第73話 最奥のボス

73.最奥のボス








「ふぅ、どうだった?」


『はい、今回の方が倒すのは楽ですね』


現在地は変わらず【アルミーシュ】ダンジョン、『機械種マギア(基地)』との戦闘の後色々と回収してから2体目の『機械種マギア(基地)』を探して探索して今倒し終わったところだ。


2回目の戦闘では作戦を変えて、俺が雑魚処理担当でヘレナ操る【不壊】が飛んでくるドローンや砲台の処理といった形にした。1体目の時と完全に逆って感じだな。


俺がどうやって雑魚処理をするのかと言うと〝龍殺しの一撃〟で薙ぎ払う形をとった。1体目の時にどれぐらいの威力かをちゃんと測れたので使う事の出来た手だ。

〝龍殺しの一撃〟のビームで右から左へと薙ぎ払う事で雑魚は一気に殲滅できたが素材は回収できない形になってしまった。

まぁ基地のコアがあればそれだけで黒字なので雑魚は気にしない、素材が欲しければ中間あたりにいって集めればいいからね。


そんなわけで〝龍殺しの一撃〟ビームで薙ぎ払われた雑魚と一緒に足も巻き込まれた基地はボディ内に格納してあった追加を出すのだがそれは出てくるたびに【魔法転換:銃弾(雷)】のアサルトライフルで倒していった。

ヘレナに任せたドローンと砲台は〝多連装ミサイル〟の攻撃で速攻で倒されていた。


そうして2体目の『機械種マギア(基地)』は割とあっさり倒せた。


それで冒頭に戻るのだがヘレナ的にはこの方が楽みたいだ、かくいう俺もそれは思ってた最初の一撃で雑魚を一掃できるのがかなりでかい。

ただ〝龍殺しの一撃〟は総弾数が6発しかなくチャージ式で時間で再び使えるようになるという特性がある。24時間で1発、つまりこの戦いかたでは連戦できない。



「さて、そろそろ奥へ行くか」


『はい』


基地の残骸とコアに雑魚の素材を集め終わって少ししてから〝龍殺しの一撃〟の余波で壊れた壁の穴からバイクにまたがり奥へと進む、【不壊】は通れそうにないので一度【格納庫】へと入れておく。

敵が守っていた門があるが開け方がわからないし穴が空いていて丁度良かった。


「こっちはさらに綺麗だな」


『かなり綺麗に管理されていますね』


瓦礫を乗り越えて奥へと進むとさらに整備された街並みになっていた、このへんはゴミが一切なく小さな瓦礫ひとつでも落ちていない。


「あのお店動いていないか?」


『電気が生きていますね』


全面がガラス張りになったお店の中から電気の明かりが漏れている、店内はなにかを陳列していたであろう棚がいくつもあるが商品はひとつもない。


街並みを眺めながらゆっくりと進んでいく、中心部に近いからか道幅が狭く【不壊】だと建物を壊してしまうので【格納庫】から【赤雷】を呼び出す。


「ん~、何か見つけた?」


『いえ、何もありません』


おかしい、何もなさすぎる。いつもなら何かしら敵かお掃除ロボットとかがいるのにその気配がない。


「もしかしてここには敵が出てこないとか?」


『その可能性もありますね』


敵が出てこないまま進む事2時間、バイクに乗ってるから疲れる事は無いがこうなにもないと進む意味があるのか悩む。

街並みは綺麗だが統一感のある建物は無機質で眺めているのも飽きてくる。


「どこかに何かありそうな感じもないしほんとに何もないなここ、ヘレナの方はどう?」


『私のセンサーにも何も映りませんね』


「そろそろあのでかい建物につきそうだけど………」


ただひたすら真っすぐに進んでいると正面に大きな円形状の建物が見えてきた。


『恐らくあそこがこのダンジョンの最奥だと思われます』


中心部に入ってからも偵察用のドローンは飛ばしているのでヘレナは地形をしっかり把握しているようだ。


「なんだかコロシアムっぽいな」


『ボス部屋ですかね?』


「それっぽいね」


ボス部屋があるっぽいコロシアムの建物へと近づいていくと入口が見えてきたのでそのまま中へと入っていく、コロシアム内は何もなく静かだ。

通路はなぜか広めに作られているので【赤雷】も一緒に連れて行く。


「ここか」


暫く進むとボス部屋の扉が現れた、大きな扉に人型のロボットの絵が描かれている。


「人型のロボットか、だけど今までのとは違う感じだな」


描かれているのは人型のロボットなのだが今までのよりかなり細身のやつになっている。それこそアニメとかでよくある形のロボットのように見える。


『何やら速そうな見た目ですね』


「確かに、機動力高そう」


細身でスタイリッシュな見た目の絵なので強者感が強い。


『作戦はどうしますか?』


「んー、取り合えずこのままだと入れないから全部【格納庫】に入れて、中に入ったら【不壊】とバイクを呼び出して、敵が機械種なら【魔法転換:銃弾(雷)】が効くと思うからまずはそれ狙いで。もし効かない場合は普通に戦う。って感じかな?それでどうしようもなければ〝龍殺しの一撃〟を使う、まだ3発あるからね」


