第72話 基地

72.基地







さて、あのデカ物を倒す時間がやって来た。


現在地は【アルミーシュ】ダンジョンの中、目標である『機械種マギア(基地)』との距離は2キロほど離れているが見通しのいい場所にいるので視認はできている。


俺は昨晩制作したバイクに乗り込み、ヘレナは【不壊】を操りつつこちらのバイクの補助もしてくれることになっている。

二つも操作して大丈夫か?と思ったがヘレナにとっては余裕の事みたいだ。


『所定位置に着いたら、まずは先制攻撃で私がミサイルを撃ち込みます』


「おう」


『その後はマスターの〝龍殺しの一撃〟で事前に決めた通りに撃ってください』


「了解」


今回〝龍殺しの一撃〟を使う事を決めてから素材としての回収を諦めていたがせめてコアだけでも回収したいなと思いヘレナに相談していた。

するとヘレナが大まかな予想を立ててくれてそれに合わせて撃つことになっている。


『バイクの運転には慣れましたか?』


「まぁ落とさずに運転するぐらいなら行けると思うよ」


【野営地】内で軽く飛ばし方の練習をしたので落ちる事は無いと思うけど、一応念のために落ちてもいいようにあまり高く飛ばないようにしようと思う。

ステータスが上がったおかげである程度の高さなら万が一落ちたとしてもちゃんと着地できるって事が分かったからね。


「それじゃぁ位置につこう」


『はい』


【不壊】はそのまま進み、バイクにまたがる俺は早速飛びあがりビルの屋上へと向かう。

ヘレナが進むのに合わせて俺も『機械種マギア(基地)』へと近づいていく。


「気づいたか」


『はい、どうやら迎撃態勢をとるようです』


目標まで残り1キロを切った瞬間相手側が騒がしくなった。

『機械種マギア(基地)』からわらわらと敵が出てきたがこちらへとは来ることはせず陣形を組み始めた。


「思ったより数が多いな………」


一番前に子機、その後ろに警備ロボットみたいなやつ、その後ろに隊長格とさらに大きい人型が並んで上空にはドローンがいくつも飛んでいる。

『機械種マギア(基地)』の上にも見たことないタイプの敵が出てきている、砲身が1つだけついた子機ほどの大きさの敵で恐らく移動する砲台といったところだろう。


バイクで飛びながら装備の最終確認をする、太もものホルスターには〝龍殺しの一撃〟を入れて胸元には〝アサルトライフルFoxtrot〟と【魔法転換:銃弾(雷)】を入れたマガジンを10個ほど用意してある。


『位置につきました、いつでもいけます』


「こっちも行けるよ、合図を頼む」


『はい、カウントダウン開始します』


ヘレナの声に合わせてホルスターから〝龍殺しの一撃〟を取り出す、黒いボディに十字に走るライティング、残弾数を現す花弁は6枚しっかりと光っている。

敵との距離は600メートル、これぐらいなら十分に届く。


『5、4、3、2、1、発射』


発射の声と共にヘレナ操る【不壊】の銃火器が同時に火を噴く。左肩からは〝多連装ロケット砲〟が右肩からは〝多連装ミサイル〟の攻撃が飛び出し、前回右肩に付けてあった〝機関銃〟はボディの側面に取り付けなおしそこから掃射している。


ヘレナのカウントダウンと同時に俺も〝龍殺しの一撃〟を構えると起動する、十字にはしったライティングに合わせて銃身が4つに分かれて回転し始める、するとキュィィィという音と共にエネルギーの玉が出来上がっていく。

玉がある程度の大きさで止まりそれ以上大きくならなくなったらヘレナの合図と同時に攻撃を開始する。


太いビームが手元から発射され『機械種マギア(基地)』の外側の部分を破壊していく。


「うぉぉぉぉ威力やべええ」


もはや銃を撃っているというより途轍もなくでかいビームサーベルを持っているような感覚になっていく。

〝龍殺しの一撃〟のビームの照射時間はまだあるのでそのままコアがあると思われる中心部を狙わないように外側を削る様に動かしていく。


『いい調子ですよ、そのまま撃ち続けて下さい』


俺が〝龍殺しの一撃〟を撃っている間もヘレナは〝多連装ロケット砲〟や〝多連装ミサイル〟を撃ち続けている、リロードに関してはその都度【格納庫】から呼び出された作業員ロボットが必死に行っている。


