第87話 【ゴランデル王国】
87.【ゴランデル王国】
(鎧を着たゴブリンが増えてきたな)
『上位種が増えてきましたね』
【ゴランデル王国】へと近づくにつれて何も装備していない貧相だったゴブリンから、鎧などを身に着けたゴブリンへと出てくるのが変わっていき、見た目も華奢だったものからガタイのいいゴブリンへと変わっていっている。
ダンジョン内の森を進み目的地である王国までは残り30分もあればたどり着くかもというところまできた。
今も【忘失の外套】を使い戦闘を避けているのだが王国へと近づくにつれてゴブリンの姿が多くなってきている。
(お、あれは初めて見るやつだな。倒してみよう)
『装備からしてゴブリンランサーといったところでしょうか』
思念操作を使いフルフェイスの防具内に表示されているディスプレイでヘレナと会話する。
目の前に見えるのは鎧を身に着けて槍を手に持ったガタイのいいゴブリンだ、基本的に彼らはそれぞれもっている武器を特徴に進化していく。
槍を支えにボーっと突っ立っているゴブリンへと近づきショットガンで撃っていく。【忘失の外套】の効果でゴブリンランサーはこちらに気づくこともなく死んでいった。
(やっぱり硬くなっているな)
『見た目は同じなのに皮膚が硬くなるのはどういうことなんでしょうか?』
(それがステータスの力って事なんだろうね)
倒したゴブリンランサーを見ると至近距離で頭を狙い撃ったはずなのに原型をとどめたまま死んでいる、これがもう少し弱い魔物なら頭は跡形も無く吹っ飛んでいただろう。
上位種はステータスの力でなのか皮膚が硬くなるようで先ほどから武器持ちのゴブリンは同じ様に原型をとどめたまま死んでいっている。
なぜわざわざ倒しているのか、いちいち戦っていると時間が無くなるって話しじゃなかったのかって思うかもしれないがこれには理由が一応ある。
俺のメイン武器である銃がどこまで通用するのか試すためだ。
今回戦う相手はとにかく数が多い、その為メイン武器である銃で1匹あたりどれぐらいで倒せるかと言うのは大事になってくる。
アサルトライフルなら何発撃てばいいのか、ショットガンなら何発なのか。爆発物ならどのぐらいの量が必要なのか。
それ次第でどうやって倒していくかの作戦が変わってくる。
今のところどの武器でも至近距離ならすぐに倒せる、アサルトライフルなら10発ほど、ショットガンなら1発、爆発物なら手榴弾3つほど必要になる。
そういった基準をとるために見たことないゴブリンを見つけると取り合えず1体だけ倒して見ている。
因みに上位種であろうこの武器持ちは1匹で5万GPになった、これはどの武器持ちでも変わらなかったので恐らく同じレベル帯のゴブリンなのだろう。
(っと、着いたか)
『大きいですね………』
(確かに、これはでかい。どうやって入ろうか?)
そうこうしているうちに目的地である【ゴランデル王国】へとたどり着いた。とはいってもまだ外壁までだがこれがとにかくデカい。
高さは50メートルもあり横にもずーっと伸びていて先が見えない。
(あれは、見張りか?)
『弓を持っていますね、ゴブリンアーチャーといったところでしょうか?』
外壁の上、かすかに見える所に弓を持ったゴブリンが歩いている。どうやら見張りのようだ。
(取り合えず外壁沿いに歩いてみよう、どっちに行こうか?)
『左に行く事をお勧めします』
(ん?何か理由がある感じ?)
『はい、このダンジョンへ入ってすぐに王国を見た際に外観の写真をデータとして保存しておきました。それと今いる場所を考えると左に進んだ方が門に近いでしょう』
(なるほど、写真撮っておいたのか助かる)
話しながらディスプレイに表示された写真を見る、写真には今自分達がいる場所がしるしとしてつけられておりそこから見ると確かに左に行った方が門が近い様だ。
外壁を右手に歩き始める、森を伐採でもしているのか外壁から森までは少し距離があり歩きやすい。
(アレも巡回のゴブリンか)
外壁沿いに歩いていると前からゴブリンが3匹見えてきた、同じ鎧を着てまるでどこかの国の兵士のようだ。
腰には片手剣をさしており背中には盾を持ち手には槍を持っている。
『あれはゴブリンソルジャーですね、複数の武器を持った上位種です』
(それは今まで見てきたゴブリンより強いのか?)
『はい、ひとつの武器しか扱えないゴブリンに比べて複数の武器を扱えるのはさらに上位の進化種です』
(ふむ、なんかひとつの武器だけを頑張っていた方が強くなりそうなもんだけどそうでもないんだな?)
『そこがややこしい所なのですが、確かに先ほどまでいた武器を1つしか持っていなかったゴブリンに比べると複数持ちは上位種になるのですが、複数持ちのさらに上位種は1つの武器持ちなのです』
(んん?つまり武器が1つのゴブリンの次に複数持ちがいてさらにその上に武器が1つだけのやつがいるって事?)
