第71話 乗り物

71.乗り物








『まずはこちらをご覧ください』


敵を倒すためにまずは作戦会議をしようと【野営地】内へと戻りご飯やお風呂などを済ませた後に【格納庫】の隅においてある机とソファの所へと腰かけた。

ヘレナが言いながら机の上に投影させたのは先ほど見た『機械種マギア(基地)』の3Dスキャンされた画像とその周りにいた子機や人型などを表示させたやつだ。


「いつの間にかスキャンしてたのか」


『はい、画像があった方が分かりやすいですから』


まぁそれもそうなんだけど準備がいいな。


「それにしてもこうやって見るとやっぱりアレでかいな、周りにいるのが凄く小さく見える」


『そうですね、相手は大きいですがその分どうしても動きが鈍重になってしまうので攻めるとすればそこでしょうか』


「ふむ、機動力をもって翻弄する感じかな?」


『はい』


「でも機動力と言ってもどうしようか?走る?」


【不壊】にしても【赤雷】にしてもある程度動きはするけど機動力があるようなやつじゃないしな。


『そう言うと思って考えておきました、ここで一つ機動力の高い乗り物を作ってみませんか?』


「乗り物?GPに余裕は………645万もあれば十分か」


『はい、それにまだ変換していない素材がありますしよっぽどの物じゃなければ十分だと思います』


そういえばダンジョン協会へ売却する用のも一応置いてあるのか、じゃぁ余裕だな。


「それで何を作るの?車みたいな感じなのとか?」


『車もいいですがバイクを作ってみませんか?』


「バイク?一応自動運転のなら乗ったことあるけど俺運転できないよ?免許もないし」


『基本は私が操作するので平気です、それに免許については外で乗らない限り要らないでしょう』


「なるほど?」


ヘレナが運転してくれるならそれでいいのかな?それに免許についてはそれもそうかダンジョン内では私有地と一緒で免許なしでもいいんだっけ?


『それに車ですと大きさにもよるでしょうがこのダンジョンでは通れないところとか出てきそうですし』


「確かに【不壊】とかだと邪魔なのは潰して進めるから関係なかったけど車となるとそうもいかないのかな」


【アルミーシュ】ダンジョンは道路があるがそこには瓦礫が散乱している、しかし【不壊】で潰したり横にのけたりして結構強引に進んでいたので気にはならなかった。

だけど普通の車とかになるとそうもいかないだろう。


『はい、バイクにしても結局はどうしても通れない道などは出てきますがその辺は他の手段でも一緒なので。それにバイクならではの移動もありますから』


「バイクならではの移動?」


『はい、それは後のお楽しみにしてまずはどういったバイクを作るか考えましょう』


「後のお楽しみかぁ」


『取り合えずどの見た目が好きか一覧を見て決めましょう』


ヘレナがそう言うと投影されていた画像が切り替わり沢山のバイクの画像が流れてきた、その中には映画とかで見るようなバイクから原付まで、他にもアニメでしかみないような特殊な形のバイクも表示されていた。


「こういう形の奴って作れるの?」


そう言って指さすのはアニメとかで見る変わった形のやつだ。


『可能ですね』


「どうせならこういうのがいいな」


『そうですね………でしたらこういうのはどうでしょう?』


「いいね、機能とかは何か追加する?」


『はい、一通り付けるつもりですが任せてもらえますか?』


「そうねぇ任せた方がいいか、何があるとか細かい所わからないし。うん、任せるよ」


『ありがとうございます、それでは必要になるGPは大体250万ほどとダンジョン協会へ売却予定の素材と【リスィクリスタル】を二つほど使用してもかまいませんか?』


「250万GP………高いけどしょうがないか、【リスィクリスタル】と素材は使ってくれていいよ。またとればいいし」


『はい、それでは製作を開始します』


ヘレナがそう言うと【格納庫】の壁から作業員ロボットが出てきて何やら作り始める。


『では制作している間、作戦会議の続きと行きましょうか』


「おー」


『機動力は乗り物で確保するとして攻撃手段なのですが、周りにいる雑魚は私が何とかしますそのために武器を買いたいのですが構いませんか?』


「武器?確かに今のだと心もとないか」


【不壊】についている武器は〝パイルバンカー〟と〝多連装ロケット砲〟と〝機関銃〟だ、十分な火力があると思うがあの数を相手にすると考えると足りないか。


「何の武器がいいかな?」


『多連装ミサイルがいいと思います』


「それは今付けている〝多連装ロケット砲〟とは違う物なの?」


『そうですね………便宜上私はロケットは真っすぐ飛んでいく物、ミサイルは誘導性があり、ある程度融通が利く物という認識で分けています』


「使用する弾が違うって事?」


『言ってしまえばそうですね』


「ほー、ミサイルって言うとあれか?アニメとかでよく見るあのグネグネして飛んで行くやつ」


『その認識で間違いないです』


「なるほど、確かにあれなら敵を殲滅しやすいかもね」


今使っている〝多連装ロケット砲〟もある程度誘導できるみたいだがミサイルは想像通りならそれ以上にもっと誘導性能が高いんだろう。


「そのミサイルはGPがいくつ必要なの?」


『75万ですね』


「んじゃつけちゃおう」


『はい』


「それで?ヘレナが周りの相手をするって事は俺があのデカいのをどうにかしないといけない感じ?」


『そうなります』


「あんなに大きなやつに効く武器なんかあったかなぁ〝ミニガン〟とかじゃ微妙そうだしな………」


あのデカさだ、〝ミニガン〟じゃ豆鉄砲にしかならないだろう。


『あるじゃないですか今まで使いどころのなかったアレが』


「アレ?」


『〝龍殺しの一撃〟ですよ』


龍殺しの一撃………………?


「あーーーーーーーあったね………全く出番がないから完全に存在を忘れてたよ」


Bランク試験の際に倒した『踏み均す者』を倒した時に手に入れた称号【龍殺し】で【GunSHOP】に100万GPで追加された銃だ。

真っ黒なハンドガンで銃口から十字に光る線が入っていて射撃体勢にはいると銃口が4つに分かれて回転しだしてエネルギー弾を溜めるやつだ。

手に入れたのはいいが使う機会がなく完全に存在を忘れていた銃だ。


『あれの攻撃力なら十分な破壊力があるでしょう』


「んー、逆に壊しすぎないかな?できる事なら損傷少なく手に入れたい。もしコアとかあれば凄いの使ってそうだし」


以前に一回しか使っていないが〝龍殺しの一撃〟は破壊力がありすぎる、あれだと回収できる素材とか無くなりそうだ。


『それはそうですが、今回に限っては倒す事を優先するのはどうでしょうか?あの機械種はあれ一つじゃないでしょうし何度か戦って倒し方を見つけていくのがいいかと思います』