「やべっ」


流石に相手も黙っていられないのかそのボディの半分ほどを消し飛ばしたあたりでドローンがこちらにやってくると同時に砲撃が飛んできた。

急いでバイクのハンドルを握り移動を開始する。


「ヘレナこっちに敵が来た!見えてるか!?」


『はい、大丈夫です。ちゃんと見えています』


こちらもドローンを飛ばしているのでそれで戦況を把握しているがそれでも聞かずにはいられない。


「これじゃぁ〝龍殺しの一撃〟は撃てないな」


結構なスピードで回避運動をとりながらバイクを飛ばしているのでこの状態じゃ威力のありすぎる〝龍殺しの一撃〟を撃つのには不安が強い。


まずは飛んできているドローンを片づけるのが先か、幸いなことに『機械種マギア(基地)』は表に出している砲台替わりの子機で狙ってくるぐらいしかしてこないのでドローンぐらいならこのままでも倒せる。


〝龍殺しの一撃〟を太もものホルスターへとしまい〝アサルトライフルFoxtrot〟を構えて撃てる隙を見つけては撃っていく。

大きく迂回しながら横向きに撃ったり、飛んでいるからこそできるバック走行しながら撃ったり。

結構アクロバティックな動きでドローンを撃ち落としていくがこんな動きが出来るのもヘレナが補助で操作してくれるのとこのバイクが背もたれのあるゆったりとした座り方のできるやつにしておいたからだろう。


「ヘレナ、そっちはどう?」


撃ち落としていきながらもヘレナの戦況も聞いていく。


『8割ほど倒しましたがまだ湧いて出てきています、このままだと用意していた弾が足りなくなりそうなんですがどうしましょうか?』


「もう8割も倒したの!?はやくない?弾に関してはGPの残量に気を付けて勝手に補充してくれ!足りなければ売却予定の素材も使っていい!ただ、100万を切ったら教えて欲しい」


『了解』


一応余るぐらいの弾は用意しておいたんだけどな、流石にこれ以上さらに敵が湧いてくるとかになったら撤退も視野に入れるか?


考え事をしながらもドローンを撃ち落としていく、無駄に高い器用値のお陰でバイクがどんな体制でもどれも1発で倒していけている。


残りのドローンの数は見えている範囲で6体、増援は今のところ無し。砲撃は余裕で躱せている、ならこのまま押し切る。


1体、2体………よし。


「ヘレナ!もう一度〝龍殺しの一撃〟を撃つ、それで基地のほうは沈黙できると思うからそれを見て突っ込んでくれ!」


『了解』


ドローンを倒しきる目途をたてた瞬間ヘレナに指示を出す、喋っている間にもドローンを次々と倒していき話し終わる時には全て倒し終わった。

〝アサルトライフルFoxtrot〟を手から離し、太もものホルスターから〝龍殺しの一撃〟を取り出し構える。

キュィィィンというエネルギーを溜める音を聞きながら『機械種マギア(基地)』の残りの部分を狙っていく。


「ほんとにこの銃の威力やばい」


戦闘をしながらも少しずつ基地へと近づいていたので今はほぼ真上から撃つ形になったのだが〝龍殺しの一撃〟の攻撃は『機械種マギア(基地)』のボディを削りながらそのままダンジョンの地面も消滅させていっている。