『はい』
ややこしい進化の仕方だなゴブリンって。
ヘレナとの会話はその辺にしてまずは目の前から歩いてきているゴブリンソルジャーの相手だ。
相手は3匹いてここは外壁のすぐそばだ、倒すのなら素早く倒さないといけない。もたもたしていると外壁の上にいる見張りに見つかってしまう。
ゴブリンソルジャーの後ろへと回り込みショットガンを構えて3発、連続で撃っていく。
倒したのを確認したら素早く回収してすぐに現場を離れる。
いくらサイレンサー付きのショットガンとはいえ多少は音が出る、念のために倒したら移動しないと。
(どうやらあのぐらいの音なら平気か?)
『そうでもないみたいです、外壁の上にゴブリンアーチャーが見えます』
ヘレナに言われて外壁の上を見ると様子を見に来たのかゴブリンアーチャーが1匹だけ下を覗き込んでいた。
ただ死体も何もないので何が起きたのかは分かっていなさそうだ。
流石に怪しまれないのは無理だったようだが気づいた様子がないのなら平気か。
外壁上のゴブリンアーチャーは無視して門を目指して再び歩き始める、歩きながら先ほど倒したゴブリンソルジャーをGPへと換えていく。
1匹7万GPと少しずつ高くなってきている。
(見えてきたけど………開きっぱなしなのか)
『一応門番っぽいのは立ってはいますが何とも不用心ですね』
見えてきた大きな門は扉があるにもかかわらず開きっぱなしのようだ、少し立ち止まって見てみる。
何匹かゴブリンソルジャーがグループになって門から出ていくのが見える、もしかしたら行き来がしやすいように開けっ放しなのかもしれない。
門の傍にはゴブリンソルジャーよりもう少し体躯のいいゴブリンが2匹立っている、こちらもゴブリンソルジャーと同じ鎧を着ており装備も似ている。
門番が立っている意味が何かあるんだろうか?外敵がいるとか?その場合の外敵って俺のような探索者になるんだろうか。
【忘失の外套】の効果でこちらに気づかない門番の横を素通りしていく。
(思ったよりもちゃんとした街並みだな)
『これはやはりダンジョン側が用意した建物なのでしょうか?』
門を通り過ぎると中には石造りの建物が綺麗に並んでいた、住人が住むような家だけでなく何かのお店みたいなものまで見える。
(そうだな、ダンジョンが用意したんだろう。その証拠にお店っぽいのがあるのに利用している形跡がないし)
こうして立ち止まっている間もゴブリンが何匹か近くを通っているのだがそのどれもが建物に入るという事も無くただその辺を歩いてまわっている。
お店の建物には何かの小瓶などの商品っぽいものがあるのだがお店の名前もそうだが文字が見たこともない物になっている。
(変な文字だな、何が書いてあるのか全く分からない)
『これはダンジョン文字と言われる物ですね』
(ダンジョン文字?)
『はい、ダンジョンにある遺跡やこういったお店などに書いてある文字はどこのダンジョンでも似通った字体らしくそれを総称してダンジョン文字というそうです』
(へぇ)
『今も研究を進めているそうですが、発見された文字がそこまで多くないため解読にまでは至っていないようです』
(なんでも研究しているんだな、たしか建物とかも建築方法がどうとか調べてなかったっけ)
『はい、建築構造に変わったところがあるらしくそれも研究しているとのことでしたね』
あれもこれも、なんでも研究したがるのは人間のしての性か。
(取り合えず、事前に決めていた通りに今日は街をある程度見てまわろう)
『はい』
今回のネームド討伐の為に一応作戦を考えてきている、細かい所までは実際に調べるまでは決めれなかったが大まかには決めてある。
その1段階目、まずは街を調べる。
◇ ◇ ◇ ◇
「つ、疲れた………」
『お疲れ様です』
夜の10時、今いるのは【野営地】に建てた家の中だ、ソファーにだらっと寝転がっている。
【ゴランデル王国】にたどり着いたときに既に夕方だったのだがそこからずっと街中を探索していた。
街中にはゴブリンが何体もいて、偵察用のドローンを出すわけにもいかず全部自分の足で調べた。
いくらレベルが上がってステータスが伸びたとしても疲れるものは疲れる。
「結構歩いたけど、どれぐらい調べられたんだ?」
『事前に調べた情報と参照するとおよそ2割といったところでしょうか』
「2割………今のままじゃダメだなこれ」
自分だけでやっていたら何日あっても足りない、けれど偵察用のドローンじゃデカすぎて見つかるだろうしなぁ。
「でかい………………でかくなければいいのか」
そうだよな、大きいから見つかるんだったら小さいのを作ればいいんだよ。何も特別な事をさせるわけじゃない映像をヘレナに送信できるようにだけさせれば情報収集は事足りる。
「ヘレナ」
『はい、なんでしょうかマスター』
「情報をとってくるだけの小さいやつ何か作ろう」
『情報収集用の機械ですか?』
「そうだね」
『わかりました、素材はまだあるので平気でしょう。どのような物にしますか?』
「どのような………んー小さいクモ型とか?」
小さいクモの形をした機械がこう、わさわさーっていく感じ?隙間とかも入れそうだし壁も登れるようにして。
飛ぶやつだと機構が多くなるので小さくしにくいだろうし飛ぶ以上風の影響とかもありそうだ。
それなら地面を動く物のほうがいいかもしれない。
『なるほど、わかりました。それではいくつか種類を作ってみて詰めていきましょうか』
「そうしよう」
どれぐらいで作れるかわからないがはやめに作り始めたいな、明日には情報収集を終わらせたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます