第86話 使い心地とネームド
86.使い心地とネームド
「これはえぐい」
今いるのは【クスノキ第3】というBランクダンジョンでここを見つけた人がクスノキという人だったのでそういう名前になったらしい。ここはよくあるフィールド型ダンジョンで草原があり森があり出てくる敵もゴブリンとオークに牛型の魔物にと他にも種類が多くそしてダンジョン自体も広い。
そんなダンジョンで何をしているのかと言うと新しく覚えたスキルアーツである【オートタレット】の確認だ。
まずは機関銃を4つ取り付けたやつを試す、草原部分の開けた場所に設置してゴブリンを釣ってきて【オートタレット】に持っていくという感じだったのだが。
ゴブリンが【オートタレット】まで残り100メートルまで近づいたところで攻撃が開始されゴブリンが塵となった。
比喩的表現とかでなく文字通りゴブリンが塵になった。
機関銃の駆動音が聞こえてきたかと思うと一瞬だけ弾丸が発射され、それがゴブリンにあたるとゴブリンは血しぶきとなって消えた。
はぎ取る素材がどうとかそういうレベルじゃない死に方だった。
「これは普通には使えないな」
『威力がありすぎますね』
正直最初から威力があることは分かっていた、だって機関銃だもの威力がないはずがない。だけれど、そうはいってもここまでとは思っていなかった。
精々が手足が吹き飛ぶとか一部が消えてなくなるぐらいだと思っていた。
それがまさか血しぶきとなって一欠けらも残らないとは。
「まぁいいや次を試そう」
『はい』
次に試すのはドローン5機に取り付けたアサルトライフルだ。
さっきと同じ様にゴブリンでも釣ってこようかと思ったのだがドローンがどうやら俺を中心に追従してくるタイプみたいでこのまま進むと予定していない敵まで勝手に狩ってしまうかもしれない。
「と、いうわけで頼んだ」
『はい、それでは行ってきます』
なのでヘレナの【赤雷】に任せた、きっと丁度いいゴブリンを持って来てくれるだろう。
「ってもう来たか」
【赤雷】が森に入って2分もしないうちに出てきた、後ろからはゴブリンが近づいてきているのが見える。
そのままヘレナが俺の横を通り過ぎていく、後からやって来たゴブリンが50メートルほどまで近づいてきた瞬間ドローンが動き出した。
ドローン5機が隊列を組んでゴブリンに突撃していきそのまま流れるようにドローンは動きながらゴブリンを掃射していく。
ゴブリンを通り過ぎるように倒しそのままぐるっと回転してから戻ってきた。
「こっちはまぁ使いやすいね、普通な感じ」
ドローンによって倒されたゴブリンは一部が吹き飛んではいるもののさっきの機関銃に比べれば形が残っている分だいぶましだ。
使用感的には自動攻撃だし戦闘が楽になるなとは思うが出番はそんなに無さそう、毎回使うような感じじゃなくて時々使う感じになりそうだな。
「それじゃぁ今日はここでもうちょっと稼いでから帰るか」
『はい』
今日ここに来たのは【オートタレット】を試す事だけだ、なのでそれが終わったらあとは特にすることもない。
けど折角来たんだしある程度狩って帰るつもりだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「ここが【ゴランデル王国】か」
【オートタレット】を試してから3日後、俺とヘレナはBランクダンジョンの【ゴランデル王国】という所へ来ている。
ここに来たのは計画していたネームドを倒すためだ。
ダンジョン名にもなっている通りここに居るのは『ゴランデル』というネームドの魔物でゴブリン達の王になる、ゴブリンキングってやつだな。
ゴブリンキングと言えば数々の物語で出てくる魔物で話しによっては序盤の方に出てきて物語の主人公に成長の糧にされるような存在なのだがここでは違う。
王国とついている通りここにいるのはゴブリンキングだけでなくその配下であるゴブリンジェネラル、ゴブリンウィザード、プリースト、アサシン、ソードマスター、などゴブリンの進化種が大量にいる。
他にも通常のゴブリンも掃いて捨てるほどいてとてもじゃないが普通には攻略できない。
通常ならここに来る探索者はゴブリン相手ではなくその周辺の森でとれる薬草などの素材目当てでゴブリン達など無視している。
その薬草もめちゃくちゃ高く売れるとかそういうわけでもないので普段ここには滅多に人がいない。
いるとすればいつも行動している探索者パーティが休みで何もすることが無く暇だし小遣い稼ぎに行こうかなって時に来るぐらいか。
さて、どうしてここを選んだのか。
まず1つにネームドがいるという情報がはっきりしていて場所も分かっているから。
2つめに俺のスキルとの相性がある、俺のスキルは1対多数のほうが戦いやすい、特に最近は。
ヘレナがあやつる【不壊】やアーツスキルである【オートタレット】に自前の武器でもロケットランチャーや手榴弾などの爆発物からミニガンなどの手数がある攻撃が多い。
3つ目に、さっきの場所がわかっているというのに繋がるのだが事前に準備がしやすい。