さっきと同じ様に外側をなぞるように〝龍殺しの一撃〟のビームを当てていく、ついでと言っては何だが砲台替わりの子機もそれに巻き込まれていくので一石二鳥だ。


「よし、倒せたか」


『機械種マギア(基地)』の真ん中部分を残して破壊したので流石に体を動かす機能のほとんどを失ったのか動かなくなった。


こっちの倒すべきものは倒せたのでヘレナの方に目を向けるとあっちも丁度いいタイミングだったのか最後の一体をパイルバンカーで吹き飛ばしていた。


「終わったか」


『はい』


戦闘時間自体はそんなに長くない、30分も戦っていないだろう。だけど濃密な時間だったのでかなり疲れた。


「取り合えず回収ドローンとか出しておくか、GPはいくつ残った?」


『残GPは137万です』


結構使っちゃったなぁ、まぁバイクでも結構使ったし武器も買ったもんな仕方ない。


『因みにダンジョン協会へと売却予定の素材を全て売ったうえで残り137万GPです』


「………まじ?」


『まじです』


そんなに消費するほど敵が多かったって事か………仕方ない………うん。


ちょっと衝撃的な報告があったが今は気にしない方向で、取り合えず倒した『機械種マギア(基地)』へと近づいていく。


『マスター、コアを見つけました。やはり予想通り中心部にあったようです』


「お、いいね。取り合えず1つめのいい報告だ」


『今こちらへ運びます』


回収用ドローンが運んでくるそうなので取り合えず待っておく。


「見間違いじゃなければ、なんかでかくね?」


回収用ドローンが紐を括りつけて運んできているコアであるクリスタルが見間違いでなければ軽自動車ぐらいの大きさがあるように見える。


『でかいですね、やはりあの大きな体を動かすのですからこれぐらいは当然かもしれません』


「まぁ言われてみれば確かに」


あれだけ大きなコアだとかなりの動力源になるだろうけど基地の攻撃はしょぼかったな、そう考えるとあれはもしかして周りの『機械種マギア』用の修理とかそっちが本当の役割だったのかもな。だから武装が少なかったのかも。


攻撃寄りだったら〝龍殺しの一撃〟と同じぐらいのビームとか平気で撃ってきそうなもんだもんな。


「これだけでかいとほんとにロボットとかの動力源にできそうだな」


回収用ドローンによって運ばれた『機械種マギア(基地)』のコアを見てそうつぶやく。


『ガンダ〇ですか?』


「ガンダ〇だね………それぐらい作れそうに思えてくる」


『ふむ、ふむふむふむ。確かにこれならいけますね十分なエネルギーを感じます』


何かを測定したのかコアをみてヘレナがそう言ってくる。


「まぁ作ったところで置き場所もないし、使う場面もないしだから作らないけど憧れはするよね」


『そういうもんですか』


「そういうもんです」


取り合えずは残骸とかの回収が終わるまではゆっくりしましょうかね。





◇  ◇  ◇  ◇





「結局回収できたGPは全部で420万ほどか」


『出来るだけコアを残して倒しましたからね』


基地はコア以外は残骸だったので大したGPにはならなったが量が多いのでそれでも30万GPほどにはなった。

残りはヘレナが倒した敵のコアが結構残ってたのでそれのGPだ。


今回用意したバイクや武器の事を考えるとGPは赤字だが、今度も同じ様に倒せれば十分黒字になるレベルだと思う。


「問題はこのコアをどうするかか」


『機械種マギア(基地)』からとれたコアは軽自動車ぐらいの大きさもある、出来るならこれを使って何か新しい機体とか作ってみたいがこのコアの大きさを考えるとどうしてもそれに見合った巨体の機体になってしまう。

それを考えると正直使いどころがない。


『この先も入手する機会はあると思いますし売るのも一つの手だとは思いますよ?』


「そうだよなぁ、正直どれぐらいのGPになるのか気になってる」


【リスィクリスタル】でひとつ50万だ、それを考えるとこの基地からでたコアをGPに換えた場合3桁は超えるだろう。


「ヘレナ的にはどう?」


『そうですね、現状使い道がないので売るのがいいと思います』


「やっぱ、そうなるかーじゃぁ売ろう!」


『はい』


軽自動車ぐらいの大きさのコアを【GunSHOP】の売却画面へと入れていく。


「【オルガナクリスタル】か………えっ!?500万!?」


売却画面に出ているGPは500万だ、3回ぐらい0を数えなおしたから間違えてはいないはず。


『500万ですか、これはかなり美味しいですね』


「確かにコアを確保できるなら他の全部回収できなくても美味しいかも」


基地の周りにいた敵をすべて回収したら流石にこのコアより総合的には高くなるとは思うがそうそうあの数を綺麗には倒せない、そう考えると基地だけでもコアを傷つけない様に倒すだけのほうが楽だ。


「よし、帰るまでにもう1体ぐらい倒そうか!」


『了解』


このコアを売ったら残りGPはついに1000万を超える、かなり自由に色々遊べる余裕が出来る。


楽しみだ。







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