を見破ったという事は何か特殊なスキルを持った上位種の可能性が高い。っていうかそもそもこの王の間にいる時点で普通のゴブリンでは無いか。
「ヘレナ!そっちは任せた!」
『了解』
ヘレナに指示を出しそのまま小柄なゴブリンに向けてショットガンを撃つ。
(動きが素早いっ)
1発目、胴体を狙ったがゴブリンが素早く動きショットガンから放たれたSlug弾を回避する。
しかしこちらは1発撃ってお終いでは無い、続けて2発、3発目と撃ち続けて4発目でやっとゴブリンを捉える事ができ何とか倒した。
小柄なゴブリンの胴体が吹き飛んだのをみてすぐに振り返り【赤雷】が抑えているであろう王の護衛を見る。
2匹いた護衛のゴブリンの片方は完全に抑えられているがもう1匹がフリーな状態なので【赤雷】がぼこぼこにされている。
(まだ耐えれているがあのままだと【赤雷】が破壊されてしまう)
フリーになっていた護衛のゴブリンへとショットガンを撃つ。
「ゴギャ!」
まじか、1発で倒せないとか………皮膚が裂けているしダメージは通っているようだが。
1発で倒せないならする事は同じだ、死ぬまで撃ち続ける。
1発、2発、3発、4発、5発。
途中リロードを挟みつつも撃ち続けると護衛のゴブリンが動かなくなった。唯一肌が見えていた顔を狙ったのがよかったようだ。
「ヘレナ!」
『はい』
護衛のゴブリンが一人だけになったのでヘレナの操る【赤雷】が攻勢に出る、素早く後ろに下がったかと思ったら取り付けてあるミニガンが火を噴き王の護衛ゴブリンをミンチにする。
さっきまでは2対1だったので上手く戦えてなかったようだ。
(これで後は王だけか?)
『いえ、どうやらまだ追加がいるようです』
護衛の2匹と襲ってきた小柄なゴブリンを倒しておしまいかと思ったら王の間にある玉座近くの通路から追加のゴブリンが出てきた、どうやら控えていたようだ。
しかも先ほどの小柄な方では無くて大柄なゴブリンが続々と出てきている。
「ヘレナ、動き出す前に狙え!」
『了解』
追加で出てきたゴブリン達はまだ戦闘態勢が整っておらずどこかのんびりとした感じだ、攻撃を加えるなら先手を取りたい、今ならそれが出来る。
【赤雷】が撃ち始めたのをみてこちらも攻撃を開始する、少し距離があるのでショットガンよりも手榴弾を投げつける。
ゴブリンが密集している所を狙って5つ、連続で投げる。
(よし、何匹かは持っていけたか)
手榴弾の爆発で出てきていたゴブリンの内半分ほどは倒せたようだ。
ゴブリンキングが手榴弾の爆発に巻き込まれて多少でも怪我していないかなって思ったが、爆発で巻き起こった煙が鬱陶しいのか手で煙を払いのけている。
どうやら多少でも巻き込まれないかなという思惑は外れたようだ。
(まだ、追加がくるのか)
爆発で何匹か倒して【赤雷】の掃射で何匹か倒して、それ以上にどんどんと追加されるゴブリンが止まらない。
(ゴブリンキングが動いていないからまだ平気だが、ここで動きだされたらまずいな。考えてた作戦をやるなら今か)
追加でいくつかの手榴弾を投げ込み出てきているゴブリンの進軍を止める。
『作戦を開始しますか?』
(あぁ、始めてくれ)
ヘレナに合図を出すと同時に【格納庫】からバイクを取り出し乗り込む、それと同時に入れ替わる様に【赤雷】を【格納庫】へと戻す。
『作戦を開始、爆破します』
爆破、ヘレナがそういった瞬間遠くからも近くからも爆発音が響き始める。
爆発音が聞こえた瞬間バイクに乗り込んでいた俺は飛行モードへと移行させて空を飛び、王の間の壁へと向かって〝龍殺しの一撃〟を【空間庫】から取り出し撃つ。
(よし、穴が開いたな)
〝龍殺しの一撃〟で出来た穴からバイクで外へと出る。
「うわぁ、自分でやっておいてなんだけどえぐいなこれ」
外へでると見えてくるのはあちらこちらで発生している爆発、規模的には一軒家を1つか2つ破壊する程度だがそれがあちらこちらで発生している。
今回事前に情報を集めた段階からある程度考えていた作戦がいくつかある、大まかに2つ。1つはネームドを確認もせず外から一方的に叩く作戦、その場合もしかしたら楽にネームドを巻き込んで倒せるかもしれない、だけれど倒したかどうかの確証が持てないそれでも一応やるかもしれない一つの手として考えていた。
2つめがネームドだけを狙って暗殺する事、これには【忘失の外套】が鍵となる。見つかることなくネームドの側まで行き何かしらの一撃を加える、これには一つだけ懸念があった、【忘失の外套】が効かない敵がいた場合だ。
今のところ完璧なほどこちらの存在を敵に悟らせない装備だが完全なわけじゃないと思っていた方がいいと考えていた。
世の中には存在している事すら知らない聞いたこともないスキルがある、今でもたまに新スキルとかでてるぐらいだし魔物側のスキルも考えるとその量は想像もできない。
そういうわけで最終的には暗殺出来たらしてみて、無理なら状況に合わせて次の手を使うという感じに落ち着いた。
この爆破はその次の手の1つだ。
C4を大量に購入してクモ型偵察機に運ばせていた、1体では持てなかったので何体かで1つを持たせていたのだがその光景は某ゲームを思い出した。命令するのは俺じゃなくてヘレナだけど。
考え事をしている間にも爆発は続きどんどんと建物が崩れていく、街中だけでなくネームドのゴブリンキングがいたお城も爆発で崩れていっている。
「ここまで来たら出し惜しみは無しだ。全部爆発しちゃおう」
『了解』
俺の合図でさらに爆発が激しくなる。今爆発しているのはこの後に戦闘中とかになったとき突然爆発させて気を散らせようとして残しておこうかなとか考えていたC4だ。
残しておかないのは必要なさそうだなと感じたからだ、街の崩れ方やお城の崩れ方をみて生き残っていても少数だろうと当たりをつけた。むしろここで残りを使い切って生き残りを少なくしたい。
鳴りやまない爆発音が大気を震わせ肌が震え、直接振動を感じる。
「ゴォガァアアアアアアア!」
「流石に死んでないか」
まだ爆発はおさまっていないが完全に崩れたお城からゴブリンキングが瓦礫を押しのけ出てきた。大きな雄たけびをあげている所をみるにかなり怒っているようだ。
「さぁ、大詰めだ」
【格納庫】から【赤雷】【不壊】を呼び出し【不壊】をゴブリンキングへとぶつけ【赤雷】は隙があれば攻撃をさせ周囲の警戒もさせる。
俺はバイクに乗ったまま空からゴブリンキングを狙う。
「ゴァッ!」
「そういうのもあるのか」
呼び出した【不壊】がゴブリンキングへと突撃していく途中、ゴブリンキングが吠えたかと思うとその体が肥大していった。
骨格どうなってんだって思うほど体が大きくなっていく、そこそこ距離が離れているはずなのにここまで体が大きくなる際に出ているメリメリという音が聞こえてくる。
『マスター!』
「気にせず踏みつぶせ!」
『了解』
みるみるうちに大きくなったゴブリンキングは【不壊】と比べると少し背が小さい程度だろうかその辺りで止まった。っていうか着ていた王様っぽい服まで一緒に大きくなっているんだがそっちの方が気になるどんな素材だよ。
「ガッ!」
『くっ!』
「まじかよ」
ゴブリンキングが突撃していった【不壊】を受け止めた、何キロあると思ってるんだ………想像以上にやばいかもしれない。
「グガッ!ッガァァ!」
「もうちょっと耐えてくれ!」
『何とかします』
【不壊】から放たれたパイルバンカーを受けたゴブリンキングは大きくのけぞったがそれだけだ、皮膚が少し裂けているが致命傷とまではいかない。
ヘレナが耐えてくれている間に俺は【オートタレット】のスキルでドローン型の方を呼び出す、火力は足りないかもしれないが注意をそらす程度にはなってくれるはずだ。
それと同時進行で【GunSHOP】スキルを開きロケットランチャーを購入していく、正直これの出番はないと思っていたので買っていなかった。
今度から何があるかわからないし全部一通り購入しておこうというのはひとまず後にして購入したロケットランチャーをすぐに構えて撃つ。
急いで買ったので見た目はRPG7だがGolfシリーズなので威力はちゃんと上がっているはずだ。
「ゴァァ!グゥ」
「爆発系はあんまりか」
右ふくらはぎにあたったロケットランチャーだがあまり効果を発揮していないようだ、焦げ跡がついているが怪我した様子はない。
どうやら爆発系がダメなのか皮膚が硬いのかあまり効果はないようだ。
「あ、ドローンが………」
ロケットランチャーと同時に突っ込んでいった【オートタレット】のドローンだがゴブリンキングの手を払う動作で撃墜されていった。
出し惜しみはしてられないな。
バイクでゴブリンキングの後ろへと回り込み【不壊】と挟む形にする、そして後ろで【オートタレット】の今度は機関銃が4つ付いたタイプのを呼び出す。
そして俺は銃をスナイパーライフルへと持ち替えて弾を【魔法転換:銃弾(雷)】へと変更して撃つ。
「ギャァァァ!」
「こっちなら効くか」
足を狙った弾は右の太ももの中へと刺さりそこで【魔法転換:銃弾(雷)】の効果を発揮する。バチバチと音がしてゴブリンキングの足を麻痺させる。
効くと分かったのなら遠慮はいらないどんどんと撃ち込んでいく。
「ヘレナ、周囲に敵は?」
『いません、どうやら残ったのはネームドであるゴブリンキングだけのようです』
ヘレナと会話しながらもスナイパーライフルを撃ち続ける、足を重点的に撃ち動けないようにしていく。
「お、ヘレナ。頭にトドメだ」
『了解』
足を集中的に撃ち込んだお陰かゴブリンキングが倒れ込んだのでその隙を逃さずヘレナにパイルバンカーで追撃させる。
「これで流石に死んだだろう」
映像的にはとてもお見せ出来ないがゴブリンキングの頭があった所に赤い花が咲いた。
『経験値が一定に達しました、レベルが93から98に上がりました』
「おぅ、数字的にはあまり上がっていないけれど今のレベルの上がりにくさを考えるとめっちゃあがったな」
『続いて、ネームド『群れの王』の討伐を確認、称号【王殺し】を獲得。称号の効果により討伐者のスキルを参考に報酬を授与します………………ユニークスキル【GunSHOP】を確認、新商品を追加しました』
「『踏み均す者』の時と同じ新商品追加か、これは決定事項なのか?」
他のネームドも倒すと新商品が追加されていくんだろうか?気になってきた。
まぁ今は置いといて取り合えず事後処理をするか。
「ヘレナ、回収できそうなのは集めて行こう」
『了解』
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