どこにいるのか分かっていてしかもそこを動かないのだから準備なんていくらでもしようがある。
アーツスキルでしか取り出せない銃弾なども用意しやすい。
「おもってた以上にでかいな………」
今いるのは緩やかな丘の上、見ている先には森がありその奥に目的地であるゴブリン達の国【ゴランデル王国】がある。
アニメや漫画などでよくある中世の建築で大きな外壁に囲まれた国が見える、その規模は想像していたよりも大きくて端から端まで何キロもありそうだ。
あれをゴブリンが作ったのか、ダンジョンが作ったところをゴブリンが活用しているのか。
気にはなるがどうせ破壊するんだし関係ないか。
「それじゃぁあそこを目指してれっつごー」
『おー』
進む道は森の中になる、なのでヘレナには【赤雷】を使ってもらう。【不壊】じゃ森の中は………進む事は出来るが破壊しながらになってしまうし流石に戦う前から接近に気づかれるようなことはしたくない。
【赤雷】をお供に森の中を進んでいく、俺は歩きだ。
バイクに乗って空を飛んで移動とかも考えたがそれでは簡単すぎる。別にわざわざ難しくする必要も無いのだが移動ぐらいなら別にいいかなって思って歩きにしている。
それに………
「お、早速いた」
歩いているのだから当然魔物に出くわす、【気配感知】に引っかかったのを見に行けばそこにいたのは緑の肌に小さな角が生えて腰に布を巻いただけの魔物、ゴブリンがいた。
【ゴランデル王国】の外にいるゴブリン………は、野生のゴブリンなのだろうか?あの国の中で暮らしているゴブリンと外にいるのに何か違いはあるんだろうか。
まぁいいか取り合えず倒そう。
アサルトライフルを構えてゴブリンを狙う、相手は3匹。一番手前にいるのを撃つ。
「流石に1発じゃダメか」
試しにと撃った1発は確かにゴブリンにあたったが倒すまでには至らなかったようだ。
こちらに気づいたゴブリン達が走ってくるのでそのまま続けて撃っていく。
『私は後ろのを狙います』
「任せた」
先頭を走っていたゴブリンを狙い撃ち何発か撃ったところでゴブリンがこけた、それを見て別のに狙いを変える。
ヘレナが操る【赤雷】は素早い動きで横へと展開してそこから射撃を開始する。
「ふぅ、終わってみれば余裕だったな」
戦闘時間自体は1分にも満たないだろう、だがやはりゴブリンと言えどBランクダンジョンに出てくる魔物だからか瞬殺とまではいかない。
倒したゴブリンに近づき3体ともGPに換えていく、一応素材としてダンジョン協会に売れるらしいがゴブリンは汚いので持っていきたくない。
それにここにあるダンジョン協会の支部は普段は薬草などしか卸されていないだろうし、そこに汚いゴブリンを持っていくのは嫌がらせにしかならない、例え多少でも素材としての価値があるとしても。
「これがノーマルなゴブリンってやつなのかな?」
『そうですね、図鑑などでもよくみるのはこの姿です』
1体1万GPにしかならないゴブリン、Bランクダンジョンの魔物にしては途轍もなく少ない売却額だ。
とは言っても今回消費したのは弾ぐらいだ、そう思うと全然黒字なんだけどね。
ノーマルゴブリン、持っているのは棍棒だけでその他に装備らいし装備もなく他にこれといった特徴もないただのゴブリンだ。
よく物語で描かれるのはこういったゴブリンだろう、弱い雑魚扱いの魔物。
だがそんなゴブリンにも特徴がある。
それは、進化先の種類が沢山あるということだ。
普通の魔物にも進化するやつがいる、けどその進化先は精々1つか2つぐらいなもの。
それに比べてゴブリンは進化先が何十個とある。
弱い魔物なりのこれも進化の一つと言えるのだろう。
ゴブリンの回収を終えて再び歩き始める。
「ってもう次か、なんだか早くないか?」
歩き始めて2分とかからずにもう次が【気配感知】に引っかかった。
『数が多いですね、他の場所にもいるようです』
1つのゴブリングループを感知したと思ったら他のゴブリングループも感知範囲に入った。
数が多すぎる。
「これはいちいち戦ってたら何日もかかっちゃうな」
『そのようですね』
今回の為に3連休を潰してまで来ているんだ、この3日間の間に終わらせたい。
「仕方ない使うか、ヘレナ戻って」
『はい』
【赤雷】を【格納庫】へと戻す、そして【忘失の外套】を起動する。
これでゴブリンに見つかる事は無いはずだ。
今回の目的はあくまでもネームドの討伐、時間がいくらでもあれば雑魚も全部倒していくのを考えていたが流石に無理そうだ。
なのでこのまま姿を消して【ゴランデル王国】まで進む。
時々ゴブリンとすれ違いならがも森の中を進んでいく。
「これは今日中にぎりぎりたどり着けるぐらいかな」
思ったより目的地が遠い、外壁は見えているのに中々近づかない。
まぁゆっくりと目指すか………最終手段空を飛ぶ、があるからな。
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