『わかりました、【不壊】を呼び出したらまずは盾を起動しますね』


「そうしてくれ、んじゃ行くよ」


『はい』


バイクと【赤雷】を【格納庫】へと入れて〝龍殺しの一撃〟を太もものホルスターへ入れておく、メインはアサルトライフルに【魔法転換:銃弾(雷)】だ。


ボス部屋の扉を開けて中へと入っていく。


「うわぁ世界観が一気に変わったな」


ボス部屋の中は荒野だった、何もないただひたすらに荒野が広がるだけの途轍もなく広いフィールドだった。


『ボスがどこにもいませんね』


作戦通り【格納庫】から【不壊】とバイクを取り出し乗り込む、しかし敵の姿が見えない。隠れる事の出来そうな場所なんて見当たらない開けた場所なのにどこにもいない。


偵察用ドローンも呼び出して探してみるがボスがいない。


「どうなっているんだ?」


考えてみてもよくわからない。


『マスター!!』


「うぉ!?」


突然ヘレナが叫んだかと思うと【不壊】が目の前に来て視界を遮った、そしてすぐにガイィィンという何かをはじく大きな音が聞こえてくる。


「何だ?」


『敵です!一瞬センサーにうつりました。どうやら相手はその姿を隠しているようです』


なるほど………見えない相手って事か。


「ドローンで見えないか?」


偵察用ドローンにはサーマルなどの敵を見つけるのに有効になりそうな手段は一通り機能として追加してあるが。


『ダメです、映像も熱感知も音にもなにもうつりません』


「まじか………あっ」


偵察用ドローンが撃ち落とされた………100万GPかけたやつがぁ。いや、しょうがないんだけどね?空中にふわふわ浮いてて狙いやすいだろうし防御手段とか持たせてなかったから壊されるのは当然なんだけど。

今のうちに残っているやつを【格納庫】へと戻しておこう。


『相手はスナイパーライフルの様な物で遠距離射撃をしてきているようですね、やはり攻撃の一瞬しか反応がありません』


「どうしようか、姿が見えないって事は光学迷彩みたいなやつを使っているんだろうしな」


見えず、熱もなく、音の反響でもその姿を捉えられない。かなり厄介だな。


「盾のほうは平気そうか?」


『はい、どうやら威力はそこまで無いようです。これぐらいならずっと耐えることもできます』


そう話している間にも何回か【不壊】の盾へと攻撃が当たる音がする。


「位置のわりだしとかは出来そうか?」


『難しいです、どうやら1発撃つごとに移動しているようで居場所を探れません』


まぁ、そりゃ移動するか………だけどこのフィールドは敵にとって有利すぎるな。遮蔽物の一切ない空間はきつい。


「うーむ」


どうすべきか、相手の攻撃でこちらが死ぬことは無いがこちらから攻撃する手段もないとなるとお手上げだ。


「敵がどのぐらいの距離から撃ってきているかはわかるか?」


『はい、5キロほどの距離を保って攻撃してきています』


「よし、それじゃぁ俺が〝龍殺しの一撃〟で周囲を薙ぎ払う。まぐれショットが当たればこれで倒せるだろうし倒せなくても向こうは避けないといけないから何かしらアクションを起こすはずだ、そこを狙って攻撃してくれ」


『了解』


もし〝龍殺しの一撃〟で倒してしまったら素材の回収とかできないが仕方ない。他に有効な手段思いつかないしな。


「いくぞ」


ホルスターから〝龍殺しの一撃〟を取り出し構える、そのままチャージが終わると撃つ、と同時にバイクを動かし【不壊】の周りをぐるっとまわる。


『見つけました!そこ!』


どうやら目論見通り相手はその姿を現したようだ、ヘレナの操る【不壊】から何発ものミサイルが飛んで行くのが見える。


「逃がすとまずい!近づくぞ!」


『はい』


発射されたミサイルを追うように【不壊】と一緒に駆け出す。バイクを飛行モードへと移行して出せる限りの速度を出す。


「あれか」


飛んで行ったミサイルを避ける人型の機体が見える、右腕にスナイパーライフルのような銃をもちその体を外套で覆い隠している。


「また隠れられないようにミサイルを飛ばし続けて」


『了解』


【不壊】からいくつものミサイルが飛んで行くのを眺めながらアサルトライフルを構える、飛行しているので揺れは無く狙いやすい。


ボスとの距離がどんどん近づいていき残り2キロを切ったところで撃つ。


「よっしゃ、やっぱこれは特攻武器だな」


アサルトライフルから放たれた【魔法転換:銃弾(雷)】は狙い通りあたりボスが動きを止めた。


「何だかあっさりと終わったが一歩間違えればやばかったかもな」


遠距離からその姿を隠し狙い撃ってくるとか、何かしらの手段が無ければどうしようもない初見殺しだろう。


『マスター』


「ん?ってあぁ!」


ヘレナの呼ぶ声に視線をそちらへうつすとボスの機体が光りになって消えていた。


「まじか!消えるタイプかよ!」


素材回収できないじゃん!さっきの姿が見えなかったやつとかどういうやつなのかめっちゃ気になってるのに!


「あれ?宝箱?」


ボスの機体が光りとなって消えるとその後にはボス戦後に出てくる宝箱が現れた。


「宝箱よりさっきの機体の方が欲しかった………」


『残念です』


残念だけどしょうがない宝箱にいい物が入っている事を願おう。


「んで中身はなんだろなーっと………何だこれ肩パット?」


宝箱の中には笹の葉みたいな形の鎧の肩部分みたいなやつが入っていた。


『何でしょうね』


「んー、鑑定お願いするしかないか」


『はい』


何かわからないがBランクである【アルミーシュ】ダンジョンのボスからでたやつだ、変なやつではないだろう。


「取り合えず帰りながらダンジョン協会へ売るやつを少し補充しようか」


『了解、どのあたりで行いますか?』


「中間あたりかな」


素材は全部GPにしてしまったからダンジョン協会用に素材を集めないといけない、2体目の基地のコアは何かの為に残しておく。

中間あたりの敵なら余裕で倒せるからね。


「今日は帰りにジャンクフード買って帰ろうハンバーガーとポテトが食べたい」


色々あったがこのダンジョンは一旦お終いだ、また素材が欲しくなったら来ることにしよう。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る