「うっ、そうだなぁ最初っから高望みしすぎか。毎回毎回うまい事倒せるわけじゃないんだし何回も戦っていくしかないか」


今までがうまい事言っていただけで本当なら毎回素材の事を考えて倒す事なんて出来ない、まずは倒す事を考えるか。


「あ、そういえば【魔法転換:銃弾(雷)】で倒すのはどうかな?あれも機械種だし効くと思うんだけど」


『効くとは思いますがあの巨体ですし倒そうと思ったら何発必要になるでしょう?数千発は必要になりそうですけど』


「時間があれば用意できるけどその時間が無いか」


確かにあの巨体だと1発では無理だろうし数百発でも当たり所が良くなければきつそうに思えるな。


「じゃぁ作戦としてはヘレナが雑魚処理、俺がバイク乗って機動力をいかして〝龍殺しの一撃〟で『機械種マギア(基地)』を攻撃するって感じかな?」


『そうですね』


「こうやって見ると随分シンプルだな」


『複雑にしてもしょうがないですからね』


「それもそうだね、それじゃぁ後はバイクの完成をまつだけ?」


『はい、今日のところはそれくらいです。寝ている間に完成するでしょう』


「んじゃそろそろ寝るかいい時間だし」


時計を見るといつの間にかもう夜の11時を越えていた。


『はい、ゆっくりお休みください』


「うん、おやすみ」


『おやすみなさい』






◇  ◇  ◇  ◇






「眠い………」


『おはようございます、マスター』


「あい、おはよう」


朝起きるとすぐにヘレナの声が聞こえてくる、その声は寝室にあるスピーカーから聞こえてきている。


『眠そうですね、だから昨日言ったじゃないですか。寝る前に電子書籍を読むもんじゃないって』


「いやぁ分かってるんだけどいい所だったから………」


昨日の夜寝る前に何となく携帯端末を起動して読みかけだった電子書籍を眺めていたら止め時を失ってついつい読みふけってしまった。

ちょうど初期からの伏線が明かされる場面で気になって読んでしまった。


『取り合えず顔を洗ってきてください、それからご飯を食べて完成したバイクを見に行きましょう』


「お!そうだ、バイク完成してるんだった」


そうと決まれば急いで水で顔を洗ってご飯を食べて、朝の準備を終わらせていく。


「それじゃぁ【格納庫】へバイクを見に行こうか」


『はい』


準備が出来たので早速【格納庫】へと入っていく。


「おぉ!?かっこいい!」


【格納庫】内に完成していたバイクは似たやつで言えばあのAKIR〇の赤いバイクだろうか。流線形の卵型のボディに色は白に黒いラインが染色されている。

乗った際に前傾姿勢になる感じの物では無くバイクには背もたれが付いておりリラックスした形で乗れるようになっているようだ。


「おもったよりでかいな」


『色々とギミックを仕込みましたのでどうしてもこのぐらいの大きさが必要になってしまいました、その代わりかなりいい性能になったと思います』


普通のバイクより一回りか二回りほどでかい気がする、といってもバイクに詳しいわけでは無いので正確な所は分からないが。


「あれ?よく見たらこれ自立してる?」


バイクを眺めていると自立している事に気づいた、スタンドも無く立っている。


『はい、自動でバランスをとる機能をつけました』


「へぇ、そういえば何かの記事でそう言うのがあるって見たな」


スタンド無しで自立するバイク、そういった機能を今後取り入れていきますよっていうよりもこういう事も出来るんですよっていう技術発表な感じだったので未だに実用化はされていなかったはず。


『一般の物よりもこちらの方がはるかに高性能ですよ、なんせ乗りながらバランスとりますから』


「ほー、取り合えず乗ってみてもいい?」


『はい、どうぞ』


乗ってもいいそうなのでバイクにまたがってみる、背中を背もたれに預けて足を完全にバイクに乗せてみるが倒れる気配がない。

軽く体重移動して倒れるか試してみるが全然倒れない。


「これは凄いね、っていうかこのバイク車体が低いけど大丈夫?」


バイクの車体が低い気がする、これだとちょっとした段差とか登れそうにない。


『その辺も考えてあります、【野営地】の広い方へ行って動かしみましょう』


「了解」


ヘレナがそう言うと乗ってたバイクが動き出す、おそらくエンジンが【リスィクリスタル】だからかエンジン音が全くしない。静かでいいねこれ。

そのままバイクは【野営地】の方へつなげている渦を通る。


【野営地】は地面が平坦で芝生が生えているがバイクを走らせる程度なら大丈夫だろう、多分。


「このタイヤのまま走っても平気?」


『平気です、普通のタイヤに見えますがそれも特注なので』


バイクのタイヤには両側から円盤みたいなので挟み込んでおりホイールなどが見えないようになっているが地面と接触するタイヤの部分は普通の一般的なやつの様に見える。

こう見えても特注なのか。


「それで?平坦な場所は行けるだろうけど、そうじゃない場所はどうするの?」


『はい、それではこれより【飛行モード】へ移行します』


「【飛行モード】?」


ヘレナに聞き返すも返事は無くバイクの状態が変わっていく。


バイクの下から噴射口がいくつかにょきっと生えてきてそのまま淡い水色に光りだす。

微かにヒュイィィィィィンという音が聞こえてくる。


「お?おぉぉぉぉう………」


バイクの形態変化に驚いているとふわっと浮いて地面から2メートルほど視線が高くなった。


『動力源に一つ【リスィクリスタル】を使いましたが、もう一つはこの【飛行モード】の為に使っています』


「ほー、それで2個使いたかったのか」


『はい、【飛行モード】中では地上と同じぐらい速度が出せますのでかなりの機動力になるはずです。さらに高度限界はほぼ無いのでどこまででも飛んでいけます』


「確かに飛べたらかなり有利になるな………って撃ち落とされたりしないよな?」


『機械種マギア』は銃器を使ってくるし飛んでたらいい的になっちゃいそうだけど。


『そこも考えてあります、撃ち落とされないために新しい機能をつけました』


「それは?」


『シールド機能です』


「シールド?」


『そうです、シールド機能を使用してみますか?』


「そうだね、見てみたいかな」


『【シールド】展開します』


「おー」


シールドが展開されると魔法の力っぽい青いエフェクトがバイクを丸く囲む。


「これって物理的なのも防げるの?」


見た目的になんか硬そうに見えない。


『今までに出会った敵の攻撃ならば十分に防げるでしょう、きちんと強度計算をしていますので。不安ならシールド用に【リスィクリスタル】を追加しますか?』


「あー、そうした方が安心できるかな?」


何かの動力源のついでにシールドをはられるぐらいなら専用の動力源が欲しい。


『では在庫から追加しておきますね』


ヘレナがそう言うと浮いていたバイクが地上に降りてそのまま【格納庫】へと戻っていく。


『他にもナビなどの細かい機能がありますが、今回は使わないのでこれぐらいでいいでしょう。シールド用の【リスィクリスタル】を追加したら倒しに行きますか?』


「そうだね、時間をかけても仕方ないし行こうか」


『それでは今しばらくお待ちください』


「了解」


待っている間暇なので昨日の電子書籍の続きを読んで待っていよう。







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